共同利用

地球研は、大学共同利用機関として学術の発展に寄与するために、共同利用の機能を充実させ、「同位体環境学共同研究事業」を展開しています。
地球研の研究活動に参画する国内外の研究者が実験施設・装置を利用し、効果的に先端的な共同研究ができる環境を提供しています。同位体環境学共同研究事業に採択された研究者は、共同利用設備の一部を使うことができます。

実験施設

地球研は、国内外のさまざまな地域で共同研究をおこない、多様な研究試料を取り扱っています。試料のなかに眠るいろいろな種類の環境情報を取り出し、それぞれの関係性を総合的に理解することで、地球環境問題を引き起こしている人間と自然の相互作用環の姿を明らかにすることができます。地球研が実施している研究プロジェクトや同位体環境学共同研究に関係する国内外の研究者(2021 年度は 50 機関、合計 215 名の研究者)が地球研の実験施設を利用し、地球環境問題の解決をめざした研究をおこなっています。

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地球研には18の実験室があります。汚染のない環境で試料を処理するクリーンルームや、生物や氷床コアなどの試料を保管する低温保管室、人工的に管理された環境で生物を育てる恒温室もあり、さまざまな分野が共同して進める環境研究の展開を可能にしています。また、汎用性が高く新たな地球環境研究への発展が期待される、先端的な共通機器を重点的に整備しています。光学・電子顕微鏡などの屋内実験機器や測量機器などの野外観測機器に加え、安定同位体測定のための軽元素安定同位体比測定用質量分析装置(IRMS)、表面電離型質量分析装置(TIMS)、マルチコレクタICP-MS、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)、水同位体分析装置、年代測定のためのガンマ線スペクトロメーターなどが設置されています。微量元素や安定同位体に関する情報分析技術や手法は、近年急速に発展してきており、高精度な情報獲得に向けて最先端の分析機器を整備しています。共通機器の利用については、実験施設ウェブサイトをご覧ください。

恒温室

▲ Room1:恒温室

5℃、15℃、25℃の 3室があり生物の恒温実験などがおこなわれています。

顕微鏡室

▲ Room3:顕微鏡室

機能の異なる顕微鏡が各種設置されており、試料観察だけでなく年輪の精密測定や微小試料の回収などに利用されています。

表面電離型質量分析装置(TRITON)
表面電離型質量分析装置(TRITON)
マルチコレクタICP-MS(NEPTUNE plus)
マルチコレクタICP-MS(NEPTUNE plus)

▲ Room7:同位体分析室 1

2種類の質量分析装置による金属元素や重元素の安定同位体比分析のほか、ガンマ線測定装置による放射線測定がおこなわれています。

誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS 7500cx)
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS 7500cx)
有機物C・N同位体比測定装置(FlashEA-ConFloIV-Delta V advantage)
有機物C・N同位体比測定装置(FlashEA-ConFloIV-Delta V advantage)

▲ Room8 同位体分析室 2

5 種類の磁場型質量分析装置による軽元素の安定同位体比(H, C, N, O, S)測定のほか、ICP-MS質量分析装置による元素分析がおこなわれています。

水同位体比分析計(L2140-i)
水同位体比分析計(L2140-i)
イオンクロマトグラフ(ICS-6000)
イオンクロマトグラフ(ICS-6000)

▲ Room10 化学分析室

イオンクロマトグラフ、ICP発光分光分析装置のほか、CRDS方式の装置による水同位体比分析がおこなわれています。

野外調査準備室

▲ Room12:野外調査準備室

野外観測や調査に必要な備品・消耗品類が保管されており、調査前の機器調整がおこなわれています。

クリーンルーム

▲ Room14:クリーンルーム

クリーン度ISO クラス 5-6の清浄な実験環境で環境試料の高度処理がおこなわれています。

試料処理室

▲ Room17:試料処理室

乾燥、粉砕、切断、研磨、分離などの処理を効率的におこなうための機器類が設置され、環境試料の一次処理に利用されています。

試料保管室

▲ Room18:試料保管室

温度制御された 4室(20℃、5℃、-10〜0℃、-30℃)があり、雪氷、生物、水、考古遺物などの試料が保管されています。

同位体環境学共同研究事業

地球環境に関する研究においては、対象とする地域や時間のスケールはさまざまですが、水・大気・生物・土壌など生態系を構成する種々の要素、人間の活動とその歴史など、あらゆる人間と自然の相互作用環のなかに、元素の安定同位体比という「指紋」が内在しています。地球研では、多様な環境物質と多くの元素について、この指紋情報を得ることができる実験機器を整備してきました。これらの分析を通じて、地球環境問題の解決に資する研究をおこなうことは重要なミッションです。地球研では、これらの研究を「同位体環境学」と呼び、全国の研究者との共同研究を2012年度より進めています。

同位体環境学共同研究事業は、「地球化学」「水文学」「生態学」「地質学」「鉱物学」「人類学」「食品科学(産地判別)」「科学捜査」など、細分化された専門的学問領域で活用されている「同位体手法」を、幅広い環境学の研究に利用し、単なる「機器の共同利用」ではなく、「研究方法」や「研究成果の活用方法」も共有する共同研究をめざしています。同位体環境学共同研究事業は年度ごとに公募しており、幅広い分野の申請を受け付ける「一般共同研究」と、計測・分析部門と密に連携した新しい分析手法の開発などをおこなう「部門共同研究」を募集しているほか、2018〜2019年度は「特設分野の共同研究」の募集もおこない、2020年度からは人間文化研究機構の機関と連携を強化するために「機構共同研究」を開始しました。2021年度からオンライン申し込みシステムも稼働しています。

同位体環境学共同研究事業に採択された方には、「同位体環境学講習会」(毎年夏期に開催)によって技術を習得していただき、「同位体環境学シンポジウム」(毎年12月に開催)において発表することで研究結果の取りまとめに生かしていただいています。「同位体環境学シンポジウム」では、特に学生や若手の研究者にとって、研究室や個別学会での議論では得られない幅広い意見をいただくことで、新たな発見や研究シーズを得る機会として役立っています。また、日本地球惑星科学連合大会(Japan Geoscience Union; JpGU)に「環境トレーサビリティー手法の開発と適用」というセッションを設け、得られた研究成果の発信にも活用していただいています。2020年度から続くコロナ禍のもと、オンラインビデオ教材を作成したり、オンラインでのガイダンスやワークショップ、「同位体環境学シンポジウム」の開催などを行いました。

同位体環境学共同研究事業は、2022年度には「一般共同研究」65課題、「計測・分析室共同研究」5課題が採択されました。「機構共同研究」は、2022年度から広領域連携型基幹研究プロジェクト「人新世に至る、モノを通した自然と人間の相互作用に関する研究」を通じて行う予定です。また、2012年度から2021年度の間に、国公立大学54機関、私立大学16機関、国公立の研究機関等27機関、海外の大学・研究機関等19機関の利用がありました。公募要領など、詳しくはウェブサイトをご覧ください。

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