谷口 真人

山極 壽一Juichi Yamagiwa

総合地球環境学研究所 所長

経歴

1952年東京都生まれ。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。ルワンダ共和国カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンター研究員、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授、同研究科長・理学部長を経て、2020年まで第26代京都大学総長。人類進化論専攻。屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地で野生ゴリラの社会生態学的研究に従事。 日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長、日本学術会議会長、総合科学技術・イノベーション会議議員を歴任。
現在、総合地球環境学研究所 所長、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)シニアアドバイザーを務める。南方熊楠賞、アカデミア賞受賞。著書に『人生で大事なことはみんなゴリラから教わった』(2020年、家の光協会)、『スマホを捨てたい子どもたち―野生に学ぶ「未知の時代」の生き方』(2020年、ポプラ新書)、『京大というジャングルでゴリラ学者が考えたこと』(2021年、朝日新書)、『猿声人語』(2022年、青土社)、『動物たちは何をしゃべっているのか?』(2023年共著、集英社)、『共感革命-社交する人類の進化と未来』(2023年、河出新書)など多数。

Q&A

地球研ではどんな研究をしていますか?
霊長類学の経験を基に、人間の社会や文化がどの様に作られたかを進化史を遡って探求し、現在、そして未来の人間の社会や文化のあるべき姿を模索している。言葉を持たない動物には社会も文化もないという西洋の言説に対して、動物にも社会や文化と呼べるものがあり、それが人間の進化史において大きく発達したとするのが日本霊長類学の考えであった。そこでは客観的に環境を見るのではなく、人間を他の動物と同じように環境と不即不離のものと見なす。西洋近代の二元論と排中律に基づく科学技術に大きく依存した世界が崩壊しつつある現代、容中律に基づく東洋の思想と脱人間中心主義の霊長類学を応用して、新たな環境倫理を構築しなければならないと思う。そのための多用で膨大な知の蓄積が地球研にはあり、これまでの20年間のプロジェクトの成果を参照しながら、現在進行中の実践プログラムとも協働しながら地球環境の大規模変動に耐えられるような新たな文化・文明論を検討している。
地球研で研究したい人に向けてのメッセージは?
地球研は現代の私たちが抱えている環境問題を、地域レベルから地球レベルに縮尺を自在に動かしながらその解決策を考えていく協創の場である。個々の研究者はそれぞれの分野で個別のテーマやこだわりを持っているが、プロジェクトは人文学・社会科学・自然科学の分野をまたぐ学際的な企画であるし、さらに環境問題に直接関わる市民、NGO、自治体、国などといっしょに解決策を探る超学際研究を目指している。そのため、研究者は分野の枠を超えて協議し、問題が発生する現場へ足を運んで関係者とともにフィールドワークを実施してほしいと思う。とくに環境問題には研究者の気がつかない対立やトラブルが潜んでいることが多く、解決にはデータ分析の結果だけでは見通せない要素があることを忘れてはいけない。現場でのより多くの人々との対話を通じて理解を深めてほしいと思う。