地球研オープンハウス2012

地球犬と行く!世界一周の旅 ~砂漠化プロジェクト編~

解説者:田中樹(総合地球環境学研究所准教授・「砂漠化プロジェクト」プロジェクトリーダー)
アフリカとアジアの半乾燥ベルトや湿潤ベルトでの人々の暮らしや資源・生態環境(特に土)、農耕技術などの研究をしてきました。研究成果を人々の暮らしに役立てることを一番に考えています。地球研では、砂漠化をテーマとするプロジェクトに取り組んでいます。(研究者業績ページ

田中写真

- まとめ -

アフリカは私たちにとって遠い世界です。今回紹介した西アフリカの内陸国・ニジェールまでは、飛行機で15時間くらいかかります。実際にはヨーロッパなどでの乗り継ぎ時間があるので1日半くらいになります。

ニジェールは、国土の北半分がサハラ砂漠です。 私たち「砂漠化をめぐる風と人と土」プロジェクトが砂漠化の研究をしているサヘル地域は、年降雨が400㎜程度の半乾燥地で、人びとは農業や牧畜を営んで暮らしています。6月~9月までの4ヵ月間の雨季に、トウジンビエやササゲ、落花生、オクラなどが栽培されます。ウシやヤギ、羊、ロバ、ラクダなどが飼われています。国際機関の報告書などでは最も貧しい国の一つとされています。

干ばつ(雨が少なく作物の収穫が少なくなること)や土地の荒廃(水や風による土壌の侵食)、マラリアなどの病気、食料不足や栄養失調、電気や水道が行きわたっていないことなどが、新聞やテレビで紹介されることがあります。

実際に現地の村を訪れると、そこには私たちと同じような日常の暮らしがあります。子供たちは学校に行っています。立派な校舎ではなく、村によってはお父さんやお母さんが仕事の合間に作物の茎を集めて壁や屋根を作り教室にします。

雨季が始まると大人も子供も畑に出て作物の種を播いたり雑草を取ったりします。畑は広く、日本の畑のように1枚1枚に境界がありません。畑の中に大きな木が何本も生えていて、食料になる果実や家畜の餌になる葉を取ることができます。日中の気温が40℃を超える中での農作業になりますが、次の年の食料を得るためにみんな一生懸命に働きます。

鍬(すき)や鋤(すき)などの農具は、日本で使われているものとは形が違います。しかし、その土地の土や作物や人々の体の使い方に合うように機能的で合理的に作られています。

私たちの研究は、その土地の人々の日常の暮らしから様々なヒントを得るところから始まっています。人びとが安心して暮らせて、資源・生態環境の劣化が進まないようにするための第一歩は、村をぶらぶらと歩きまわることです。皆さんも、近所をぶらぶら歩いて、畑や川や草原や森や建物の様子をじっくりと観察してみてください。きっと何かが見つかることでしょう、これも「研究」のひとつの形なのです。

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