研究プロジェクト概要
ホーム
last update: 2007.03.12
1.研究目的
日本列島で人間の存在が確認されている最終氷期以降において、人間活動の影響で自然がいかに変遷してきたか、その過程で生物相の変化はどうであったのか、また、自然や個々の生物に関する人間の認識・知識・技術はいかなるものであったかを歴史的過程として復元し、今後の人間−自然相互関係がいかにあるべきかを考える礎を提示するとともに、とくに近い将来での生物の絶滅をどのように予防するかについて具体的な方策を示すことを目的とする。
2.研究方法
・ 7つの調査地域:サハリン、北海道、東北、中部、近畿、九州、奄美・沖縄
・ 花粉を含む生物遺体、考古遺物、古文書、民俗資料などの証拠によって,人間−自然相互関係の歴史的変遷を明らかにする
・ 人間の生業に大きく関わる生物の個体群の消長との関係を明らかにする
・ 8つの時期:I.縄文時代初期,II.縄文時代後半,III.弥生・古墳時代,IV.奈良時代,V.平安末〜鎌倉時代,VI.戦国〜江戸前期,VII.国民国家の創出期・明治時代,VIII.高度経済成長期
・ 歴史復元の方法:1)古地理・古植生・生物の移動の解析、2)人間生態学的分析、3)人間−自然相互関係の復元、4)人間−自然相互関係を支える社会システムの解析
・ 手法別ワーキンググループと地域別ワーキンググループを構成する
3.研究計画
@プレリサーチ(平成17年度)
古気候と古地理の情報収集、動植物遺体の分析、古人骨のサンプル収集。
A本研究
平成18年度:各時代の人間−自然相互関係の復元と人間−自然相互関係を支える社会システムの解析、各地域、各時代の人口密度の推定と古人骨の安定同位体比による食性分析。
平成19年度:自然変遷に関わる人間活動史の基本的な把握の完成、各地域・時代の人間−自然相互関係の復元と人間−自然相互関係を支える社会システムの解析、人口密度の推定と食性分析、指標生物の分布と集団遺伝的な解析。
平成20年度:他地域の各時代の人間-自然相互関係の復元と人間−自然相互関係を支える社会システムの解析、人口密度の推定と食性分析、指標生物の分布と集団遺伝的な解析。
平成21年度:各地域、各時代の人間−自然相互関係の復元と人間−自然相互関係を支える社会システムの解析、人口密度の推定と食性分析の完成、指標生物の分布と集団遺伝的な解析の完成。
平成22年度:本研究の成果をまとめて、人間の生存に必要な人間−自然相互関係とはなにか、それを保全しつつ利用する具体的な指針の立案。
4.期待される成果
@日本列島に関する新しい歴史像の提示:日本列島における人間−自然相互関係を、これまでにない視点で復元して、日本の歴史についての新しい像を示す。
A環境との相互作用の観点からの歴史再構築の方法論の確立:人間文化と環境問題の具体的な発生メカニズムについて、通時的・空間的に広い視点から明らかにし、世界の他地域で適用可能な研究法を確立する。
B将来の環境危機の回避に関する指針の提示:生業・経済システムの変化によって起こってきた自然環境への人間活動のインパクトを長期的に理解することでs、生物多様性の喪失をはじめとする将来の環境危機を予測し、対処するための基本方針を示す。