Walesは2015年にWell-being of Future Generation’s Act 2015を制定し、SDGsを同国の事情を踏まえて再構築した７つのNational Well-being Goalsの達成を、同国の公的機関に法的に義務付けた。同時に、将来世代の利益への配慮を確保する制度として、Future Commissionerという一人制の機関を設けた。Office of Future Generations Commissioner for Walesは、Commissionerの多様な活動の根拠となる調査研究等を行う機関で、職員は日常的に将来世代への配慮を現世代において確保するための仕組みや取り組みに関する専門家である。しかし、Future Designは未だ枠組みとして業務で取り入れられたことはない。なおOfficeは多様な課題における将来世代への配慮に取り組んでおり、気候変動影響への対応はその一分野とされている。

報告者は、総合地球環境学研究所・京都気候変動適応センターにおいてR5年3月よりほぼ1年間にわたり、京都の農業分野における根本的包括的な気候変動適応策の検討において、適応センターのメンバー等と共にFuture Designワークショップ等を行った。そして、この経験に基づき、同OfficeにFuture Designについて実際に一部の職員に体験してもらい、業務への導入を検討してもらう目的で、体験版のFuture Designワークショップを構想し、2024年３月末に上長と共にOfficeを訪問して、実践した。参加者は、Well-being of Future Generation’s Act 2015の起草に深く関与した他、Walesにて複数の大臣を歴任したJane Davidson氏他、5名のOfficeメンバーおよび関係者である。本報告ではこの実践に至った経緯、準備、実践及びその結果について報告する。これらを踏まえ、本実践から得られる示唆や今後に向けた課題について、参加者の皆様と議論をさせていただきたい。