第52回 地球研市民セミナーが開催されました

このセミナーは、2013年10月に熊本で開催される、水銀の管理に関する「水銀に関する水俣条約」の外交会議に合わせて開いたものです。講師はグラッシー・ナロウズ居留地事務行政官のジュディ・デ・シルバさんと熊本学園大学水俣学研究センター長の花田昌宣さん。シルバさんはカナダの先住民で、河川への水銀の垂れ流しによって水銀中毒(水俣病)の被害者となってしまわれた方。花田さんは、シルバさんの住む先住民居留地に通い、現地で水俣病被害者の診察を続けている方です。

セミナーでは、まずは花田さんが、カナダにおける水俣病の発見とその対応の経緯を「環境・人間・カナダ水俣病」と題して説明。つづいて、シルバさんは、ご自身たちのグループが取り組んだ、グラッシー・ナロウズの魚や哺乳類における水銀の蓄積状況の調査について紹介されました。

グラッシー・ナロウズを流れる川の上流で製紙工場が操業しています。カナダの水俣病は、その製紙過程で使用される水銀が川に垂れ流されて環境中に蓄積し、住民に被害が出ているものです。1974年にアメリカの写真家のユージン・スミスと妻のアイリーン・スミスによってその被害の存在が見いだされました。日本における水俣病と同様の患者の認定基準が採用されたことなどもありその救済は進んでいないこと、その背景には先住民と入植した白人のあいだの差別構造の歴史的経緯が影を落としていることなどが話されました。

今回は討論の時間がたっぷりあったこともあり、参加された多くの方が質問や意見を述べました。関西において大気汚染からの地域の再生に取り組んでいるNPOのスタッフや、水銀の管理業務を経験したことのある人など多彩な立場の方から、認定基準や裁判闘争のあり方の問題など、多くの質問が寄せられました。(寺田匡宏)

このセミナーの模様は動画で配信しております(ページ下部)。


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写真左から、ジュディ・デ・シルバさん(講師)、花田昌宣さん(講師)、阿部健一 地球研教授(聞き手)


写真左から、会場の様子、参加者からの質問に答えるシルバさんと花田さん