2025.03.15

お知らせ

陀安一郎副所長が第23回(2025年)日本生態学会賞を受賞

2025年3月15日、陀安一郎副所長が第23回(2025年)日本生態学会賞を受賞しました。

「日本生態学会賞」は、顕著な研究業績により生態学の深化や新たな研究展開に指導的役割を果たした本学会員に対して授与される日本生態学会の最も権威ある賞です。受賞者は会員から推薦された候補者の中から選考され、大会時において表彰されます。

選考理由

陀安氏は、生体物質に含まれる各種元素の同位体比から得られる情報から生態学的プロセスを推定する「同位体生態学」の開拓と発展に一方ならぬ貢献を果たしてきた。研究経歴の初期においては、窒素や炭素の安定同位体比分析を応用して、木材食のシロアリが乏しい窒素源を補うために空気中の窒素を固定し獲得することや、熱帯の陸域生態系の分解者として重要なシロアリの食性が木材食や土壌食に多様化した過程を明らかにした。これらの先駆的な成果は総説や教科書などに広く引用されている。以降は、軽元素安定同位体に加え、重元素や放射性元素、アミノ酸窒素などの同位体比分析を、食物網解析、物質循環、流域評価、魚類の回遊履歴の解明などに適用することで、幅広い生態学分野での先進的な発見を導いてきた。これらの研究は総被引用回数5000回を超える200報以上の論文として公表されている。陀安氏の生態学への唯一無二の貢献として特筆すべきなのは、同位体生態学の研究実施拠点の整備と維持に果たしてきた役割である。総合地球環境学研究所における同位体環境学共同研究事業や、生態学研究センターにおける安定同位体比分析システム共同利用の推進を通じて、国内外の同位体生態学の基盤形成と発展をもたらした功績は計り知れない。人材育成にも熱心に取り組み、陀安氏が指導した学位取得者やポスドクの多くが研究職に従事している。学会への貢献としても、専務理事、監事、大会企画委員長、Ecological Research誌のAssociate Editor-in-Chief、日本生態学会誌編集幹事として長年にわたり学会と学会誌の運営に力を発揮してきた。これらの功績により日本生態学会賞にふさわしいと評価できる。

受賞者コメント

日本生態学会は学部4回生から出席している学会で、本学会を中心として、現在は学際的な同位体環境学の研究を推進しています。今後も、同位体生態学・同位体環境学をベースとした幅の広い共同研究を推進していきたいと思っております。

受賞した陀安副所長(左)

関連リンク

一般社団法人 日本生態学会 日本生態学会賞歴代受賞者
https://www.esj.ne.jp/esj/award/gakkai/list.html

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