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★高所プロジェクトについて

○プロジェクトの目的
 高地は、人と自然の協調の知恵が長年に渡って育まれてきた生活圏であり、新しい人間―自然作用環のモデルが見出される可能性を秘めている。本研究の目的は、高地住民の生・老・病・死のありさまと、高地の生態、歴史、生業、文化の動態との関連性を、高齢者の健康と暮らしに焦点をあて、医学・地理学・農学・人類学・生態学を柱とした異分野融合的なアプローチによって解明することにある。その成果をもとに高地における人間―自然作用環のモデルを提出し、今日の地球環境問題の解決に資することをめざす。

○プロジェクトの背景
 高地は標高差によって生みだされる多様な生態系を持つ一方で、標高2000~2500メートルを超えると、低酸素、高紫外線、限られた生態資源などのため、人間の生活域としては厳しい環境である。世界の三大高地といわれるヒマラヤ・チベット、アンデス、エチオピアでは、人体の生理的適応と、地域固有の工夫に基づく生態資源の賢明な利用という文化的適応を通じて、持続的な生活圏を形成してきた。近年、その高地にも、人の移動、貨幣経済の浸透、ライフスタイルの変化をはじめとしたグローバル化の波がおしよせている。だが、これまでにも高地住民は、低地からもたらされるモノや情報を戦略的にフィルターにかけ、高地に適合する技術を選択し生業を営んできた。その意味で高地は、グローバル化の影響を人間の叡智がのりこえるモデルを発見できる可能性をもった生活圏である。なかでも、高地特有の人間―自然作用環の協調の知恵は貴重で、それは地域社会において、人生経験豊かな老人の身体ならびに考え方のなかにエッセンスとして受け継がれてきた可能性がある。
 本研究では、老人が有する知の蓄積、および高齢者が尊敬され、幸福に暮らすためにコミュニティーに培われた知を「老人知」と呼ぶ。そのような「老人知」への着目は、地球環境問題の解決に資すると考えられる。

○「地球環境問題」の認識
高地の生業形態や低地との流通システムが、高地住民の生・老・病・死に与える影響に焦点をあてる。近年、高地住民が直面しはじめたグローバル化とそれにともなう生態、文化的な変容が、人の疾病や老化のありさまとしてあらわれると考え、それらを身体に刻み込まれた環境問題として位置づける。


★各プロジェクトグループ(班)の役割

【フィールド医学班】
 人の生・老・病・死にそってあらわれる身体的な症状の解明。高地住民の栄養状態、老化、生活習慣病、さらには死因について現地調査を行う。人類学的な調査と連携して、高齢者のライフヒストリーや老人知に関する調査、フォローアップ調査などを行い、高地住民の疾病と老化の変容を探り、その背景となる生態、社会的な変化との関連性について考察する。

【文化班】
 身体にあらわれる症状と生業活動との関連性の解明。高地環境と人の生・老・病・死との相互関係を、生業と流通を通じて明らかにする。生業活動、資源利用の変遷、農業の変化、開拓の歴史と民族の移動、農村市場、伝統儀礼としての葬儀の変化、過去の飢饉に関する調査などをすすめると同時に、医学的アプローチと連携しながら、食事調査、高齢者ケア、在来治療、死の看とりについて調査を進め、グローバル化の影響を検討する。

【生態班】
 生態と生業活動および身体との関連性の解明。高地の生業活動を支える自然環境について、植生や気象の観点から、生産活動と土地・森林利用の変容を明らかにする。医学班、文化班と連携しながら、生業活動や高地住民の生・老・病・死との関連性を分析する。

(2009年9月3日更新)

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