第40回 地球研市民セミナーが開催されました


「石油資源がなくなったとき、どうやって生きていくか」。現代に生きる私たちが考えなければならない重要な問題の一つです。しかし、決定的な解決策はまだありません。いま私たちにできることは、石油に 頼らない技術を開発すること、「石油以前」のライフ・スタイルをヒントに、脱石油時代の生活像を模索し続けることでしょう。

今回の市民セミナーでは石山俊・地球研プロジェクト研究員、鷹木恵子・桜美林大学教授の2人がそれぞれ、「田舎くらしは環境にやさしいか?──つくりあげるくらしと自然エネルギー」、「チュニジア・オアシス地帯の伝統的生活とその未来──ナツメヤシとレンガと太陽エネルギー」というテーマで、日本の農村、チュニジアのオアシスで育まれてきた暮らしと、それらの地域がかかえる現代的環境問題とその解決の可能性について話題を提供しました。

石山研究員からは、みずから経験した事例から、人と自然が適度な距離を保ちながら成り立っていた「田舎くらし」を紹介したあと、過疎化や高齢化によって石油に頼らざるをえない現代の「田舎くらし」の側面が報告されました。最後には、木質バイオマスエネルギー利用の可能性を紹介しながら、「エコ」な暮らしのためには、田舎からの発想の大切さが指摘されました。

鷹木教授はまず、ナツメヤシ農園やナツメヤシのさまざまな利用法、円熟したレンガ建築技術などをとおして、チュニジアのサハラ・オアシスでの伝統的な生活スタイルを紹介しました。しかし伝統的オアシス農園の暮らしは、大きな変化にさらされています。若者の流出により農園の担い手は減り、薪を燃やして焼成するレンガ生産は環境破壊の原因とみなされています。こうした問題に対して、地元民が組織したNGO によるエコミュージアム活動、日本の技術者が普及を試みる「エコ・レンガ」プロジェクトが報告され、最後にサハラにおける太陽光利用の可能性が示されました。(石山 俊)

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写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、縄田浩志 地球研准教授、石山俊 地球研プロジェクト研究員


写真左から、鷹木恵子 桜美林大学教授、質疑応答の様子、会場の様子