第32回 地球研市民セミナーが開催されました


第32回地球研市民セミナー「石油資源がなくなったとき、どうやって生活していきますか?」が、4月17日、地球研講演室で開催されました。

人類はすでに石油生産が需要に追いつかなくなるポスト石油時代に突入しており,石油資源に依存してきた人間生活は近い将来に終わりをむかえます。「石油資源がなくなったとき,どのように生活してゆきますか?」という問題について,今回の市民セミナーでは,児玉香菜子・千葉大学准教授の司会のもと,縄田浩志・地球研准教授と嶋田義仁・名古屋大学教授が講演しました。

石油資源の90%を中東諸国に依存している日本と,水・食料の多くを輸入に頼っている中東諸国は,エネルギー・水・食料を長距離輸送することにより地球環境に多大な負荷をかけています。ポスト石油時代を生きぬくためには新たな日本―中東関係を模索しなければなりません。縄田准教授は,その土地に根ざした人間の最も基本的な営みである「なりわい」からの問題解決を目指す,自身がリーダーをつとめる地球研プロジェクト「アラブ社会におけるなりわい生態系の研究:ポスト石油時代に向けて」を紹介しました。

嶋田教授は,イラク戦争にみるように石油危機はすでに始まっているとし,人類の危機を生きるヒントを乾燥地の生活に見出しました。石油時代以前にすでにアフロ・アジアの内陸乾燥地にはアニマルパワーによる国際交易網と世界帝国(モンゴル帝国,アラブ系帝国,アフリカ系帝国など)が構築されており,そこには,現在の人類が学ぶべき,不足を補いあう諸地域・諸民族の交流があったとしました。

セミナー参加者の九割は50歳代以上でしたが,まさに石油時代を生きてきた世代の方々とポスト石油時代問題を共有することができた点で今回のセミナーは有意義でした。「将来に対する提言が聞きたかった」,「さらに内容を深めたうえでの提言を期待します」というアンケート結果を受けて,今後シリーズ化してこの問題を皆様と考えてゆければと思います。

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写真左から、立本成文地球研所長挨拶、嶋田義仁・名古屋大学教授、縄田浩志・地球研准教授


司会・児玉香菜子千葉大学准教授(写真左)、議論の様子(写真中)、会場の様子(写真右)