【論文】

コロナ時代の共同研究とオンラインツール

近藤 康久 准教授

(農村計画学会誌39巻2号 pp.104-107.)

http://id.nii.ac.jp/1422/00003705/

発行日:2020年9月

【論文】

Jishuku, social distancing and care in the time of COVID‐19 in Japan

西 真如 客員准教授

Social Anthropology/Anthropologie Sociale

https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5167

First published: 18 May 2020

DOI: 10.1111/1469-8676.12853

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【安成通信】

「緑の回復」に向けて-「異常な夏」に考える
“Toward a Green Recovery - A thought in the abnormal summer of 2020 ”
(The English version will be issued soon.)

安成哲三、総合地球環境研究所

豪雨災害をもたらした長い梅雨に続く酷暑の夏、そしてゲリラ豪雨。世界各地からは異常高温による森林火災も多数報告されています。日本に豪雨災害をもたらした要因は、非常に強い高気圧に加え、海水温の上昇による水蒸気の増加があります。日本付近も含めた全球的な海面水温の上昇は、CO2などの温室効果ガス増加による「地球温暖化」の海洋に現れた結果とされています。COVID-19のパンデミックからの社会・経済の回復は、より持続可能な新しい社会への転換の可能性を求めていく「緑の回復(Green Recovery*)」をめざすべきです。

豪雨災害、酷暑や森林火災をもたらした今年の夏

九州や西日本に豪雨災害をもたらした長い梅雨が7月末にようやく明けたとたん、8月は記録的な「酷暑」の夏となりました。8月が終わろうとする今も、連日、35℃を超え、時には40℃に迫る「危険な暑さ」の日が日本全体で続いています。東京都内の8月の熱中症による死者は200人を超え、過去最多となっています。世界の多くの地域では異常高温と、それに伴う森林火災が報告されています。一方で、ひとたび積乱雲が発達すると、1時間に100㎜を超える「ゲリラ豪雨」となったことがあちこちで報告されています。

こうした中、全国の多くの児童・生徒たちは、COVID-19のための長い休校のあと、夏休みを早く切り上げて新学期が始まり、酷暑の中、マスクをさせられて通学を強いられ熱中症になる生徒も増えています。このような酷暑の夏は、今年だけではなく、近年特に顕著に増加しています。1946年以降75年間の気象庁の観測データにより西日本の8月の平均気温の高かった年を調べると、今年を最高として、2010年以降の実に7年が、上位10位内に入っています。

酷暑と豪雨の原因は海水温の上昇による水蒸気の増加

なぜこんなにひどい暑さが続いているのでしょうか。直接的な原因は、日本付近を覆う太平洋(小笠原)高気圧が非常に強く、好天が続いているからです。高気圧が強いのは、日本の南、西部熱帯太平洋から東南アジアモンスーン地域の対流活動(積乱雲の活動)が非常に活発で、上昇気流が強く、南北の大気循環を通して高気圧域の下降気流を強めているからです。アジアモンスーン地域の活発な対流活動は、インド洋から西部熱帯太平洋の海面水温が高いことも関係しています。海面水温は今、図1に示すように全球的に上昇しており、この10年でも0.5℃の昇温になっています。

図1:全球平均の年平均海面水温の長期変化傾向(気象庁、2020)

図1:全球平均の年平均海面水温の長期変化傾向(気象庁、2020)

日本近海の昇温はさらに大きく、日本のすぐ南の海面水温は、この夏は、30℃に達しており、まさに熱帯の海洋と同じで、台風の発生・発達が容易な状況です。高い海水温に囲まれた日本列島では大気中の水蒸気量が増加し、7月の長くて活発な梅雨前線による雨をもたらしましたが、8月にはがまんできないような蒸し暑い夏をもたらしました。水蒸気の増加は、地域的な温室効果を強めて地面付近をより暑くする一方で、いったん大気が不安定になれば、過去にはなかったような豪雨を引き起こします。サンマの不漁もこの日本付近での海水温の上昇が大きな原因となっているようです。

海水温上昇は「地球温暖化」のシグナル

日本付近も含めた全球的な海面水温の上昇は、CO2などの温室効果ガス増加による「地球温暖化」の海洋に現れた結果とされています(IPCC、2013)。世界中で起こっている高温や関連した異常気象・現象の頻発は、地球の気候の状態が劇的に変化する転換点(tipping point)にさしかかっていることをさえ、示唆させます。パリ協定では、地球全体で1.5℃以内の温暖化に抑えて転換点の危機を避けようと、2050年までにCO2排出量をゼロにすることを目標にしていますが、これまでの経済成長だけをめざす社会の体制ではとても達成できそうにもない目標ともいえます。

COVID-19をキッカケに「緑の回復(Green Recovery)」をめざすべき

しかし、今回のCOVID-19は思わぬ機会を人類社会に与えてくれました。感染の拡大防止のために、2月以降に人の移動の大幅な抑制により世界規模で交通・運輸・産業はスローダウンしたことにより、今年の1月まで増え続けてきた世界のCO2排出量が、それ以降の3か月間で(2019年平均に比して)約17%も減少したことが明らかになりました(Le Quere et al., 2020)。特に地上交通・運輸と航空機運航の減少による削減は図2に示すように非常に大きく、通勤や国内外の出張などのビジネス活動に用いる交通手段を、自家用車から自転車や公共交通機関に変えたり、富裕層によるプライベートジェット機による移動を止めるだけでも、CO2排出の大幅削減は十分可能であることをこの論文の著者らは指摘しています。

図2:COVID-19に伴う政治的規制や自主規制に伴う、セクターごとの全球的なCO2排出量の変化。

図2:COVID-19に伴う政治的規制や自主規制に伴う、セクターごとの全球的なCO2排出量の変化。
2019年の平均的な排出量に対しての変化で示されている。上段:電力(左)、工業活動(中)、地上交通(右)
下段:公共活動(左)、家庭(中)、航空(右) (Le Quere et al., 2020)

今回のCOVID-19のパンデミックからの社会・経済の回復は、単に元の状態に性急に戻そうとするV字回復ではなく、むしろCOVID-19によって強制的に引き起こされた社会や生活の変化をキッカケとして、より持続可能な新しい社会への転換の可能性を求めていく「緑の回復(Green Recovery*)」をめざすべきなのです。

夕涼みの夏を懐かしみつつ
<夕涼み線香花火の匂ひかな> 正岡子規

地球温暖化を何とかしよう
<水を打つ曲りさうなるこゝろにも> 笙鼓七波
<海洋に打ち水をせん暑き夏> 哲風

参考文献:

  • IPCC, 2013: Climate Change 2013: The Physical Science Basis.
  • Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1535 pp.
  • Le Quere C. et al., Nature Climate Change, 2020: Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 confinement.

