実践FS

地球人間システムの共創プログラム

アートプロジェクトにおける逸脱の創造プロセスを活用したエリアケイパビリティ向上の実証的研究

プロジェクト概要

持続的社会の構築にむけて現代社会の大規模な転換(トランスフォーメーション)が求められている現代において、新たな社会および価値を創造するために、様々な社会課題の解決に向けてのアートの力の活用は極めて重要な活動です。アートプロジェクトの創造プロセスとエリアケイパビリティの生成プロセスを融合することによって、新たな価値生成における「逸脱の創造プロセス」を導きます。

なぜこの研究をするのか

「私たち⼈間の創造⼒は、この地球にいかに機能しているのか?」 神の概念を宗教画にすることや反戦の意を壁画にしたり、何でもない⽇の出の印象を⾵景画にしたりと、芸術の歴史は、⼈類の歩みや時代の思想 を可視化し伝えてきました。また、⽂化・芸術に現れる⼈間の意識や⾏動は、時には世界的なムーブメントを起こし⼤衆の⼼を拓き共感を⽣み出します。⼀⽅このアート活動は、作品としてのモノの価値だけではなく、作品を⽣み出す⼒(=ゼロから出来事をつくり出す創造⼒)によって⽀えられています。この力は、全てのジャンルのいかなる社会課題にも接続が可能であり、堅く閉じた⼼を拓かせ近未来を創造する⼒を与えることができます。私⾒ですが、アートという⾔葉を使わないでその存在を表現するならば、「純粋×切実×逸脱」の状態を示します。その状態とは、作者の純粋で切実な精神や表現が今までにない逸脱した新たな価値を創造している過程です。アートとは、私たち⼈間の創造⼒を開花させて逸脱する出来事を⽣み出すエネルギーを持っています。

本研究では、逸脱する創造プロセスを内在する出来事を「アートプロジェクト」として、モノとしてのアート作品とは区別して捉え、「アートプロジェクトにおける逸脱の創造プロセスを活⽤したエリアケイパビリティ向上の実証的研究」を行います。 地域因⼦の成⻑プロセスを⼈間の創造⼒を原動⼒として発動させ、新たな価値や社会システムを創造するエリアケイパビリティの向上プロセスとシンクロするように持続性をもたせつつ、 環境意識を向上させるのです。⼈間の創造⼒をモノとしてのアートという狭義な価値観だけで閉じさせること無く、その未知なる可能性を地球環境規模で⽴証することが本研究の重要なポイントです。

写真1:天馬船プロジェクト2023/神田川でのタイムレース風景 ホームページ https://tenmasen.net
神田川の聖橋から万世橋まで、間伐材で制作したミニ天馬船一万艘を水の流れだけでタイムレースをする。一艘1000円のドネーションでレースに参加することが出来る。集まった資金でプロジェクトが運営され河川環境への意識向上を目的として実施した。 写真提供:(社)東京ビエンナーレ 撮影:TADA

研究の進捗状況

これからやりたいこと

「逸脱の創造プロセス」を研究することは、身近な地域因子にアートプロジェクトの創造プロセスを与え、人間の認識変容と行動変容を誘因し、その創造的活動の連続性が地域コミュニティの社会変容を促すこと、つまり人間の創造力と地球環境の相関関係と因果関係を解明することとも言えます。「逸脱の創造プロセス」を解明し、地球環境を負の連鎖から逸脱させ本来の生態系を取り戻すこと。そのための思想や環境政策として超学際領域の多様なステークホルダーと協働し、「逸脱の創造プロセス」を解像度の高い研究として発展させていきたいと考えます。

図1:添付、研究概念図を参照 本研究の全体概要図。地域因子を文化芸術資源へと逸脱する創造プロセスとエリアケイパビリティの向上プロセスをシンクロさせ意識変容→行動変容→社会変容を生み出す。新たな価値観を導くアートプロジェクトを創造し地球環境のサスティナビリティを高める。

メンバー

FS責任者

中村 政人

東京藝術大学絵画科教授

主なメンバー

石川智士 京都府立大学 文学部
藤 浩志 秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻
西原 珉 東京藝術大先端表現科
西尾 美也 東京藝術大学先端表現科
栗原 良彰 東京藝術大学社会連携センター
井上 成 三菱地所株式会社
並河 進 株式会社電通

研究スケジュール

2024年度
(令和6)
FS

研究の流れについて

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