リーマンショックやアベノミクスの例を挙げるまでもなく、現代の金融は世界経済を動かす大きな力となっています。しかも昨今、金融は経済発展だけでなく、さまざまな社会問題の解決にも重要な役割を果たすようになってきました。排出権取引やクレジットオフセットといった、金融の手法を用いて地球環境問題の解決を促そうとする動きもそのひとつで、これらはすでに先進国の一部で実行に移されています。そして現在、途上国においても、森林減少・劣化を抑制した分の温室効果ガス削減をクレジット化するREDDプラスという枠組みが国際的に議論され、本格的な始動に向けて準備が進んでいます。
これまで私たちは、東南アジアの自然や社会を這いずり回りながら、現地からみた開発と環境保全とのせめぎあいを研究してきました。そこで目の当たりにしてきたのは、遠い世界で決まっている事柄に、現地の自然や社会が翻弄されている状況でした。上に挙げたような国際的な動きは、そのような状況を打破し、開発と環境の新たなバランスを提示してくれるのでしょうか、それとも、現地の自然や社会をさらに翻弄させる新たな一因となり果ててしまうのでしょうか。このような疑問をメンバーが共有し、本FSを進めています。