Green Recoveryについて:
https://www.climatechangenews.com/2020/04/09/european-green-deal-must-central-resilient-recovery-covid-19/

気象庁HP:
http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/shindan/a_1/glb_warm/glb_warm.html

【活動報告】

COVID-19後の大気質と気候の変化を再考する

ジョゼフ・チン, 梶野瑞王*(*Aakashプロジェクト共同研究者)
気象庁気象研究所

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COVID-19の流行は世界に影を落としており、現在多くの国で死亡者数が増え続けている。COVID-19は公衆衛生史上記録的な被害をもたらしていると同時に、大気質や気候システムにも様々な影響を及ぼしている。ソーシャルディスタンス政策により経済活動の遅滞と交通量の減少がもたらされ、多くの都市において大気質改善が報告されている。一方で、大気質の悪さとCOVID-19による死亡率に正の相関がみられている。それについては、COVID-19を引き起こすSAR-Cov-2ウィルスの拡散をエアロゾルが促進する可能性に関する報告が増えているが、まだその原因は特定できていない。COVID-19流行期間における公共政策によってもたらされる大気質や気候変化の長期的もしくは短期的な変化については、強さやその符号も含めて、現在多くの研究が進行中である。本論文では、COVID-19と大気質や気候変化に関連する最新の研究をレビューしながら、科学的に重要な今後の課題を提起することを目的としている。

Reference:
Ching, J. and M. Kajino, 2020. Rethinking Air Quality and Climate Change after COVID-19, International Journal of Environmental Research and Public Health, 17, 5167, https://doi.org/10.3390/ijerph17145167

図で示す本論文の要旨

図で示す本論文の要旨

 

【論文】

Rethinking Air Quality and Climate Change after COVID-19

Joseph Ching, Mizuo Kajino* (*Aakashプロジェクト共同研究者)

Scientific Reports

https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5167

Published: 17 July 2020

DOI: 10.3390/ijerph17145167

【論文】

PM2.5 diminution and haze events over Delhi during the COVID-19 lockdown period: an interplay between the baseline pollution and meteorology

Surendra K. Dhaka, Chetna, Vinay Kumar, Vivek Panwar, A. P. Dimri, Narendra Singh, Prabir K. Patra, Yutaka Matsumi, Masayuki Takigawa, Tomoki Nakayama, Kazuyo Yamaji, Mizuo Kajino, Prakhar Misra & Sachiko Hayashida

Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-020-70179-8

Published: 10 August 2020

DOI: 10.1038/s41598-020-70179-8

【論文】

Global socio-economic losses and environmental gains from the Coronavirus pandemic

FRY, Jacob研究員、金本圭一朗准教授

PLOS ONE

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235654

Published: July 9, 2020

DOI: 10.1371/journal.pone.0235654

【活動報告】

総感染者数分布と人口密度-普遍的な法則性は存在するか

山中大学上級研究員、甲山治准教授、杉原薫特任教授

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地球システムの一部として生物圏が作られて以来、初期の多細胞化から現在の人類を含む集団生活化に至るまで、ウイルスは生物種を選択して共存し、共に進化してきた。生物圏の多様性(種の数)や個体数は、物理量の変化が大きく純水(河川・降雨)の供給も集中する海岸付近(陸海空3圏の境界)において大きくなる傾向があり、そうした生物圏の偏在が海陸間の温度差など地球表層の変化を緩和する役割を果たしてきた。と同時に、農業、漁業、交通などの人間活動とそれに支えられた人口の分布も、この偏在に影響を受けてきたと言えよう。

近代以前の人類史は感染症の広がりや、大陸単位の免疫力の違いに大きく規定されてきた。ヨーロッパによる「新大陸の発見」も、感染症の蔓延(ウイルスではないが)を大きな要因とする現地人口の急減と文明の衰退を誘発した。近代世界においてもアジア・アフリカ・ラテンアメリカの多くの地域は、植民地化され、第一次産品の輸出基地となって、母国や先進国に生物資源を供給した。また、人種によって国家間の人間の移動が制限され、豊かな資源を享受する国とそうでない国とのあいだに大きな資源利用上のギャップが生じるとともに、人口密度の「調整」も制限を受けた。こうして形成された世界人口の偏在と、グローバル化による人の交流は、一方で世界の所得格差を固定化させると同時に、商品と資本の移動や企業の国際化の加速によって、工業化や都市化を新興国にも波及させ、近年の気候変動など全地球的な環境問題を引きおこしてきた。その構造は、今回の感染の国際的な広がりと深度にも影響を及ぼしている。他方、皮肉なことに、感染防止のためにとしてとられた人間活動自粛は、大気汚染、温暖化など、他の地球環境問題の抑制に貢献している。ウイルス感染症は、地球システム科学あるいは地球環境学の観点でも総合的に研究していくべき問題である。

COVID-19に際し、我々は、総感染者数(罹患者数および既に回復・死亡した者の数)が人口密度にほぼ比例して分布するのではないかという仮説を検証するため、人口密度の逆数の平方根から平均対人距離(mean personal distance = MPD)を算出した。図は、日本47都道府県、インドネシア34州、欧州(WHO区分)54国、米国55州・領土について、この仮説が当てはまることを示している。これらのデータによれば、総感染者数はMPDの-2乗にほぼ比例する。すなわち、人口密度が高いところほど総感染者数が大きく、低いほど小さいという関係が、土地利用の形態や貧富の格差、あるいは分析単位の大きさにあまり影響を受けずに成立することがわかる。例えば、MPDは、地球上の全陸地については (77億/1.5億km2)-1/2≒140mで、インドネシア泥炭地域ではこれとほぼ同程度であるのに対して、東京では12m、ジャカルタでは8mなどとなり、これらの値を超えると感染者が増える可能性が高くなるのである。飛沫感染防止のための所謂social (またはphysical)distanceが1~2だとすると、これらのメガシティのMPDはその数倍ほどしかない。飛沫感染は人間が呼気や発声とともに口や鼻から出す湿った微粒子(感染者のそれには無数のウイルスが含まれる)が、空気中を浮遊して他の人間の皮膚に付着したり吸気で口や鼻から体内に入ったりするものである。大都市は衛生や健康状態などの条件が良くても、MPDが小さいため感染の可能性が高く、まさにマスクなどで特別の対応をとるほかはない。

上記で示唆されるように、COVID-19感染は極めて物理・化学的な現象である。飛沫粒子の気温・湿度・風速依存性などは、地球環境問題に直接関係する、生気象学・環境医学分野の研究課題でもある。浮遊距離は遥かに長いが、泥炭火災からの煙霧粒子、海面からの海塩粒子(鼻に入ると海の香りがする)、工場や車からの排煙粒子(スモッグ)、それらを総称して、一般にエアロゾルと呼ばれる微粒子が雲や雨に成長し気候変動に影響を与える過程とも共通している。この意味では、今回の感染は、本質的に大都市特有の大気汚染問題の一種であり、その中でも最も小規模な空間で起きるものとも言えよう。

