持続可能な食消費を実現するライフワールドの構築

─食農体系の転換にむけて
  • FS1
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研究プロジェクトについて

私たちの生活に欠かせない食は、生産、加工、流通、小売、調理の過程を通じて、環境と深くかかわっています。しかし、日本のような先進諸国の食農システムにおいて、消費と生産の距離は遠くなり、中間過程も複雑すぎて見えにくくなっています。本FSでは、持続可能な食農システムへの転換を図るため、最終的な決定権をもつ消費場面に焦点を当て、環境分析やシステム分析を行なうだけでなく、住民参加や政策設計などのアクション・リサーチの手法を用いて、成果を社会に埋め込むことをめざします。

なぜこの研究をするのか

今日、地球規模に拡大された食農システムは、工業的で多投入型の農業生産、複雑な加工過程、エネルギー浪費型の流通体系によって土壌劣化や生物多様性の低下、温室効果ガスの排出など、地球環境に多様な悪影響を与えているだけでなく、システム自体の存続にも不安を投げかけています。栽培品種の多様性喪失や家族農業の減少などは、システムの脆弱性を高める要因となっています。日本の場合、食料の60%を海外に依存しているだけなく、今後TPP(環太平洋連携協定)が締結された場合、その依存度がさらに高まることも予想されます。このような工業的食農システムが進展したのは、このシステムにおいて最終的な決定権をもつ、私たち消費者も深くかかわっています。システムがさらに拡大・複雑化していくと、食の消費と生産との物的ならびに意識的距離がますます離れて、その持続可能性は低下するばかりです。そこで、食を私たちの日常生活のなかに近い存在として取り戻し、食が自然環境や社会環境とつながっていることを確認できるようなしくみづくりが求められています。頭では理解していても行動に移せないという状況を克服するような、新しい食農システムが必要なのです。

これからやりたいこと

図 プロジェクトの概念的枠組み

図 プロジェクトの概念的枠組み

写真写真 日本のファーマーズマーケット日本のファーマーズマーケット

写真 日本のファーマーズマーケット

私たちの最終的な研究プログラムには次の3つの柱があります。FS 段階では、これらの実現に向けた準備を行ないます。

  1. 1)食農システム現状分析
  2. 未来に向けた食農システムを設計するために、まず現行システムの問題点を明確にする必要があります。持続可能性という観点からみた、食農システムの各段階における問題点を、農業食料社会学、政治経済学、実験経済学、フードシステム論、消費者行動論などを駆使して明らかにします。海外における食農システム転換の動向についても情報収集します。

  3. 2)食のLCA(ライフサイクル・アセスメント)と食農システムチェーン分析
  4. 食と農に関連する物質とエネルギー循環の実相を研究します。食の生産、加工、流通、小売、調理段階においては多様な選択肢がありますが、それらの方法の違いが環境に及ぼす影響について、生物多様性などの指標も考慮しつつ、簡易でインパクトのある指標化を行ないます。また、大豆、コメ、小麦、トウモロコシ、軟弱野菜、根菜、牛肉、エビなどの主要品目について、生産から消費までのルートを明らかにし、消費の現場からみた調達チェーンの広がりを明示します。

  5. 3)住民参加型の地域モデルの実践的構築
  6. 上記の2つの柱からの成果をもとにして、住民参加型で持続的な食農システム構築のための食の指標を作成します。京都府、長野県、千葉県に国内モデル地域を設定して、ワークショップ形式で住民に働きかけながら、地域の実情と個性に見合った持続的食農指標を作成し、地域内のそれぞれの食品を評価するシステムを構築します。

メンバー

FS責任者

氏名所属
MCGREEVY, Steven R.総合地球環境学研究所

主なメンバー

氏名所属
秋津 元輝京都大学大学院農学研究科
柴田 晃立命館大学地域情報研究センター
立川 雅司茨城大学農学部
谷口 吉光秋田県立大学地域連携・研究推進センター
稲葉 敦工学院大学工学部
八木 絵香大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
久野 秀二京都大学大学院経済学研究科
須藤 重人農業環境技術研究所
吉田 好宏京都府農林水産部食の安心・安全推進課
星野 敏京都大学大学院地域環境学堂
辻村 英之京都大学大学院農学研究科
西山 未真千葉大学園芸学部
JUSSAUME, RaymondMichigan State University
JORDAN, NicholasUniversity of Minnesota
AUGUSTIN-JEAN, LouisThe Hong Kong Polytechnic University
TANAKA KeikoKentucky University
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