第41回地球研市民セミナーが開催されました


“Don't be afraid to talk about spirit”と語りかけるボブ・サムさん。その言葉は、自然や見えないものへの畏れ、それらと共存する喜び、自然環境劣化への懸念を、頭だけでなく心で理解する大切さを教えてくれます。神話には、文化や世代の壁をやすやすと越える力があり、ボブ・サムさんによって語り継がれた一言ひとことが、聴衆の心を引き付けます。

今回の市民セミナーは、アラスカ、クリンギット族の語り部ボブ・サムさんと、羽生淳子地球研招へい研究員(カリフォルニア大学バークリー校人類学科准教授)を講師として行なわれました。最初に羽生さんが、クリンギット族の歴史的・文化的背景と、以前からの友人ボブ・サムさんの人柄を紹介しました。続いて、鷲の羽を両手にボブ・サムさんが語ったのは、クリンギット族の長老オースティン・ハモンドさんから受け継がれたHow Spirit Came to All Things「魂がすべてのものに宿るまで」という神話でした。ステージ上のスクリーンには、ボブ・サムさんの盟友である星野道夫さんの「Spirit of the Arctic 極北の魂」の映像が流されました。

語りの後、羽生研究員、阿部健一地球研教授を交えての対談が行なわれました。ボブ・サムさんの故郷アラスカ州シトカでは過剰な 森林伐採がなされ、シトカ・スプルースなどとして多くの木材が日本に輸出されていること、シトカの沖で乱獲されるニシンの問題など。それでもボブさんは、アラスカと日本の関係を分断する問題より、両者の繋がりを強調していました。アラスカ先住民と日本人は共通の先祖をもっていると言われ、食習慣や文化にも共通したものが数多く存在します。その一つが、カラスを敬う神話や数の子を食べる習慣です。「私たちは同じ、ね。」という言葉で、一緒にそうした課題を考えようと語りかけてくれました。(小林 舞)

grayline
写真をクリックすると拡大します。

写真左から、ボブ・サム クリンギット族の語り部、羽生淳子 地球研招へい外国人研究員、阿部健一 地球研教授


写真左から、質疑応答の様子、会場の様子