さて、感染の拡大に伴い前述の比例定数は日を追って増大するが、収束に伴いある値に漸近する。総感染者数を人口に感染率をかけたものとすると、最終的比例定数から感染率と地域面積の積が1km2前後のオーダーの値になる。これは、面積が1km2程度の地域の全住民が感染して、感染過程が終わることを意味する。この値は、日本(最小)・インドネシアでやや小さく、欧米ではやや大きい。このような面積の大きさの国による違いは、ウイルス亜種や検査数による可能性もあるが、人々の自粛下での日用品の買出し範囲に対応しているとも考えられる。これら同一国内での一般的傾向は、人口分布の不均一(北海道など)や医療崩壊(イタリアやニューヨーク州など)などがあると、当然、崩れてくる。しかし、図に示した結果は、それらの追加的な要因の背景にある、大きな原則の存在を示唆している。

なお、1km2前後のオーダーの面積内でのみ全住民が感染するということは、他の大部分の面積の住民は無感染であることを意味し、COVID-19感染の大きな特徴である極少数の super-spreader だけが感染の殆どに関与するという知見と矛盾しない。来るべき第二波では、感染者数が0でなく既に空間的にある程度広がった状態から出発するが、さらに広い面積に対応したある値に収束して終わることになると予想される。

政府専門家会議などが感染の拡大・収束予測に用いてきたSIRモデルは、前提とする閉じた対象地域の広さを陽に示しておらず、また基礎方程式が非線形であるため総感染数(IとRの和)の収束値(I→0になるのでRの漸近値)を簡単な式で表せない。本研究は多数の地域の感染状況に見られる人口密度あるいはMPDへの依存性という一つの普遍的性質から、最終的全員感染域の具体的な広さを実験的に求めたものであって、その地域内の住民人口がSIRモデルにおける総感染数の収束値となると言える。このような解析を蓄積することで、予測モデルの改善を含む感染症や人間活動の理解の前進に繋がることが期待される。

新型コロナによって、市街地が就労地から居住地まで切れ目なく延々と続き、人々がその中を縦横に往来することによるメガシティの危険性が浮き彫りにされた。本研究の結果を考慮して、市街地を広さ1km2程度、あるいは間隔1km程度で区切り、言わば町と町との social distance を設ければ感染拡大を防止することができるはずである。我が国においても、過度な首都一極集中を止めてインターネットを最大限活用した新時代の地方分権を目指すことも一つの解ではなかろうか。

世界の都市の歴史を見ても、直線的な大都市化が長期にわたって続いた例は稀である。欧米の多くの大都市では、1000万を超えるメガシティになる前に、人口増加の趨勢が止まった。日本においても、江戸後期には、百万都市だった江戸よりも、むしろ各藩の城下町で、多様な産業・人材育成が行われていた。また江戸でも、多発する火災や水害に対応するため、1km程度ごとの道路の拡幅や水路の設定など、前述の感染症拡大防止にも効果的な施策がとられていた。しかし、現在の東京首都圏は2300万人を擁する世界最大の都市圏であるにもかかわらず、皇居など限られた場所を除き殆ど切れ目がない。また、アジア新興国では、メガシティも含め、多くの大都市が続々と現れており、今後も、欧米の歴史的経験を超えるレベルの都市化が展望される。他方、このような傾向に警鐘を鳴らす立場もある。首都を移転したり、都市をネットワーク化したりして、今回のような感染症だけでなく、さまざまな環境リスクを分散しようとする動きである。

上述のように、歴史的に形成された人口密度の世界分布や国際人口移動の制限の度合いが、現在の問題の大きな枠組みを作っているので、環境と人口の関係を自然なものに近づけるのは容易ではない。にもかかわらず、総感染者数と人口密度の相関が、そうした多様な要因にあまり影響を受けずに成立しているという事実は、今回の感染症の感染過程が、至近距離での人間同士の飛沫感染に殆ど限られていることに対応しているものと考えられる。すなわち、本来は気候や文化や歴史が異なる様々な国においても、人口密度が高い都市の生活はかなり画一化してきており、自粛期間中でもスーパー・コンビニ(ドラッグストア)に買い出しに行かざるを得ないというような共通の人間活動が存在し、これが今回のウイルスには感染に極めて好適であったのではないだろうか。本研究は、このような観察の有意性とさらなる研究の必要性を示唆しているように思われる。

【図】 2020年3月18~31日(紫)、4月1~30日(青)、5月1~31日(緑)の毎日における(a)日本47都道府県、 (b)インドネシア34州、(c)米国55州(特別区・海外領土を含む)、(d)欧州54ケ国(WHOの区分によりトルコ・旧ソ連を含む)の地域ごとの新型コロナウイルス感染症「総感染者数」(=罹患者数+回復者数+死亡者数)を、各地域の「平均対人距離MPDの-2乗則でその上下のずれ(人口密度に関する比例係数の大小)は、感染率1(住民全員感染)となる面積の大小に相当する。

Figure.

※この記事はJpGU-AGU Joint Meeting 2020(日本地球惑星連合アメリカ地球物理学連合2020年合同大会)の予稿に基づき若干加筆したものです。

【活動報告】

インドのロックダウンによってもたらされた思いがけない大気質の変化は、これからの人間行動をどう変えるのか?

林田佐智子、プラカル・ミスラ、総合地球環境研究所

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Aakashプロジェクトは2020年4月1日に京都市にある総合地球環境学研究所 (RIHN) にて始まりました (https://www.chikyu.ac.jp/rihn/project/FS-2019-01.html)。このプロジェクトの正式名称は、「大気浄化、公衆衛生および持続可能な農業を目指す学際研究:北インドの藁焼きの事例」です。我々は、ヒンディー語で空を意味するAakashという名前を選びました。なぜなら、この研究はインド北西部に位置するパンジャーブ州およびハリヤーナー州において、10月から11月に行われる稲わら収穫後の大規模な野焼きによって発生する大気汚染に対して取り組むものだからです。この野焼きによって周辺地域、とりわけデリーとその周辺地区から成るデリー首都圏では深刻な大気汚染が引き起こされています。穀物残渣の野焼きが大気質にもたらす悪影響がヒンドゥスターン平野 (IGP) 全域におよんでいると示唆するエビデンスがありますが[1,2]、現在の政策の不備が地域の大気質に与え得る悪影響を示す例であり、これは何億もの人々の健康と幸福に影響を与えます[3]

このプロジェクトが始まる前、インドおよび日本のプロジェクトメンバーやステークホルダーとの相互理解と協力を促進しようと、3月にデリーでの第1回インド-日本プロジェクト会議の開催を予定していました。しかしながら、コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、インドは3月25日にロックダウンとなり、会議を中止せざるを得なくなったのです。その後まもなくして、デリーや汚染で知られる世界の大都市の清浄な空気に関する報道を知りました[4,5,6]。目指していた大気浄化について、プロジェクトが始まる前に知ることとなったのは、非常に驚きであり、むしろ皮肉なことでした。

