2021年度終了プロジェクト

サニテーションプロジェクト

プロジェクト概要

何がどこまでわかったか

人間のし尿を無害なものにするサニテーションの仕組みの構築と持続可能性の確立は世界の課題です。プロジェクトでは、サニテーションの仕組みが脆弱な低-中所得国さらに人口減少・高齢化でインフラ維持管理に課題を抱える日本を含めた世界の5つの地域社会においてステークホルダーとサニテーションの共創を模索しました。各フィールドで目指した共創は、1)トイレの意義、普及(カメルーン)、2)NGOとの協働によるし尿の農業利用(ブルキナファソ)、3)意識・行動変容を促す子どもクラブの参加型アクション・リサーチ(ザンビア)、4)既存の仕組みを利用した価値連鎖モデル(インドネシア)、5)自律分散型の仕組みの構築(日本)にまとめられます。
研究をスムーズに進めていくために、可視化とメタ研究を取り入れた学際・超学際研究の方法論を開発しました。フィールドにおける取り組み図、アクション・リサーチで行ったフォトボイスやデジタル紙芝居など、可視化は自己や他者の考えを説明したり、理解したり、深く分析するのに有効なツールとなります。メタ研究とは、研究者同士の対話やステークホルダーとの活動を振り返ること、すなわち「研究の研究」です。可視化-フィールド実践-メタ研究による振り返りを次の活動にフィードバックしていくというサイクルを繰り返すことで、異分野研究者間の相互理解やフィールドでの共創が促進されました。
また、サニテーションの価値や意味をゼロから問い直し、3つの要素「健康・幸福」「物質・経済」「社会・文化」に整理しました。そして、要素間の連関が重要であるという考えに基づく、サニテーションを包括的に捉える新しい理論「サニテーション・トライアングル・モデル」を提示しました。

私たちの考える地球環境学

サニテーションは、文化、経済、技術、健康など多くの領域にまたがっています。SDGsの「誰も取り残さない(No one left behind)」を達成するためには、一律に標準となったものを世界中にあまねく行き渡らせるのではなく、むしろ、それぞれのコミュニティ、地域社会の文脈に沿った「仕組み」「システム」を、現地のステークホルダーと共創していくことが重要です。「Standard(標準)」ではなく「Tailored(特有)」のサニテーションを作り上げていくことが、人々の健康や幸福だけでなく、結果として環境負荷低減や生態系管理といった地球環境問題の解決につながります。

新たなつながり

プロジェクトで構築した理論と実践をまとめた英語書籍「The Sanitation Triangle」をSpringerより刊行しました。また世界で初となるサニテーションに関する体系的なシリーズ「講座 サニテーション学」を北海道大学出版会から順次刊行していきます。さらに、メンバーを母体として国際学会を設立し、国内外のサニテーション研究者間の緩やかなつながりを維持するとともに、プロジェクトで創刊した国際雑誌も誌名を新たにして(Sanitation)継続発行します。

サニテーションを包括的に捉える新理論「サニテーション・トライアングル・モデル」を出版

子ども自らが撮影したサニテーション課題を発表

プロジェクトリーダー

山内 太郎

外部評価委員による評価(英語)

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