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フューチャー・デザイン・ワークショップ43
「カントはどのように人類の将来を展望したのか」
日時 | 2023年11月22日(水)15:00 - 16:30 |
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場所 | オンライン ※参加希望の方は担当者にお問い合わせください。 |
開催 | 中川戦略プロジェクト |
報告者 | 佐藤慶太先生(香川大学・教授) |
概要 | 近代哲学の骨格を築いた18世紀ドイツの哲学者、イマヌエル・カント(1724-1804)。認識論、倫理学、美学における業績が有名ですが、『永遠平和のために』、『世界市民的見地における普遍史の理念』などの小論では、独創的な方法で、あるべき人類の将来像を提示しています。本発表では、カントがどのように人類の将来を展望したのかを、彼の倫理学(現代倫理学では「義務論」という立場の代表とされています。)も視野に入れて説明します。さらに、これをフューチャー・デザインの考え方と対照することを通じて、私たちがより深く将来について考えるきっかけをつかむことを目指します。 カント哲学とフューチャー・デザインとで共通しているのは、〈現在の自分の利益を度外視した、もう一つの視点を設定する〉という点です。しかし、アプローチの違いもあります。カントは、将来を展望する際に、徹底して「理性」に依拠します。そして理性に由来する道徳的義務をベースに「世界市民(Weltbürger)」としての「私」の視点を設定し、この「私」にとって望ましい社会を理想する、という手順を踏みます。「理性」によって思考の射程を一気に全体へと拡張してから、将来について考えるというアプローチです。 一方、(私が見た限りにおいてですが、)フューチャー・デザインは、将来世代の視点を仮想的に設定し、将来世代との「共感」を通して、時空的に広がっている「将来可能性」(「現代世代が自分の利益を差し引いても、将来世代の利益を優先する可能性」)を活性化させることを目指しています。まず仮想された将来世代との「共感」を呼び起こし、それを空間的にも広げていくアプローチと言えるのではないでしょうか。 両者の対照から「どうすれば、またどのくらい現在の自分の利益を度外視することができるのか」、「あるべき将来を考えるにあたって、理性に依拠すること、感情に依拠すること、それぞれにどのような特長・課題があるか」という問いが浮かんできます。これらの問題について、参加者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。 参考文献: カント『実践理性批判』(邦訳:『カント全集 7』 岩波書店、2000年、所収) カント『世界市民的見地における普遍史の理念』(邦訳:『カント全集 14』岩波書店、2000年、所収) カント『永遠平和のために』(邦訳:『カント全集 14』 岩波書店、2000年、所収) 西條辰義・宮田晃碩・松葉類〔編〕『フューチャー・デザインと哲学』勁草書房、2021年 |
お問い合わせ | 中川戦略プロジェクト 上田 ueda[at]chikyu.ac.jp *[at]を@に変更して下さい。 |