突如として現れた清浄な空気にインスパイアーされ、大気研究を行っているワーキング・グループ2 (WG2) のメンバーは、デリーにおける大気汚染物質の排出削減を定量化しようと、4月から5月にかけて4回のオンライン会議を行いました。そして、会議を通して、「ミッション・DELHIS(大気汚染物質排出変化の検出:人為的影響に関する研究)」と名付けた新たな活動を始めることに決めたのです。この活動は、一時的に停止されたことによる、人為的な大気汚染物質の排出低減の定量化を目的としています。ロックダウン開始前後の大気汚染物質濃度を比較することで、人為的な排出量を正確に定量することができるかもしれません。さらに、農業以外の人為的排出量を推測することで、大気汚染物質排出全体における野焼きの影響を解明できるかもしれません。コロナウイルスのパンデミックによって、予想していなかった大規模な社会的実験を行う機会が与えられたのです。

宇宙から観測したロックダウン

1990年代以来、新技術の研究開発によって、宇宙から大気汚染物質を測定することが可能となりました。そして、今日では様々な汚染物質の観測にいくつかの衛星搭載センサが使用されています。汚染物質の中で、粒子状物質(エアロゾル)と二酸化窒素 (NO2) が重要です。これらの汚染物質濃度は、産業活動や輸送、そして料理といった日々の活動からの排出の程度によって変化するのです。そのため、汚染物質濃度を観測することで、人々の活動が排出量に与える影響についての理解を深めることができます。今日、衛星観測は地上に何があるかだけではなく、そこで何が起きているかまでも明らかにするのです。

かつて北京は深刻な大気汚染で知られ、そのため2008年のオリンピックでは不参加を表明する選手もいました。中国政府が大気汚染に対して様々な措置を講じた結果、大気質は大幅に改善されました。人工衛星搭載センサであるOMIが、オリンピック開催時の2008年8月の北京上空でNO2が突然減少したことを観測しました[7]。現在、多くの国がコロナウイルスの感染拡大を遅らせるためにロックダウンや自主隔離を行っています。その結果、パリや武漢などの大都市でロックダウン中にNO2濃度が劇的に減少したとの一連の報告がありました[8,9]。

インドの首都デリーは世界で最も深刻な汚染都市と呼ばれています[10]。しかし、突然のロックダウンによって空は青く変わり地元住民を喜ばせました[11]

我々は、欧州宇宙機関の衛星センチネル-5 ・プリカ―サーに搭載されたTROPOMIによって得られたデータを分析し、明らかにNO2 がロックダウン開始後に減少したことを発見しました(図1)。工場や輸送機関などの発生源から排出された汚染物質は風で運ばれるため、その濃度は風の状態に左右されます。そのため大気汚染物質濃度をその発生源と一意的に関連付けることは本質的に困難です。しかし、NO2 は大気寿命が比較的短く、またその排出源近くに留まるため、発生源を特定することは相対的に容易です。それゆえ、図1における2枚のイメージ図に見られる差異は明らかに排出量の減少を示しているのです。

現在、WG2メンバーはNO2 の減少を定量化するため全力を尽くしています。今後の研究では、現地観測や衛星データ、モデルシミュレーションを用いて、大気汚染物質濃度の変化を解明します。

図1:(左)2020年3月2日-6日(ロックダウン前)のNO<sub>2</sub> 濃度、(右)2020年3月30日-4月4日(ロックダウン中)のNO<sub>2</sub> 濃度を示している。NO<sub>2</sub> データはTROPOMIから取得 (ESA: http://www.tropomi.eu)。イメージクレジットはMission DELHIS

図1:(左)2020年3月2日-6日(ロックダウン前)のNO2 濃度、(右)2020年3月30日-4月4日(ロックダウン中)のNO2 濃度を示している。NO2 データはTROPOMIから取得 (ESA: http://www.tropomi.eu)。イメージクレジットはMission DELHIS

思いがけない人間行動変容

元々のプロジェクトの目標は、「パンジャーブ州における持続可能な農業、ならびに大気浄化および健康の改善を目指した人間行動変容の方法の探究」でした。2年前にこの研究計画を申請した際、RIHNの評価委員会は、人間の行動がそんなに容易に変容し得るのかと疑っていました。しかし、コロナウイルスのパンデミックが、極めて短期間のうちに多くの面で人々の行動を変えたのです。健康、特に呼吸器系疾患に関する人々の関心は劇的に高まり、多くの人がマスクの着用を始めました。深刻な大気汚染地域でのCOVID-19による死亡率の高さが報道されたことは、多くのデリー市民にとってショックであったかもしれません[12,13]。

デリーの大気浄化は、一時的なロックダウンとその結果生じた経済活動の停止によって可能となりましたが、ロックダウンが解除され経済活動が再開となった際には、大気汚染はロックダウン前のレベルに戻ると予想されています。しかしながら、人々の行動に現れた変容は、それほど容易には元に戻らないかもしれません。人々は徐々に自身の健康の価値を自覚し始め、大気汚染とその肺機能への影響に気付いたのです。人前でマスクを着用するという習慣がさらに普及するかもしれません。また、市民が清浄な空気と青い空を体験したことは、健全な環境の価値に対する認識を促進したかもしれません。デリー市民は清浄な空気をどれほど享受し、この体験から何を学んだのでしょうか?

現在、デリーと周辺農村地域においてアンケート調査の実施を予定しています。今しか手に入らないデータを手に入れることが重要です。現在の汚染物質濃度に加え、人々が今感じていることを「検出する」ため我々は努力しなくてはなりません。できるうちにできるだけ多くのことを学ばなければなりません。だから我々のモットーは「検出、検出、検出」となりました。

(初版は5月25日Aakash ホームページhttp://aakash.wp.xdomain.jpで発表)

References

 

【安成通信】

京都における新型コロナウイルスの推移-季節の移ろいの中で

安成哲三、総合地球環境研究所

世界と日本のCOVID-19の推移

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のため、在宅勤務やテレワークなどによるstay home状態からほぼふた月になりました。ひとけも少ない地球研の周りも、いつのまにか桜の季節は過ぎ、新緑の中にヤマツツジの花が咲き乱れる季節となりました。

世界のCOVID-19のパンデミックは南米や南アフリカなどに拡大し、5月25日(4月5日)のデータで、感染者数540万強(100万強)、死者は約34万5千人(5万人強)にのぼっています。(カッコ内は、4月5日の安成通信で調べた時の数値です。) この50日間で感染者も死者も5~6倍の増加です。国内では東京など大都会を中心に拡大し、5月25日(4月5日)現在、感染者数が約17000(4000)人、死者は839人(93人)です。感染者数は同じ期間で、4倍程度ですが、死者数は約9倍です。ただ、図1のように、5月の連休に入った頃から、減少傾向が続いているということで、4月7日に政府が出した緊急事態宣言は、本日(とりあえず)解除されました。

