研究の概要

研究の目的

長期間、高解像度の日降水・日平均気温データ

多くの人が住み、激しい気候変化に直面しているユーラシア大陸の過去の気候を知り、将来へ備えるために必要な基本的なデータのひとつとして、長期間・高解像度の日降水・日平均気温データセットがあります。

「アジアの水資源への温暖化評価のための日降水グリッドデータの作成(APHRODITE)プロジェクトでは、長期間にわたる観測データを収集し、解析に便利な0.25度/0.5度格子の50年間の日降水・日平均気温データセットを作成しています。

国際協力による独自収集データと品質管理アルゴリズムによる高品質データ

アジアの現地気象・水文観測機関および研究者との国際協力により、雨量計観測データを入手し、長期間にわたる日降水・日平均気温グリッドデータを作成しています。独自の品質管理アルゴリズムによって、アジア域ではこれまでにない、時間空間高解像度データセットが開発されました。

  • APHRODITEプロダクトを用いて、降水・気温の気候平均値の再評価と再計算を実施します。平均場の品質向上により、気候、水文、農業等のモデル計算や、気候変化の解析に貢献します。時間空間ともに高解像度のデータセットを提供し、気候モデルの再現性の評価や極端現象など特徴的な気象解析の研究を推進します。
  • 雨量計データをリモートセンシングデータや地理情報と組み合わせ、地形性降雨の再現性を向上させます。気候モデル研究者やデータ利用者からの研究成果のフィードバックを受けて、環境研究により役立つデータセット作成を目指してアルゴリズムを改良します。

主な研究成果

このウェブサイトでは、アジアにおける0.25度/0.5度間隔、1951年~2007年にわたる日降水グリッドデータ(APHRO_MA/ME/RU_V1101R1)および1961年~2007年にわたる日平均気温グリッドデータ(AphroTemp_V1204R1)を作成、公開しています。これらのデータセットは、アジアで唯一の雨量計観測データに基づいた大陸スケールの日降水・平均気温グリッドデータです。

0.05度間隔、1900年~2011年にわたる日本の日降水データ(APHRO_JP_V1207)も作成、公開しています。すべてのデータを入力したものと併せて作成した、データ入力地点を一定にしたデータセットは、APHRO_JPは極端現象の長期変化解析研究に適しています。

データを提供してくださった機関等に対しては、その国・地域の0.05度間隔のデータセットを提供したり、技術セミナーを開催したりするなどのフィードバック活動を実施しました。データユーザからのフィードバックは、当サイト経由で受けております。また、2010年5月には日本地球惑星連合大会では国際セッションを開催し多くのAPHRODITEユーザから研究成果を紹介していただきました。

APHRODITEプロダクトの特長

APHRODITE日降水・日平均気温グリッドデータは、アジア域における唯一の大陸規模・長期間(1951年~)・日単位のプロダクトであり、ヒマラヤ、南アジア、東南アジアおよび中東の山岳地域などの雨量計観測データを多く利用して作成しています。本研究で使用した有効な観測地点は、5000から12000地点におよび、多くの先行研究で使用されている全球気象観測システム(GTS)ネットワークの観測地点の2.3倍から4.5倍にあたります。このプロダクトは、気候変化の診断的解析やアジアの水資源評価、統計ダウンスケーリング、予報改善、数値モデルシミュレーションの検証や衛星降水量の評価などに広く活用されることが期待されています。

データセットは無料でダウンロードでき、GrADSやnetCDFで簡単に取り扱うことができます。日降水・日平均気温データセットには、日ごと・グリッドごとの観測地点の分布情報を付加し、各グリッドが実際の観測値を含んでいるのか、内挿によって得られた値なのかを判断することが可能です。APHRODITEデータは、他の降水グリッドデータを評価するベンチマークとして活用することもできます。

プロジェクトの履歴

  • フィージビリティ研究:2005年5月~2006年3月
  • APHRODITE第1期:2006年5月~2009年3月
  • APHRODITE第2期:2009年4月~2011年3月