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フューチャー・デザイン・ワークショップ5「持続可能な窒素利用に向けた統合研究のはじまりに当たり」

日時
2022年4月20日(水)15:30 - 17:30
場所
総合地球環境学研究所 セミナー室1・2+オンライン
※ID・パスコードは担当者にお問い合わせください。
主催
実践プログラム3
報告者
林健太郎先生(林PR責任者
タイトル
持続可能な窒素利用に向けた統合研究のはじまりに当たり
概要

大気を満たす窒素分子(N2)から固定される反応性窒素は,食料生産の肥料や工業生産の原料として人類に大きな便益をもたらしてきた.近年では,燃焼時に二酸化炭素が発生しない点で,エネルギー生産の燃料の側面も注目されている.現在の人類は,必要なエネルギーと資源を投入すれば,望むだけの量の反応性窒素を手に入れることができる.

一方,人類が利用する反応性窒素の多くが,反応性を有したまま環境へと排出されている.特に食料システムの窒素利用効率(NUE)が低いことが大きな原因である.食料生産のNUEが低いことのみならず,食品ロスやNUEが相対的に低い畜産物を好むといった食料消費面の課題もある.化石燃料などの燃焼もまた反応性窒素の排出源となる.近年着目されつつあるアンモニアの燃料利用もまた大気への反応性窒素の排出を増やしうる.反応性窒素の化学種は多様であり,それぞれの物性に応じて地球温暖化,成層圏オゾン破壊,大気汚染,水質汚染,富栄養化,酸性化といった多様な影響(窒素汚染)を引き起こし,人の健康および生態系の健全性(多様性や機能)に脅威をもたらしている.UNEPは,窒素汚染に起因する世界全体の年間の被害額を約37~370兆円と試算している.肥料・原料・燃料としての窒素の便益と窒素汚染の脅威のトレードオフを「窒素問題」と称する.窒素問題の解決に向けた国際的な取り組みはこの5年ほどで進んできた.ただし,着実ながら歩みはゆっくりとしている.日本国内においては窒素問題に対する認識そのものがいまだ浸透していない.

地球研実践プロジェクト「人・社会・自然をつないでめぐる窒素の持続可能な利用に向けて」(Sustai-N-able)は,窒素問題の解決を目標として,窒素利用がもたらす便益を保ちつつ,窒素汚染による脅威を低減し,将来世代の窒素問題の解決と豊かで平等な食および人と自然の健康を実現するための学際・超学際統合知の形成および政策提言を目指す.本年度よりプレリサーチとして取り組みを始められることとなった.

本セミナーでは,窒素問題の背景情報およびSustai-N-ableの研究計画を説明するとともに,国内外の関連研究・活動の状況を紹介し,既往地球研プロジェクトとの関係性や連携可能性への期待を述べる.参加者との自由な意見交換を楽しみにしている.

お問い合わせ
実践プログラム3 上田 E-mail

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