京都におけるCOVID-19 の推移

さて、(京都市・京都府を含む)京都の状況ですが、図2に示すように、欧州の卒業旅行から戻った大学生達からのクラスター(感染者集団)が3月29日に確認されて以来、感染者数は急上昇し、市内のひとつの病院で集団感染が発生したことなどもあり、4月3日には、1日に20人近い感染者数に達し、このまま、欧米でみられたようなオーバーシュートと言われる爆発的増加にならないかと心配されました。幸いなことにその後小康状態のまま、4月中頃から減少傾向となり、ゴールデンウィーク(GW)の頃からには数人以下、そして5月15日以降は感染者数ゼロとなっています。

なぜ京都で4月中頃以降、減少に転じたのでしょうか。政府の出した緊急事態宣言は4月7日であり、しかも、京都府はその時点は、この対象都道府県には入っていませんでした。緊急事態宣言の効果がすぐに出てくるものではないはずです。 いくつかの理由が相乗的に効いた可能性があります。まず、学生による集団クラスターの形成は、京都府・京都市に大きな衝撃を与え、知事と市長は4月2日に緊急の合同記者会見を行い、3密による社会的距離を保つことに加え、不要不急の外出、京都への観光、急激に感染が増加している関西圏での(通勤・通学も含む)行き来の自粛を強く訴えました。今年の桜の満開日はちょうど4月初めでしたが、例年なら京都市内、府内の桜の名所は多くの花見客が集まる時期でしたが、この自粛要請はみごとなほど効果が上がったようです。もうひとつ幸いであったことは、この数年来、大量に押し掛ける外国人観光客が、それぞれの国でのCOVID-19問題のため、移動禁止などで、ほとんどいなかったことです。写真1は、4月3日の賀茂川沿いの満開の桜ですが、人の姿もまばらなことがわかります。今回のウイルスは、感染から1~2週間程度で発症するとされています。最初の学生クラスターによる府内感染や病院での感染が、4月初めの知事・市長合同の緊急宣言以降、かなり効果的に抑えられたようで、その結果が、4月中頃に現れてきたと考えられます。その後、全国での緊急事態宣言が出されたことも、他府県からの人の移動などを抑えることに一定の効果があったかもしれません。

図1・図2

図1:日本全国でのコロナウィルス感染者数(5月28日現在)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/
図2: 京都府における新型コロナウィルス感染者数(5月28日現在)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/

地域レベルでの民主主義の大切さ

例年なら大勢の観光客が訪れるはずの京都では、さらに4月末からのGWでのstay homeキャンペーンによる感染抑制の効果がかなり効いたようです。GW中に覗いた木屋町、先斗町界隈も、例年なら人でごった返していますが、今年は飲食店街もすべて閉店で、ほとんど人も歩いていない通りになっていました。写真2は連休最後の5月6日の四条大橋付近の鴨川の夕方です。例年は、5月から鴨川沿いのどの店も川床(ゆか)を始めて、賑やかな夜景が広がりますが、この日はまるでゴーストタウンの夜景でした。市内の観光名所である神社や寺院もすべて参詣・拝観の自粛を行っていました。写真3は5月10日(日)の清水寺全景の写真ですが、清水の舞台にも人影は全くありません。そして、このGWでのstay home効果により、約2週間後の5月15日前後から、京都では感染者ゼロの日々が達成されました。初夏を告げる鴨川の鮎放流がおこなわれ、カワウ除けのロープも四条大橋付近に張られました(写真4)。鴨川沿いの床で飲食を楽しむ人たちも少しづつ増え、京都の町は、ようやく季節を取り戻したかのようです。

いっぽうで、Stay homeおよび休業の要請は、非常に多くの商店や事業者の収入を大きく減少させています。休業の要請は、休業補償とセットで実施されるべきですが、この問題についての政府の対応は遅く、むしろ、多くの地方自治体からの強い要請で細々と開始されつつあるのが現状です。それでも、自粛ベースのstay homeや休業要請がかなり効果的に実施できたのは、京都府・京都市などの自治体と市民の間の信頼関係にもとづく問題の共有があったからではなかったでしょうか。医療機関の崩壊を防ぐために、市内のホテルが積極的に協力したことなども、効果的でした。東京都や大阪府などでも同様の効果が見られています。ヨーロッパの一部の国々では罰則も伴う緊急事態の法的措置によるロックダウンを行いましたが、それでも医療崩壊が起り、爆発的な感染者・死者の増加が起こってしまいました。日本が少なくとも現時点で感染拡大をかなり抑制できているのは、そのような法律の制定よりもまず、地域レベルでの民主主義的施策と行動こそが重要であることを強く示唆しています。

  • 写真1

    写真1:賀茂川沿いの満開の桜(4月3日).(左)下鴨出雲路橋付近(左岸)(右)下鴨葵橋付近(右岸)

  • 写真2

    写真2:四条大橋付近の鴨川の風景(5月6日夕方).大橋南西角の中華料理店東華菜館ビルの灯も消えている。

  • 写真3

    写真3:東山阿弥陀が峰から撮影した清水寺全景(5月10日)。観光客に人気の舞台にも全く人影が見られない。

  • 写真4

    写真4:鴨川の風景(5月21日.四条大橋方面を松原橋から撮影).鮎をねらうカワウ除けのロープが張られている。

【活動報告】(英語)

COVID-19 affects social activities in Indonesia

Nina Yulianti, Kitso Kusin (Univ. Palangka Raya), Masafumi Ohashi (Kagoshima Univ.), Masahiro Kawasaki,
Manabu D. Yamanaka, Osamu Kozan (Res. Inst. Humanity & Nature) and Daisuke Naito (Kyoto Univ.)

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The nitrogen dioxide (NO2) pollution over a region is linked to traffic, industrial and agricultural activities since NO2 is released by power plants, industrial facilities, motor vehicles and biomass burning. The column density of NO2 measured by a satellite is a first-level indicator of resident activity in the region. For example, recent Tropomi instrument on board the Copernicus Sentinel-5P satellite has shown a decline of air pollution over northern Italy and Chine coinciding with its nationwide lockdown to prevent the spread of the Coronavirus disease 2019 (COVID-19). The spread led to the dramatic reduction in NO2 concentrations in all major cities of China between late-January and February 2020. The NO2 drop in late-January is visible on images of the satellite site, coinciding with the nationwide quarantine.[1]

About the pollution map, GOME-2/SCIAMACHY DOAS nadir data browser shows the reduction of NO2 concentrations over China and Indonesia between December 2019 and May 2020 in Fig. 1. The OMI/Aura/NASA data of Indonesia are summarized in Table 1 for the heavily polluted Jakarta and less polluted Riau of Sumatra. In Greater Jakarta, the drop in absolute amounts is not so clear due to the seasonal variation. When the seasonal variation is cancelled, NO2 was reduced to 60% of the average value of 2014 − 2019. The NO2 drop is also seen in the imageries of CREA, Fig. 2, which show the NO2 levels of March 12 − May 5 of 2020 and 2019.

