- その他
キヤノングローバル戦略研究所・フューチャー・デザイン・ワークショップ58
「カーボンニュートラル社会実現に向けた地域連携フューチャーデザインの取組み」
- 日時
- 2024年6月10日(月)15:00 - 16:30
- 場所
- オンライン
※参加希望の方は担当者にお問い合わせください。 - 開催
- 中川戦略プロジェクト
- 報告者
- 辻佳子先生(東京大学 環境安全研究センター長・教授、化学工学会地域連携カーボンニュートラル推進委員会 委員長)
- 概要
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温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指して、世界中で、技術、政策、地域連携など多角的な取り組みが加速されている。しかし、既存の技術と新規技術を組み合わせて未来社会をフォアキャストすることで、2050年カーボンニュートラル、その先のカーボンネガティブは果たして達成できるのであろうか。カーボンニュートラルは産業や社会の構造を変えるような大きな話である。そのため、産業、社会をシステムとしてとらえ、システム全体での物質とエネルギーのバランスを考慮した上であるべき姿を描き、その実現のために必要な新技術を開発し、社会実装することが重要である。たとえば、化学製品においては、エネルギー供給、原料調達、製造、利用、廃棄、リサイクルの中での二酸化炭素排出量を最小とすべく、システムの最適化と新規プロセスの開発を行う必要がある。その際に、様々なカーボンニュートラル施策におけるベネフィットとリスクのバランス、安全、法律・制度、経済、雇用、社会受容性までを総合的に考え、未来社会における多面的な価値基準を考慮する必要がある。さらに、化学産業のみならず地域内の異分野産業とのプロセス融合、加えて地域コミュニティ(市民生活)との融合から新しいシナリオを構築することが可能になる。
国内外を問わず、産業構造や社会構造は、地域によって異なり、また、時代と共に変化する。従って、カーボンニュートラル達成のためには、地域や時系列を考慮したシナリオ構築が重要となる。我々は、地域産業および地域コミュニティとの連携強化により具体的なケーススタディを動かし始めており、その一つとして周南コンビナートを含む周南地域のカーボンニュートラルプロジェクトが挙げられる。 カーボンニュートラルを達成するためのシナリオにおいて、エネルギーについては再生可能エネルギーの最大活用と同時に化石燃料からの脱却を進めることが必須である。その結果、化石資源の採掘が無くなることになり、我々の個人生活だけでなく社会生活の基盤となっている化学品の化石資源由来の原料(ナフサ)供給が急速に減少することを意味する。すなわち、ナフサに変わるカーボンニュートラルな炭素源・水素源が必要となる。炭素源候補としては、セメント製造などから排出される物質としての二酸化炭素、使用済み樹脂製品や食品等の廃棄物、木質バイオマスの3種類となる。森林国日本では、木質バイオマスとして1億トン-C/年のストックフローが可能であり、この国内資源を利活用できれば、カーボンニュートラル達成という課題克服は、同時に、炭素源を輸入に頼らない自律した産業へと生まれ変わる好機となる。 地域産業・地域コミュニティ連携によるカーボンニュートラル社会の全体像を把握して、解決の鍵を見いだすチャンスである。
- 言語
- 日本語
- お問い合わせ
- 中川戦略プロジェクト
上田
ueda[at]chikyu.ac.jp *[at]を@に変更して下さい。