アラブ社会におけるなりわい生態系の研究

─ポスト石油時代に向けて
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研究プロジェクトについて

西アジア・北アフリカの乾燥地域において、1000年以上にわたり生き残り続けることができた、アラブ社会の生命維持機構と自給自足的な生産活動の特質を明らかにし、ポスト石油時代に向けた、地域住民の生活基盤を再構築するための学術的枠組みを提示することをめざしました。

何がどこまでわかったか

スーダン半乾燥地域、サウディ・アラビアの紅海沿岸、エジプトのシナイ半島、アルジェリアのサハラ沙漠において、低エネルギー資源消費による自給自足的な生産活動(狩猟、採集、漁撈、牧畜、農耕、林業)を中心とした生命維持機構、すなわち「なりわい」に重点を置いた生態系の実証的な解明を試みました。その結果、地域住民の生活基盤を再構築するための学術的枠組みを提示し、ポスト石油時代における自立的将来像の提起へとつなげることができました。具体的には、キーストーン(なりわい生態系で要となる種)のうち、植物に関連するナツメヤシ、マングローブ、外来植物であるメスキートの研究からは、乾燥地における在来植物と外来植物の新 たな利用法を開発することによって、化石燃料に依存しない、食料やエネルギーとしての樹木資源の創出を論じることができました。一方、動物に関連するヒトコブラクダ、サンゴ礁、ジュゴンの研究からは、乾燥熱帯沿岸域(特にスーダン・ドンゴナーブ湾地域)での生物資源管理のための学術的基盤を提示することができました。

私たちの考える地球環境学

写真1 プロジェクト研究成果の出版物

写真1 プロジェクト研究成果の出版物

日本や中東諸国は、水・エネルギー・食料の観点から見て、地球環境に多大な負荷を与え続けてきました。自国の経済的繁栄を維持・拡大することを最優先に、中東地域における化石燃料や化石水といった再生不可能な資源の不可逆的な利用が過度に推進されてきました。それと同時に、外来種の植林による地域の生態系の改変や、資源開発による社会上層への恩恵の集中をもたらしました。現代石油文明が分岐点を迎えつつある今、これからの日本・中東関係は、化石燃料を介した相互依存関係から、地球環境問題の克服につながる「未来可能性」を実現する相互依存関係へと一大転換する必要があります。プロジェクトでは、その社会設計のために、これまで中東地域で育まれてきた生命維持機構、さらには将来に向けて維持していかなければならない生産活動の特質を、「地球環境学」の観点から実証的に明らかにしていく基礎研究を推進しました。

新たなつながり

写真2 国立科学博物館にて開催した企画展

写真2 国立科学博物館にて開催した企画展
「砂漠を生き抜く-人間・動物・植物の知恵」のようす

地球研市民セミナーの内容をもとに、地球研叢書『ポスト石油時代の人づくり・モノづくり―日本と産油国の未来像を求めて』(昭和堂)を2012年度に出版しました。また、『砂漠誌―人間・動物・植物が水を分かち合う知恵』(東海大学出版会)、『アラブのなりわい生態系』(臨川書店)第2・3・4・6・7 巻、さらには、多言語(アラビア語、英語、フランス語、スワヒリ語)による「アラブなりわいモノグラフシリーズ(Arab Subsistence Monograph Series)」(松香堂書店)第1・2巻を出版しました。研究成果をまとめ社会に発信するとともに、アラブ社会の研究者、行政従事者、開発事業者、地域住民に向け、研究成果の社会還元をすることができました。

2013年度には国立科学博物館にて、企画展「砂漠を生き抜く―人間・動物・植物の知恵」を約2か月半にわたり開催しました。11万人以上の来場者を記録し、のべ27回に及ぶ講演会、実験講座、民族衣装試着会、ギャラリートークを通じて、多くの一般の方に研究成果に触れてもらうことができました。

また、調査対象国であるスーダンにおいて実施されている国際協力機構(JICA)による開発援助事業にプロジェクトリーダーが参画し、研究成果の行政現場への応用、さらにはその結果を再び学術界へフィードバックするまでを成し遂げることができました。

プロジェクトリーダー

プロジェクトリーダー

氏名所属
縄田 浩志秋田大学国際資源学部
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