Figure 1

Fig. 1 Nitrogen dioxide NO2 change observed by GOME-2/SCIAMACHY DOAS nadir before and after COVID-19 in Jakarta and Beijin: December 9, 2019 and May 3, 2020
Note the orange areas over Jakarta and north China in the left picture turned to faint color in the right picture.
http://www.iup.uni-bremen.de/doas/scia_data_browser.htm

The nation-wide total number of the COVID-19 cases stood 36,406 on June 12, 2020. [2] In Greater Jakarta the total number was 8,355 or 25% of the nation-wide cases. Positive cases were reported in early-March 2020. Since then, the daily number has increased from 113 on April 2 to 1,111 on June 12.

Google reported Jakarta people’s visits and length of stay at work and residential places change compared to a baseline that is a median value during the 5-week period Jan 3–Feb 6, 2020.[3] Google has calculated these changes using the same kind of aggregated and anonymized data used to show popular times for places in Google Maps. The mobility data at workplace starts decreasing in early-March reaching 53% in late-May while that in residential increases up to 124%. In Riau province of Sumatra, the total number of cases is low, 120 (0.4% of nation-wide) on June 13. The NO2 column density does not drop, suggesting almost no effect of COVID-19 on traffics, industry and people’s activity. Google reported Riau people’s mobility change at workplace reaching 75% and in residential increasing to 112% in late May. These mobility changes are smaller than those of Jakarta. Note that these social data also depend on Ramadan for April 23 − May 23, 2020.

Figure 2

Fig. 2 Nitrogen dioxide NO2 levels of Greater Jakarta and Banten region: March 12 to May 5 (left) 2020 and (right) 2019,
https://energyandcleanair.org/covid19-lockdowns-across-southeast-asia/

Indonesian society consists of some number of large cities and a numerous number of small villages. We have investigated how COVID-19 affects those different types of local societies using the SIR numeric model.[4] This basic mathematical model is simply described by three differential equations.

N = S(t) + I(t) + R(t),

dS(t) / dt = − βI(t)S(t),

dI(t) / dt = βI(t)S(t) − γI(t),

dR(t) / dt = γI(t),

where N is total population, t time delay after the first patient, I(t) number of infectious, S(t) susceptible, R(t) recovery including removed, β an infection rate constant, and γ a recovery rate constant from infection. For these equations, a basic reproduction number, R0, is a measure of infection strength, which is given by:

R0 = Nβ / γ.

Table 1. Tropospheric column density of NO2 before and after COVID-19
column density in units of 1015 /cm2
Month of 2020 Jakarta, Java Riau, Sumatra
January 3.4 0.5
February 2.2 0.7
March 2.5 0.7
April 1.9 1.0
May 2.3 1.1
Data from OMI/Aura/NASA, https://disc.gsfc.nasa.gov/datasets?keywords=OMI&page=1
Note 1: The first COVID-19 case was reported in early-March.
Note 2 The average value of NO2 in South Asia 2020 is estimated to be 2× 1015 /cm2
after Ul-Haq et al. Zia ul-Haq, Salman Tariq, Muhammad Ali, Advances in Meteorology, 2015,
Article ID 959284, http://dx.doi.org/10.1155/2015/959284

According to the reported epidemiological statistics of China, Europe and Japan, R0 are presently (March 2020) estimated to be 5, 2-3 and 1.5, respectively.[5] This number can be reduced to R by an efficacy factor of (1 – c) that depends on lifestyle habits including social communication and distancing, washing hands, masks etc.,

R = R0(1 − c).

With proper prevention of epidemic, R of Japan was reduced to 1.06. Based on information about China, Europe and Japan, we assume in the present calculation that a) day of double infection is 10 days, b) γ is around 0.055 day-1 to calculate I(t) as a function of population, N = 5,000 for a village community and 1,000,000 for a megacity. Although small population density in village makes social distancing large, in the following calculation we assume that human relationship among people of the village community under closed circumstances is much closer than in the city, resulting in a larger (1 – c) value. For simplicity purpose, using a doubled R value for village as shown in Table 2, we numerically calculate epidemic curves in Fig. 3. The number of cases in village peaks on 6th day while 45th for city. Almost all residents in the village suffer from COVID-19 within two weeks while less than a half of people are infected in the city with a seven times slower infection speed. People in city have time to prepare against pandemic while village people do not. Since the local community of the village gets easily collapsed with chaos spread among residents, a small society should take very quick prevention against epidemic to save its community.

Table 2. Results of epidemic curves of a model calculation for village and citya)
 PopulationAreaSDb)ReproductionInfectious function, I(t)
 N(km2)(m)number, Rmaxday of maxtotal (T)T/N (%)
Village5,0001001402.521,45964,71094
City1,000,000200141.2624,07845390,58239
a) day of double infection = 10 day corresponding = 0.07 day-1: day of half-recovery = 12 day corresponding γ = 0.055 day-1
b) Social Distance ~ (population density)‒1/2 = (Area/N)1/2

References

  1. https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Copernicus/Sentinel-5P/COVID-19_nitrogen_dioxide_over_China, Fan, C.; Li, Y.; Guang, J.; Li, Z.; Elnashar, A.; Allam, M.; de Leeuw, G. The Impact of the Control Measures during the COVID-19 Outbreak on Air Pollution in China. Remote Sens.2020, 12, art.#1613.
  2. https://covid19.go.id/peta-sebaran
  3. Google LLC "Google COVID-19 Community Mobility Reports". https://www.google.com/covid19/mobility/
  4. W. O. Kermack and A. G. McKendrick, Proc. Roy. Soc. (London) A, 115, 700 (1927), doi:10.1098/rspa.1927.011).
  5. References for basic reproduction numbers, R0 and R: S. Kado of Kyoto University, https://bit.ly/RADIT21KD20200327, Y. Liu, A. A. Gayle, A. Wilder-Smith, J. Rocklöv, J. Travel Medicine, 27(2), 2020, taaa021, https://doi.org/10.1093/jtm/taaa021, H. Okumura of Mi’e University, https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/python/COVID-19.html
Figure 3

Fig. 3 Calculated epidemic curves in logarithmic scale for (left) small village N = 5,000 / R = 2.52, and (right) megacity N = 1,000,000 / R = 1.26 as a function of day after first case. See Table 2 for epidemic parameters.

