- その他
キヤノングローバル戦略研究所・フューチャー・デザイン・ワークショップ70
「共通善を巡る公共的討議に向けた討議の質指標の改善と展開:除去土壌福島県外最終処分問題を題材とした社会科学実験」
- 日時
- 2024年12月3日(火)15:00 - 16:30
- 場所
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オンライン
※参加希望の方は担当者にお問い合わせください。 - 開催
- 中川戦略プロジェクト
- 報告者
- 大沼進先生(北海道大学 文学研究院行動科学分野教授/社会科学実験研究センター長/研究戦略室総長補佐)
- 概要
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異質な意見にも耳を傾け、よいと思ったら意見を変えよというのが討議倫理の理念だが現実は必ずしもその通りにならない。異なる価値や利害の両立が困難な問題ではなおのこと難しい。このような難問に向き合い、どのようにすれば建設的な議論ができるかについて、実験による検証の積み重ねが重要である。よい討議とは何かという問いに向き合いながら、その討議の質を測定する指標(モノサシ)も必要である。
発表者らは、社会全体の望ましさを巡る価値の中でも功利主義と分配的公正の両立困難な事例として除去土壌福島県外最終処分問題に取り組んできた。この問題は最不利者の最大改善というマキシミン原理が優先されるべき問題と捉えることができる。この問題について、実験室での集団討議実験と、実際の一般市民が参加するワークショップを用いて討議のあり方を検討してきた。この際、討議の質指標(Discourse Quality Index: DQI)を改良し、その中でも共通善(社会全体の望ましさ)に着目し、当該問題にカスタマイズして評価できるものを開発してきた。
一連の集団討議実験により、議論参加者は最不利者情報が与えられなければ社会全体のリスク・ベネフィットといった功利主義を重視しがちだが、然るべき情報提供や議論フレームを提供されれば、福島の人びとを慮った決定ができることを示してきた。また、一般市民を募集したワークショップでも参加者は概ねバランスよく議論できたが、東京と大阪で若干の相違も見られた。除去土壌問題以外への展開は今後の課題だが、政策決定・遂行を巡る公共的討議のプロセスデザインに一石を投じたい。
キーワード:討議の質指標(Discourse Quality Index: DQI), 共通善, 集団討議実験, 市民参加、社会実験
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- 中川戦略プロジェクト
上田
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