第45回 地球研市民セミナーが開催されました


未来の世代のために、石油に頼らない生活をつくり上げていくことは、私たちに課せられたもっとも重要な課題の一つです。しかし、「ポスト石油時代」のための具体的な生活像はいまだ提示されていません。第45回市民セミナーでは、国際協力分野で「産油国の人づくり」に挑戦する大沼洋康氏(国際耕種株式会社)と、国産材の商品化によって地域活性化に取り組む中西昭雄氏(中西木材株式会社)から話題を提供していただきました。

大沼氏からは、石油資源の恩恵を受け外国人技術者・労働者に依存してきた湾岸地域では、自国の人材育成が緊急かつ重要な課題であることが報告されました。この問題に日本の技術と経験がどう役立つのか、さらにポスト石油後の湾岸地域の将来像が提示されました。

中西氏は、輸入材の台頭によって衰退を続けてきた日本の林業に、京都議定書をきっかけにして再生の兆しが見え始めたこと、その背景には輸入材消費によって日本の森林資源が増加し、加えて戦後植林された木が伐採適期を迎えていることを指摘されました。そして製材会社を経営する立場から国産材の、商品化に当たってのカスケード利用(一つの資源を多段階で利用すること)の重要性、価格面でまだ消費者を充分引きつけられない問題点が強調されました。

このセミナーは「石油資源がなくなったとき、どうやって生活していきますか?」シリーズの第3回として企画されました。第1、2回ではアフリカ、中東、日本での研究からポスト石油時代への問題点と展望が議論されてきました。これらの議論をさらに日常生活に引きつけていくことをめざして、今回は企業で活躍するお二人を講師に迎えました。ただ、ポスト石油時代に向けた具体的な生活像は、各人が知恵を絞って考え続けなければならない問題であることに変わりありません。(石山 俊)

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写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、石山俊 地球研プロジェクト研究員、縄田浩志 地球研准教授


写真左から、大沼洋康 国際耕種株式会社代表取締役、中西昭雄 中西木材株式会社代表取締役、質疑の様子


会場の様子