【活動報告】

「清浄な空気」の出現と持続可能性への想像力:インドの場合
Covid-19感染拡大防止のためのロックダウンによって出現した「清浄な空気」は環境の持続可能性を追求するインド社会の想像力をどのように喚起しているか

プラカール・ミスラ、総合地球環境研究所

和訳:林田佐智子、総合地球環境研究所

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写真: ヒマラヤのDhaualadhar山脈は、インドのパンジャーブ州ジャランダールから約200 kmの距離。30年ぶりにその姿が出現。 画像クレジットはTwitterユーザー@Deewalia

写真: ヒマラヤのDhaualadhar山脈は、インドのパンジャーブ州ジャランダールから約200 kmの距離。30年ぶりにその姿が出現。
画像クレジットはTwitterユーザー@Deewalia

2020年4月19日現在、Covid-19パンデミックは2200万人の感染者と15万人の死者をもたらしました[1]。ウイルス感染拡大を防止するため、40カ国以上が、強制的隔離(一般にロックダウンと呼ばれる)あるいは、強制的ではないが隔離要請や社会的距離の確保、特定のビジネスや集会の閉鎖などの対策をとっています[2]

ロックダウンの間、不要不急のサービスは一部もしくは完全に停止しています。これらの不要不急サービスの停止によって、様々な大気汚染物質源の環境中への放出が、はからずも減少しました。
同時に、多くの大気が汚染された都市の住民達は、普段よりきれいな空気の日々を経験しています。これは、地球全人口の三分の一は、行動を制限されながらも、きれいな空気を体験しているということを示唆しています。

空気中に含まれる人体に影響を及ぼす可能性のある物質、つまり大気質に関する人間と環境の相互作用を研究する者として、私はこの(ロックダウンときれいな空気という)二つの事象の同時発生が、インドのような汚染のひどい国々において、環境の持続可能性に対する人々の考え方をどのように変化させるのか、興味を持っています。この問題に対する回答は、どうすれば人々の行動変容と環境の持続可能性を視野に入れた政策を促すことができるかを研究する上で、非常に重要です。それにはアンケート調査に基づいた研究を行うのが良いのですが、このニュースレターでは、一般のニュース記事のまとめを元にして、私の考えを提示します。その目的は、コロナウイルスによるロックダウンと、それによって出現した清浄な空気が、環境の持続可能性に対する人々の想像力をどのように形作っているのかを示すことです。

ロックダウン中の清浄な空気と生活様式の変化

図: インドの都市での大気質指数はロックダウン前(3月22日)と比較し、ロックダウン中(3月29日)は減少。表は[3]をもとに作成。

図: インドの都市での大気質指数はロックダウン前(3月22日)と比較し、ロックダウン中(3月29日)は減少。表は[3]をもとに作成。

インドにおける国家規模のロックダウンは2020年3月24日に開始されました。ロックダウンという手法は、1月中旬、中国の武漢で、コロナウイルスの感染拡大を防止するための“社会的距離の確保”を強制するために初めて採用されました。

武漢上空の二酸化窒素の濃度が目に見えて減少していることが、欧州宇宙局のTROPOMIセンサーによって初めて報告されたのは、ロックダウン開始から1ヶ月少し経ってから後のことです。同様に、インドにおいても、ロックダウン開始から1週間後には、輸送や産業の停止によると見られる大気質の改善の観測結果が報告されました。ニューデリーのような都市では、人々がソーシャルメディア上で、青い空が毎日続くという経験を共有し始めました。いくつかのニュース記事では、インド各地で、ロックダウンの前後を比較して微小粒子(PM2.5)の減少が確認され始めたと報じています。これらの報告では、都市部では20~50%の減少とされ、特にインドガンジス河平原の都市部で最も顕著であることが示されました。さらに、パンジャーブ州ジャランダールでの興味深い景色の出現が人々に強烈な印象を与えました。そこでは、これまで隠れていたヒマラヤのDhauladhar山脈が30年ぶりに姿を現したのです。このような「青い空」の体験によって、人々はロックダウンがインドの都市にきれいな空をもたらしたことを知ったのです。

同時に、日常の生活様式のレベルでのパンデミックへの適応が、将来の行動変容につながる可能性を示すいくつかの兆候もみられました。例えば、インドでは普段人々はマスクを着用していませんでした。おそらくそれは、公共圏でのマスクの着用は失礼ではないかという感覚や、マスクの着用そのものへの窮屈さとも関係しているかもしれません[6]。極度な大気汚染が起きたときですら、マスクをつけているのは大気汚染の影響を特に深刻に意識している人々に限られていました。現在では、マスクが感染拡大に対する自己防衛のための重要なツールだと認識され、より多くの人々がマスクをつけるようになりました。人々はマスク着用を強く推奨されるようになり、いくつかの地方自治体では、着用していない人を処罰するようにすらなってきたのです[7]

ロックダウンの経済コストは、政府、産業界、そして一般の人々によって負担されています。しかも、その一般の人々のなかには、社会保障システムの外側にいる人々も含まれています。いくつかの工場ではロックダウンによってもたらされる雇用喪失を乗り切るためにテレワークを適用しています。テレワークの導入により、事務所のレンタル費やエアコン代などにかかる経費を削減し、母親を労働力の一翼と考えることも可能であることが明らかになりつつあります。

同様に、インド政府は、農村におけるロックダウンの影響への対応として、National Agricultural Market web-platform (e-NAM・インドの農産物のオンライン取引プラットフォーム)の機能を拡張しました。今では、農家の生産物に対する遠隔入札や電子決済が認められ、その結果、農民は市場や銀行に直接行く必要がなくなりました。このような変化は、コロナウイルスの危機を生き延びることを助けるだけでなく、大気汚染物質の移動量とエネルギー放出を減らすことになり、大気質の改善にも役立つと考えられます。

いつまで持続できるか?

