出張者:長田俊樹・宇野隆夫・上杉彰紀・寺村裕史
出張先:イタリア・ラヴェンナ(ボローニャ大学)
 
第19回ヨーロッパ・南アジア考古学会参加報告
 去る7月2日から7月6日にかけて、イタリア・ラヴェンナに所在するボローニャ大学において、第19回ヨーロッパ・南アジア考古学会が開催された。この学会は1971年以降、2年に1回ヨーロッパのいずれかの国で開催されており、南アジア考古学界最大の国際学界となっている。当初はヨーロッパ人が参加者の大半を占め、インド・パキスタンを含むアジアからの参加者はほとんどいなかったが、最近ではインド・パキスタンの研究者による報告もわずかながらも確実に増加している。
 日本からはインダス・プロジェクト関係で、長田俊樹、宇野隆夫、寺村裕史、上杉彰紀の4名が参加し、また個人参加として田辺勝美、土谷遥子のお二方が参加され研究報告を行なわれた。
 さすがに有数の国際学会とあって、5日間に及んで終日びっしりと研究報告が組まれていた。通常の研究報告は先史考古部会と歴史考古部会に分けられ、さらにテーマ別部会とミニシンポジウムが設けられていた。先史考古部会はインダス文明を中心とし、歴史考古部会は南アジア美術史の研究発表が大半を占めたが、初期歴史時代の遺跡の発掘調査報告やテーマ別部会もあり、南アジア考古学全般にわたって研究が深化している状況を実感することができた。
 また、今回の学界の特色としてイランからの参加者を中心とする部会の開催を挙げることができる。ボローニャ大学のマウリツィオ・トージ教授が1960年代以来イランと関わってきたことがその背景にあるが、インダス文明が展開した前3千年紀のイラン高原を代表するシャフリ・ソフタ遺跡の最新の調査報告が行なわれ、参加者の高い関心を集めていた。
 特にインダス文明関係は通常の研究報告に加えて、ハラッパー遺跡の発掘調査成果に重点を置いた部会やラピスラズリを代表とする稀少資源の流通を扱う部会、さらにインダス文字研究に関する部会が開催された。
 ハラッパー遺跡の部会では最新の調査成果報告に加えて調査に参加している大学院生の研究報告、さらには発掘調査成果のデータベース化など、多岐にわたる報告が行なわれた。
 インダス・プロジェクト関連の発表としては、J.S. Kharakwalがカーンメール遺跡について、V.S. Shindeがファルマーナー遺跡とギラーワル遺跡の調査成果について報告した。また、宇野はウズベキスタン所在のダブシエ遺跡の調査成果について報告を行ない、上杉はペシャーワル大学所蔵のグムラー遺跡出土土器の再整理の成果について発表した。寺村はカーンメール遺跡でのGIS調査についてポスター発表を行なった。
 今回の学会に参加して感じたのは、確実に南アジア考古学の研究者層に厚みが増していることと、その中で博士課程在籍の若手研究者による発表が多く、世代交代が徐々に進んでいることである。また、2005年のロンドンでの学会ほどではなかったが、インド・パキスタンの研究者の参加も一定数あったことも重要である。
 次回の学会は2010年にオーストリアの首都ウィーンで開催されることがアナウンスされた。J.M. Kenoyer、V.S. Shinde、J.S. Kharakwalの各氏とともに、次回はインダス・プロジェクトの成果による特別部会をもつことを約束し、帰途についた。
 
 
■ 出 張 報 告(2007年度)
出張日:2007年7月1日- 7月7日