第36回 地球研市民セミナーが開催されました


今回の市民セミナーは、2009年8月に駐大阪神戸インド総領事として赴任されたヴィカース・スワループ氏の、インド政府の環境政策をめぐる講演を中心に、後半は聴衆や長田俊樹教授からの質問やコメントに対しスワループ氏が答える形で構成されました。スワループ氏は、アカデミー賞受賞映画「スラムドッグ$ミリオネアー」の原作者としても著名な方です。雨模様の寒い日にもかかわらず、ホールは百人近い聴衆で埋まり、熱気にあふれた議論が展開されました。

前半の講演で、スワループ氏は、まずインドの分離独立後のめざましい経済・社会発展の実情を具体的なデータをもとに紹介した後、インド政府が現在の環境問題と貧困問題にいかに向き合っているかについて、詳しく説明しました。特に気候変動については、インドの多様な環境資源や、モンスーンに依存する農業生産への影響が大きいことから、政府として重点的に取り組んでおり、CO2排出削減の目標値を定めることはしないが、さまざまな環境汚染要素に対する法規制や、植林、代替エネルギーへの投資等を通して、着実にエネルギー効率を改善してきているとの指摘がありました。その当時開催されていたCOP15においても、インド政府は、持続可能な地球環境の維持に向けて、世界各国との協力に積極的に取り組む方針で臨んでいるとのことでした。

後半では、人口増加、森林破壊、貧困問題、都市環境の悪化等に対するインド政府の対策について、幅広く質疑が交わされました。特に、故インディラ・ガーンディー首相の「環境問題は経済問題に帰着する」との言葉を引用して、インド政府が、2億人におよぶ貧困層に水や電気等の最低限の生活環境を提供することを当面の目標としている、と答えたのが印象的でした。また、最後に、スワループ氏の作家としてのインド観や、日本に対する印象についても、興味深い話を聞くことができました。

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写真左から、立本成文 地球研所長挨拶、長田俊樹 地球研教授、ヴィカース・スワループ 駐大阪神戸インド総領事


写真左から、講演の様子、対談の様子、会場の様子