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第55回地球研市民セミナーが開催されました


第55回地球研市民セミナー「地球温暖化リスクと人類の選択-温暖化についてもっとよく考えるための最新科学知見」が12月11日(水)、ハートピア京都で開かれました。講師は国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室長の江守正多さん。進行役は地球研准教授の檜山哲也さんでした。江守さんは昨年9月に発行されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次「報告書」の執筆に加わった方。今回の市民セミナーではその報告書の内容を中心に、そこから気候温暖化リスクをどう評価するかが話されました。

江守さんの講演は前半では、「報告書」の内容の紹介を中心に地球温暖化の現状と将来予測が延べられました。「報告書」の要点として「20世紀半ば以降の世界平均気温上昇の半分以上は人為的起源の要因による可能性が極めて高い」こと、予想される100年後の平均気温の上昇としてもっとも大きい場合4度前後、海面上昇として0.6〜1mが予測され、極端減少としては暑い日と暑い寄りの頻度が増加することの可能性がほぼ確実であること、などがあげられました。

講演の後半では温暖化の将来予測に基づくリスクをどう考えるべきかが中心に話されました。気候温暖化対策においては、対策に対する積極派と慎重派に分かれ対話が困難なこと、ただし積極派は深刻な悪影響リスクに注目しているのに対して慎重派は過剰対策による社会的リスクを憂慮しており、二つのフレームがずれていることにより対話が困難になっていること、そのような状況では、だれがどのようにリスクを判断するのかという意思決定の問題が重要になること、その際、専門家と社会の多様な意見が政治的に反映される枠組みが必要になってくることが述べられました。

科学的知見をどのように社会的合意に導くかという困難な課題に関する講演であったこともあり、質問時間では様々な角度から質問が出され、極地の温度変化のメカニズムに関する質問、水素エネルギーなどの代替エネルギー技術やエアロゾル散布による温暖化防止技術の可否などの工学的質問など多彩な質問が出されました。司会の檜山さんが用意した「原発事故後のエネルギー政策と温暖化についてどう考えるか」などの話題も時間切れで十分討論できないほどの白熱した質問が飛び交いました。