第38回 地球研市民セミナーが開催されました


今回の地球研セミナーでは、京都の建築・都市史を専門とされる京都工業繊維大学の中川理教授をお招きして、村松伸教授との間で、京都と渋谷のまちの遺産について熱い議論が交わされました。第1ラウンド・京都、第2ラウンド・渋谷として、中川教授、村松教授がそれぞれのまちの遺産の特徴を提示し、第3ラウンドは相互に意見をぶつけ合い、最後に会場の人が勝者を決めるという趣向を凝らした対決スタイルに、雨にもかかわらず130名もの聴衆で埋まった会場は盛り上がりました。

私たちの多くが住む都市やまちは、一朝一夕にできあがった訳ではなく、長い時間の中で、自然や人々が築き上げた地形や建物などが、幾重にも重なってできています。そんな歴史が培ってきた遺産が、まちを育み、都市を育み、地球を育んでいるという視点が、「都市は地球の友達だ」という言葉でもって、最初の趣旨説明で村松教授から提示されました。第1Rで中川教授は、京都は千年の歴史があるが、実際は寺院など中世からのものは意外に少ないと指摘し、逆に明治期の御苑整備や平安神宮建設などを例に、歴史都市・京都を演出する形でまちに手を加えていくことが、京都の魅力を維持し、都市としての持続力を生んできたという興味深い特徴を示されました。

一方、村松教授は、目まぐるしく変化する渋谷のなかにも、古代の大地の記憶から現代の若者文化まで、実に多種多様なひと・もの・自然が存在し、それらを受け入れる寛容性が、新たな知を創造する土壌を生むと指摘しました。

その後も持続力と寛容性を焦点として相互に議論がなされ、最後は「どちらの都市が、地球とよりよい友達か?」という基準のもと、会場からの拍手によって京都の勝利で決着しました。。

議論の途中、「私は、大阪がいい」という発言が聴衆から出て会場を沸かせましたが、最後に村松教授から、そうした自らが関与するまちに対するリテラシーをそれぞれの人が鍛え上げ、まちをよりよく知り、都市と地球のあり方を共に考えていくことの重要性が提起されて幕を閉じました。(林憲吾)

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写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、村松伸 地球研教授、中川理 京都工業繊維大学教授


写真左から、林憲吾 地球研プロジェクト研究員、対談の様子、会場の様子