2025.03.25
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Prabir Patra教授(Aakashプロジェクト)が議長を務める世界気象機関「G3W」タスクチームが始動
地球研のAakashプロジェクトのプロジェクトリーダーPrabir Patra教授が、国連の専門機関である世界気象機関(WMO: World Meteorological Organization)の温室効果ガス監視タスクチーム(Global Greenhouse Gas Watch (G3W) Task Team (TT) -Network)の議長に選出されました。2026年秋までの任期で、温室効果ガスの観測・分析の枠組み強化を推進しており、2024年11月には初会合が開かれました。
Prabir Patra教授
WMOは、気象、気候、水文、環境に関する国際協力を促進する国連の専門機関です。最新の取り組みとして、産業革命前比で気温上昇を2℃未満に抑えることを目標とするパリ協定の実施を支援するため、G3Wの構想を2023年の第19回世界気象会議で採択し、2024年にタスクチームを立ち上げました。G3Wは、温室効果ガスの観測・分析体制を強化し、各国の気候変動対策を支援することを目的としています。地上および宇宙ベースの観測システムを統合し、モデリングやデータ同化技術を活用することで、より精度の高い監視体制を構築します。
Patra教授は、「G3Wは、温室効果ガスの濃度および陸上や海洋における排出・吸収のデータを、遅延なくかつ頻繁な更新で提供することを目指しています。G3Wシステムが完全に稼働すれば、現在の気象予報システムと同様の機能を果たすことになるでしょう」と語っています。
現在、G3Wのタスクチームには約60名の専門家が参加し、以下の三つの主要分野で活動を進めています。
- モデリングタスクチーム(議長:Dr. Lesley Ott、NASA):WMOの技術ガイドラインに基づき、温室効果ガスの動態を予測するためのモデルを開発。
- データタスクチーム(議長:Dr. Laurence Rouil、ECMWF):各国の観測機関と連携し、収集データの標準化や品質管理を担当。
- ネットワークタスクチーム(議長:Patra教授): 2025年半ばまでに観測ネットワークのリストと規制に必要な情報をWMOの技術ガイドラインに基づきまとめ、2025年後半には温室効果ガス観測システムの設計に関する提案を行い、世界規模での観測能力向上を目指す。
Patra教授は、任期中の導入・準備運用段階における課題として、資金調達の重要性を指摘し、「さまざまな金融機関や各国政府に向けて、説得力のある計画を作成し、支援を得たい」と意気込みを語りました。さらに、「現在、多くの地域、特に熱帯地域の陸地や海洋では高品質な観測データが不足しており、自然生態系がどのように炭素を吸収しているのか、また将来的にどのように変化するのかを理解する上で大きな障害となっています」と観測における現在の問題も指摘しています。
今後、G3Wの活動を通じて、温室効果ガスの排出・吸収に関するより詳細なデータが提供され、パリ協定の目標達成に向けた科学的根拠が強化されることが期待されています。