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高負荷環境汚染問題に対処する持続可能な地域イノベーションの共創
プロジェクト概要
小規模な金採掘(ASGM)による水銀汚染に対して、TBO(住民の求心力を高める地域的アイコン)を活用したTDCOP(トランスディシプリナリー実践共同体)による学びあいと実践で、住民の価値観を変容させ、最終的に持続可能な地域イノベーションをもたらします。さらに水銀ゼロ社会ネットワークがASEAN諸国のボトムアップとトップダウンを連携させ、問題解決への道筋を明らかにします。
環境汚染は人間の社会活動がもたらす深刻な環境問題です。特に、開発途上国では環境保全よりも経済発展が優先されるため、その解決への道筋が見いだされていません。私たちは、貧困と環境の問題を同時に解決し、持続可能な社会をつくる道筋を明らかにしたいと考えて研究を行っています。
研究対象としているのは、ASEANにおける零細小規模金採掘(ASGM)による水銀汚染です。ASGMでは⼿掘りした金鉱石に水銀を混ぜ、水銀アマルガムとして金を抽出した後、加熱して水銀を蒸発させて金を得ています。この時、水銀を含む残土が土壌・河川等に投棄されたり、大量の水銀蒸気が大気中に放出されたりして、全地球的な土壌や河川・海洋の水銀汚染につながっています(図 1 )。

この問題の解決を目指し、本プロジェクトは、研究者が地域住民、民間企業関係者、NGO職員、地方政府職員などと協働し、3 つのレベルでの研究を進めています。1 つめは、インドネシアのASGM地域において、多様なステークホルダーと科学者が実践共同体内で学びあい・実践することで、価値観を変化させ、問題を実践的に解決する⼿法を設計し、活動・協働するものです。2 つめは、それぞれASGM地域とそれ以外の地域の地域間ネットワークを構築し、市民協働によって水銀汚染問題を国全体の問題と捉え、水銀ゼロを目指す活動を行うものです。3 つめは、ASEANで、市民協働によるガバナンス強化を進め、水銀汚染問題に対処するための協働ネットワークの設立を目指しています(図 2 )。

これらの研究では、特に、問題解決につながる技術や活動、地域アイコンなどのTBO(トランスフォーマティブ・バウンダリー・オブジェクト;住民に対する求心力の高い地域的アイコン)を活用することで、ステークホルダーに強い関心をもたせ、実践共同体に参加するよう促したいと考えています。さらに、ASEANの国々の人々を繋ぐ水銀ゼロ社会ネットワークを創設・活動することによって、ASGM地域の文化・社会・経済的背景を踏まえた、現実的な問題解決への道筋を示すとともに、ASEAN全体で水銀汚染問題に取り組む機運を高めることを目指します。
研究の進捗状況
これまでにわかったこと
インドネシアにおける事例研究において、ASGMによる水銀汚染に対して、TBOを活用することによって住民とTDCOPを形成し、話しあい、学習・実践しています。そのプロセスにおいて、住民の環境に対する意識や未来に対する希望に変化が出てきています。この住民の価値観の変化が持続可能な地域イノベーションをもたらすと考えています。さらに、水銀ゼロ社会ネットワークによって、ボトムアップとトップダウンを連携させ、ASGMによる水銀問題解決への道筋解明をより一層進めることが可能です。
特筆すべき事項
事例研究では、COVID-19の影響によって日本側メンバーが渡航できないという状況下においても、各TDCOPは 2 -3 回/ 月の綿密なwebミーティングを継続的に実施し、現地研究者が実践研究を行った結果、各TDCOPは活発な活動を展開できました(図 3 )。特に、天然繊維や伝統刺繍の研究に関わっている住民・研究者メンバーは、ASGM地域の鉱山労働者家族を含むコミュニティの代替生業として、天然繊維製品や伝統刺繍作りを持続可能な産業に発展させるため、インドネシアのTDCOPによる活動から日本とインドネシアの国際マルチセクター協働へと発展させつつあります。また、水銀ゼロを目指す地域間ネットワーク研究では、インドネシアの医療従事者・研究者を対象に3回の医学ワークショップの開催し(図3)、さらに水銀による環境汚染を題材にした日本語・英語・インドネシア語版のコミック作成を開始しました(2023年8月出版)(図4)。また、国内外メンバーの共同研究論文は、国際学術雑誌に10編掲載されました。


活動ニュース
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メンバー
プロジェクトリーダー
榊原 正幸
総合地球環境学研究所教授/愛媛大学社会共創学部教授
研究員
Win Thiri Kyaw 研究員
Ami Aminah Meutia 研究員
Dianto Bachriadi 研究員
君嶋 里美 研究員
Metaragakusuma Andi Patiware 研究員
主なメンバー
草郷 孝好 関西大学社会学部
松田 裕之 横浜国立大学環境情報研究院
笠松 宏樹 愛媛大学社会共創学部
島上 宗子 愛媛大学国際連携推進機構
松本 雄一 関西学院大学商学部
小松 悟 長崎大学多文化社会学部
Mohamad Jahja 国立ゴロンタロ州大学理学部、国際交流室(インドネシア)
Mirzam Abdurrachman バンドン工科大学地球科学部(インドネシア)
A. Idham Kurniawan バンドン工科大学地球科学部(インドネシア)
Bustanul Arifin ランプン大学農業学部(インドネシア)
Hanung Isomono ランプン大学農業学部(インドネシア)
BASRI トゥリトゥナスナショナル健康工科大(インドネシア)
BOBBY Network Activities Groups(ミャンマー)
外部評価委員による評価(英語)
研究スケジュール
2016年度 (平成28) |
2017年度 (平成29) |
2018年度 (平成30) |
2019年度 (令和1) |
2020年度 (令和2) |
2021年度 (令和3) |
2022年度 (令和4) |
2023年度 (令和5) |
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