2022.04.22
研究ニュース
つなぐ×ひろがる 地球環境学ビジュアルキーワードマップ ~地球環境問題に関する情報の複雑な関係が可視化できる探索サイト~
【概要】
近年、各種データベースがインターネット上でかなり整備され、データを探索するためのポータルサイトも増えています。地球環境問題を扱ったデータベースやポータルサイトも例外ではありません。
しかし、地球環境問題を引き起こす複雑なメカニズム、それを克服するための政策、そしてあるべき生活様式を考えるうえで、注目すべきデータや情報が得られ、それらの関係性を知ることができるような支援サイトは見当たらないのが現状です。
そこで、総合地球環境学研究所情報基盤部門の熊澤輝一准教授らは、地球環境学の学術用語に絵が添えられた「キーワードアイコン」を使って、地球環境問題に関する用語同士の関係を調べたり、用語にひもづく情報を閲覧したりすることもできるような情報サイト「地球環境学ビジュアルキーワードマップ(VKM)を開発しました(http://gesvkm.chikyu.ac.jp)。
地球環境問題に関する情報の複雑な関係が可視化できるこのウェブサイトは、研究者だけでなく広く一般の方々にも利用しやすく、情報を探検しながら今後知るべき情報がさらに明らかになるようなツールです。
研究チームは今後、これまで地球研に関わった研究者情報と連携することで、地球研ならではの知識情報の探索サービスを提供するとともに、VKMを利用した教育コンテンツやワークショッププログラムの開発にも着手する予定です。
ビジュアルキーワードマップ(VKM、http://gesvkm.chikyu.ac.jp)
【開発の背景】
近年、インターネット上においても、個別の分野で計測されたデータや収集された資料を格納したデータベースがかなり整備されてきました。データを探索するためのポータルサイトも増えています。
環境問題が起こる複雑なメカニズム、克服のための政策、あるべき生活様式について考えるためには、様々な分野から問題に切り込んで学際的に議論を進める必要があります。しかし、現在、そもそもどのようなデータや情報に注目すべきかを知るための支援サイトを、私たちは持っていません。
そのようなサイトとして、まず、環境問題を考えるための視点や物事の間にある関係を知ることができるとよいのではないか。
総合地球環境学の構築を掲げる地球研としては、社会及び学術コミュニティへ提供する情報サイトとして、様々な分野・立場の人にとって共有でき、かつ、とくに分野を横断することで環境問題と文化との結びつきを理解できるものが必要と考えました。
【開発の目的】
「地球環境学ビジュアルキーワードマップ(VKM)は、地球環境学の用語をご紹介し、それらの関係性を可視化するコンテンツを通じて、環境と文化の問題にかかわる複雑な「つながり」のありようについて探究するために開発されたものです。
地球環境学の学術用語に絵が添えられた「キーワードアイコン」を使って、用語同士の関係を調べたり(MAP)、用語にひもづく情報を閲覧したりすることができます(キーワード情報)。 気になった用語を一時的に保存しておくことも可能です(KEYWORD LAB.)(図1)。
このサイトでのキーワードアイコンと関連情報の探検を通して、環境文化の学際研究の勘どころを経験しつつ、これから何を勉強すれば良いか(何について調べて、誰のことを知れば良いか)ということに、自ずから到達できます。
図1 地球環境学ビジュアルキーワードマップ(VKM)の特徴
【開発方法】
「研究視点キーワードアイコン(以下、視点アイコン)」(解説1)を入口に(※SDGsの17の目標を表すピクトグラム及びフリーワード検索からも入れます。)、「研究対象キーワード(以下、対象アイコン)」(解説2)とその詳細情報を探索していきます。そのために、以下の開発作業を実施しました。
1. 地球研の各研究プログラムと各研究プロジェクトの特徴を表すキーワードを選定し、これを表現するキーワードアイコンを制作
2. キーワードアイコン間の意味連関を記述するためのオントロジー(概念辞書)の構築
3. キーワードアイコンから紐つけられたデータを返す機能(WebAPI)の構築
4. 所内外の地球環境学関連サイトおよびデータの所在情報をオントロジーを介して連携させる機能(WebAPI)の構築
5. 蓄積した各種(キーワードアイコン、文献情報、所在情報、オントロジー)データとデータ間の関係を格納したデータベースの構築
