第29回 レジリアンス研究会
サブサハラアフリカの小農の営農形態は、主として天水農業であり、特に南部アフリカにおいて灌漑施設を備えた大規模な商業農園と対照的である。しかし、小農にも多様性を見出すことはできる。サブサハラ地域の主食は主としてトウモロコシと小麦だが、同様にミレットやソルゴー等の雑穀も重要な食料である。さらに、ウガンダとその周辺では甘くないバナナが主食である。特に陸稲を含む稲は多くの国で重要視されている。日本の技術協力は、主食としてのトウモロコシやミレット等の雑穀の技術的背景は十分ではない。 コミュニティーについては、井戸やため池を含む小規模の灌漑が農家グループにより運営されている。しかし、そのグループはモンスーンアジアの灌漑水利組合に比べると組織としての機能性は十分ではない。 いくつかの小農をターゲットとする日本の技術協力では、乾季における灌漑を導入し、例えば市場向け園芸作物により農業収入の機会を創出し、農家のやる気を引き出して持続可能な農業の展開を目的とする。もちろん、主食の安定的な収穫確保も生活の安定と健康維持のため、重要であることはいうまでもない。残念ながら、政府が掌握する市場では主食穀物の価格は低い。そのため、主食穀物の収穫増加への意欲と収入機会の創出は両立しない。 どのような技術、手段、手法がモンスーンアジアと全く異なるサブサハラアフリカの半乾燥地やサバンナに適当適切か、検討されなければならない。
久米 崇
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