吉田丈人准教授が生態学琵琶湖賞を受賞

2021年7月、地球研・東京大学大学院総合文化研究科吉田丈人准教授および神戸大学大学院人間発達環境学研究科源利文准教授(元地球研上級研究員)が第21回生態学琵琶湖賞を受賞しました。

本賞は滋賀県と日本生態学会が共同し、水環境に関連する生態学およびその周辺分野における50歳未満の優れた研究者に贈られる賞です。滋賀県によって1991年に創設され、第15回より日本生態学会が実施主体となりました。

吉田准教授は、淡水生態系を主なフィールドとして個体群および生物群集の動態などに関する基礎生態学研究と、生物多様性保全や生態系管理に関する保全生態学的研究を生態学の研究アプローチだけでなく学際的・超学際的なアプローチを取り入れて進めてきました。日本だけでなく海外の湖沼においても、動物プランクトンや植物プランクトンの様々な季節的動態、動物ブランクトンが魚による捕食を回避する行動や形態変異になどに関して世界に先駆けた数々の優れた研究を行ってきました。また、淡水生態系の自然再生に関する研究にも取り組んできました。地域の多様な関係者(ステークホルダー)と協働する超学際研究も進めています。70件を超える論文発表は、世界中の研究者から4,000回以上引用され、極めて優れた成果を発表してきました。

近年は生態系の機能を活用した防災・減災、いわゆるEco-DRRの研究プロジェクトを推進し、自然災害ハザードに対する人間活動の暴露と脆弱性を減じることによる防災・減災と生物多様性保全との両立を目指す、我々の生活と生命に直結した研究をしています。

以上のように、同氏が生態学の地平を広げる学際研究の推進とともに社会の多様な関係者との協働を実践する超学際研究の展開を大いに期待されるということから今回の受賞に至りました。

源准教授は、世界ではじめてマクロ生物の環境DNAメタバーコーディングを成功させた、わが国を代表する環境DNAを駆使する生態学の研究者です。環境DNA分析を用いてマクロ生物、いわいる大型生物の分布調査を飛躍的に効率化させる手法を確立させました。環境DNA研究は、地球研のプロジェクト「病原生物と人間の相互作用環」(本研究期間:2007-2011年度)にて初めて着手し、知見を重ね、発展させてきました。

この手法はとくに希少生物の生息や、外来種侵入の探索にとても有用で、実際に外来魚の生息モニタリング手法の開発に結びついています。さらに当該技術の社会実装にあたって、技術を普遍化・標準化し産官学が共同して標準指標を作成する場となることを目指した一般社団法人環境DNA学会の設立にも中心的な役割も果たし、現在その理事および副会長として学会に携わっています。原著論文100件以上、論文引用4000回以上にわたります。開発した手法の国内外での普及に力を注ぎ、特に発展途上国における共同研究や技術指導を精力的に行っています。これらの手法が国際的に標準化されれば、世界中のデータが比較でき世界規模で生物多様性や絶滅危惧種の保全に役立つだけでなく、水産資源の利用にも役立つことになります。同氏の業績は、学術的貢献と社会貢献の両面で高く評価できることから生態学琵琶湖賞の受賞にふさわしいとされ、今回の受賞に至りました。

授賞式は、7月27日に、滋賀県公館にて行われ、滋賀県三日月大造知事より、賞状が授与されました。三日月知事は、「琵琶湖は日本で一番大きな湖、であると同時に世界有数の古代湖であります。湖辺や湖につながる川や山も含めて、非常に独特で大事な生態系を有しており、そうした生態系の中で生きられることは光栄に思いますが、水環境や私たちの生活、生産活動でそういったことがおびやかされることがあるならば、どうやって守っていくか、考える必要があります。考えるだけではなく、両先生の研究をはじめ、この中で得られた知見を全国に、世界に発信して、生き方や作り方を変えていこうという取り組みをしなければならない。7月1日は、びわこの日が制定されてちょうど40年の節目の年で、琵琶湖版SDGsとして、Mother Lake Goalsという目標を定め、琵琶湖や自然のために私たちが何をすればいいのか、皆さんに発信をし始めているところです。今後の研究活動ますます充実されることを期待しております。」とあいさつをされました。

なお、受賞記念講演は、オンライン(zoom ウェビナー)にて以下の日程にて行われます。

【日 時】
2021年8月7日(土) 14時~16時
【会 場】
Zoomウェビナーにて開催
【講演タイトル】
吉田丈人氏(総合地球環境学研究所・東京大学大学院総合文化研究科・准教授)
「人と自然の関わりのこれまでとこれから:生物多様性・地域文化からの学び」
源利文氏(神戸大学大学院人間発達環境学研究科・准教授)
「環境DNAで水中を覗き見る」

前列左から二人目が吉田准教授、三人目が源准教授
前列左から二人目が吉田准教授、三人目が源准教授

受賞した吉田准教授(左)と源准教授(右)
受賞した吉田准教授(左)と源准教授(右)

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