6. 1から5の構築物が機能する状況を可視化し、ユーザによるクリック操作を可能にするユーザインターフェース(UI)の構築
図2 地球研の研究活動を反映した地球環境学VKMのサイトストーリー
サイトストーリーとは、対象とするWebサイトの全体像がどのようなものか表現したもの。地球環境学VKMは、地球研の研究プログラムの研究視点のもとで研究対象について考えるという、地球研の研究活動のあり方に即したサイトストーリーに基づいてデザインされている。
【用語解説】
※ キーワードアイコン 「地球環境学ビジュアルキーワードマップ」には、2種類のキーワードアイコンがある。
1)研究対象キーワードアイコン(略称:対象アイコン)
このサイトを構成するもっとも基本的なキーワードアイコン群です。地球環境学の研究対象は非常に広範かつ多岐にわたるが、このサイトでは、地球研の研究プロジェクトから抽出された用語よりキーワードを制作している(図3)。
2)研究視点キーワードアイコン(略称:視点アイコン)
現代の地球環境学研究における基礎的な研究視点から制作されている。地球研の研究プログラムから抽出された。
図3 地球研の研究プロジェクトを研究対象キーワードアイコンで表現
【開発の成果】
地球環境学VKMは下記のような機能を持ちます。
1. 関連するキーワードアイコンの表示:MAP
選択したキーワードアイコン(中央)の周辺に関連したキーワードアイコンが表示されます(ただし、その距離と意味の近さの 間に、厳密な関係はありません。)(図4)。キーワードアイコン間の意味連関を記述するための技術には、オントロジー工学の手法を用いています。
2. 簡単な用語解説、関連する資料や本、Webサイトの情報の掲載
キーワード詳細表示画面(図5)には、選択したキーワードアイコンのキーワードについて、簡単な用語解説を記載されているほか、以下のような情報が掲載されています。
・「地球研の本棚」:Web上にある地球環境学関連の書誌に関連するWebサイトとリンクしています。 現時点での対象は、地球研に在籍したことのある方の著書、地球研プロジェクトの共同研究員の著書です。
・「地球研アーカイブズ(地球研ニュースを中心に)」:定期刊行物:『地球研ニュース』の個別記事を中心に、プレプリント、報告書、発表・講義資料など、所内データベースに格納された成果物とリンクしています。
・「参考サイト」大学、研究機関、NGO・NPO、行政、企業等の各種団体が保有する地球環境学関連のWebサイトとリンクしています。具体的には、各種団体のWebサイト、ブログ、学会のWebサイト、オープンデータを有するサイト、論文(オープンアクセス)が対象です。
図5:キーワード詳細表示画面
3. お気に入りのキーワードアイコンを保存:KEYWORD.LAB
お気に入りの対象アイコンを保存できます。対象アイコンを集める過程で、ある条件を満たすと、ユーザにおすすめの地球研プロジェクトが表示されます(図6)。
図6 KEYWORD.LAB
【今後の展望】
研究視点と研究対象に関するキーワードアイコンを用いることで、様々な分野・立場の人にとって利用しやすく、かつ、とくに分野を横断することで環境問題と文化との結びつきを理解できるサービスを提供しています。
今後は、これまで地球研に関わった研究者情報と連携することで、地球研ならではの知識情報の探索サービスを提供したいと考えています。
VKMを利用した教育コンテンツやワークショッププログラムの開発を進め、様々な立場や分野の方が、学際的観点から環境問題が起こる複雑なメカニズム、克服のための政策、あるべき生活様式について考えるための手法として確立したいと考えています。
【研究体制と支援】
制作体制
・企画、システム仕様策定、オントロジー構築
総合地球環境学研究所 研究基盤国際センター 情報基盤部門
・共同企画、デザインディレクション、グラフィック制作
といのきデザイン事務所
・システム実装
株式会社CIJ
・技術協力
大阪電気通信大学 情報通信工学部 情報工学科 古崎晃司教授
なお、本サイトは、科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(基盤研究(B))「領域横断型知識統合と領域深造型意味処理を融合するオントロジー利用フレームワーク」(17H01789)で共同開発したオントロジーおよび関連技術を用いています。
【取材申し込み及び問合せ先】
総合地球環境学研究所(地球研)
広報室 岡田、中大路
Email:
Tel: 075-707-2450/070-2179-2130