しかしながら、ロックダウンによる環境浄化への効果について疑問がわいてきます。これまでも、食糧供給のための不可欠なトラックや、救急車、パトカーなどは都市部を通行する必要があるので、交通からの排出はゼロにはならないし、なるべきでものではないと指摘されてきました。家庭からのバイオ燃料の放出は都市部の大気汚染に大きく寄与していますが、これは現在も活発に放出されており、ロックダウンによってあまり低下しないでしょう。また、ロックダウン中の環境マネージメントの規制要綱に強制力がないため、鉄鋼業や鉱業といった産業は、何の監視も無しに(環境を)汚染しているかもしれません。さらに、化石燃料産業は、すぐに必要とされるエネルギーと材料を提供できる唯一の産業であるため、アメリカや中国では経済成長を再開するために、これらの産業への環境規制は緩和されています[4][5]

したがって、(ロックダウン中の)汚染物質放出が低いことによって得られる清浄な空気を生み出すメリットも、持続することは期待できないでしょう。コロナウィルスの流行中の政策介入に対する社会の対応が示唆しているのは、人々は、持続可能性の考え方を、より広い意味において、より真剣に受け入れる必要があるということです。ベネディクト・アンダーソンは、1983年に「想像の共同体」という概念を提起し、そこでは、たとえそれが大きな共同体であっても、人々は自分がそのグループの一員であると「想像」できることがあると述べました。この概念に倣えば、今、「想像の持続可能性」とでも呼ぶべき発想の共同体が形成されつつあると言えるのではないでしょうか。つまり、そこでは、人々は、持続可能性についての通念を、自ら意識しないまま共有してしまっているのです。この通念によれば、経済成長は常に健全な環境に悪い影響を及ぼすものとされます。

このことは、「清浄な空気」という認識が出現した時期に明らかになりました。というのは、社会環境問題の運動に携わる人たちは、「清浄な空気」こそは、政府の「環境を犠牲にしても(経済的)開発を進める執拗な態度」に終止符を打つための警鐘であり、それに気づくべきだと主張してきたからです。これこそ、ウイルスの蔓延という現象によって引き起こされた「想像の持続可能性」にほかなりません。しかし、そのような解釈は短絡的にすぎて、短期的な行動変容を超えて、持続可能性の観念を十分に共有するためには役に立ちません。

われわれが必要としているのは、環境負荷を増加することなく経済成長を促進するような、さまざまな環境と経済のデカップリング戦略(切り離した戦略)の、より包括的で精密な評価です。このような戦略は、しばしば環境評価を経済成長のそれに統合しようとします。生活の質やグリーン成長、包括的富といった概念は、そのような戦略を表現しようとしています。

現在の「清浄な空気」は、政策が主導した国家規模のロックダウンとは何の因果関係もないものです。しかしながら、それは、次の二つの点で、今後の社会認識に影響を及ぼすことになるでしょう。第一に、「青空の経験」は、短期間に終わったとしても、経済成長と大気汚染を切り離す技術を採用するための将来の政策に、一つのビジョンを提供する可能性があります。第二に、人々の行動変容は、たとえそれ自身は一時的なものに終わったとしても、公衆衛生への関心を高める効果を持つ可能性があります。

現在のインドにおける国家規模のロックダウンの期間を通じて、統治と国民への関与に対する強い意志は、明確に示されてきました。ただ、グリーン成長にコミットするために、同様の意志の力がどのように行使できるかは、まだわかりません。インド科学アカデミーの前会長は、最近の論説 [8]において、Covid-19に対するインドの戦いについて、要を得たサマリーを書いています。「検知せよ、防護せよ、防止せよ、予測せよ、そしてもっとも重要なのは…参加せよ」と。これは環境の持続可能性についても言えると思います。

追記

技術的なこととして、追加しておくと、大気汚染物質濃度は、放出だけではなく、輸送や地域的気象条件で決定されます。ロックダウンによる大気質改善に対する役割を定量化することは科学的に難しい問題です。現在、私たちAakash チームは、デリーに設置した独自のPM2.5センサーや衛星データセットを使ってこの問題に取り組んでいます。

引用記事:

【論文】

温室効果ガスの排出がこのまま続けば50年以内に人類の3分の1が「住めないほどの」灼熱にさらされる

ティム・コーラー、総合地球環境研究所 招へい外国人研究員

和訳:近藤康久、総合地球環境研究所

温室効果ガスの排出が減らなければ、50年以内に全人類の3分の1が住む場所が、サハラ砂漠の最も高温なところと同じくらい暑くなる、という研究結果を、中国・米国・欧州の研究者からなるチームが、米国科学アカデミー紀要の今週号に発表しました。急速な温暖化は、35億人もの人々が、過去6千年にわたって人類が生存してきた気候適地の外に住むことになることを意味します。

何十億人もの人々がコロナ危機によるロックダウンを被る中で発表されるこの研究成果は、二酸化炭素の排出がこのまま続けば、世界をもはや予測できない危機に陥れるリスクが高いことを単刀直入に警告するものであると、考古学・生態学・気候学の研究者からなるこの国際共同研究チームは結論づけています。

人類の居住域は狭い気候帯に集中しています。大部分は年平均気温がおよそ摂氏11度から15度の場所に住んでおり、年平均気温が約20度から25度のところに住む人口は比較的多くありません。研究チームは、人類のほとんどが、イノベーションや移住のいかんによらず、過去数千年間にわたってこのような条件の場所に居住していたことを明らかにしました。「この驚くほど一定した気候適地は、人類の生存基盤となる制約条件を示しています」と、ワーニンゲン大学のマルテン・シェーファー教授は述べています。シェーファー教授は南京大学の徐馳(シュウ・チィ)博士とともに今回の研究プロジェクトを主宰しました。

温暖化が進行しつづけた場合に起きること

人類が温室効果ガスを排出し続けた結果、気温は急速に上昇すると予測されます。排出量が増え続けるシナリオに基づくと、2070年までに多くの人が経験する気温の上昇幅は7.5度にもなります。この上昇幅は、全球の平均気温が3度少々上昇するという予測よりも大きい値です。その理由は、人類が居住する陸地は海洋よりもずっと速く温暖化が進むのに加え、すでに暑い場所に偏って人口増加が進むことにあります。

この急激な気温上昇を、全球的な人口変動予測と組み合わせると、もし温室効果ガスの排出量が増え続けるならば、世界の予測人口の約30%が、50年以内に平均気温が29度を超える場所に住むことになります。このような気候条件は、現在は陸地全体の0.8%にすぎず、そのほとんどはサハラの最も暑い地域です。しかし、2070年までに、この条件の場所は陸地の19%に拡がります。「このため、35億人がほぼ住めない状況下に置かれます」と、本論文の共著者の一人であるオーフス大学のイェンスクリスチアン・ズヴェニング教授は語っています。

コロナウイルスとは比較にならない

「新型コロナウイルスは世界を数か月前には想像すらできなかった姿に変えました。私たちの研究結果は、気候変動も同様に世界を変えてしまうかもしれないということを示しています。気候変動に伴う変化は比較的ゆっくり進行するかもしれませんが、感染症の世界的な大流行とは異なり、逃れることが決してできないものです。地球の大部分が生存できないほどの灼熱となり、温度が下がることはありません。直接的な効果として破滅的であるばかりでなく、新たな感染症の大流行のような将来的な危機に社会が対処できなくなります。このようなことが起きるのを止めるには、二酸化炭素の排出をすぐに止めるほかありません」と、シェーファー教授は続けています。

1度下がれば10億人が救われる

もし温室効果ガスの排出を今すぐ減らせば、このような灼熱の条件にさらされる人の数を半分に減らすことができます。「朗報なのは、このようなインパクトは人類が地球温暖化に歯止めをかけることができれば大きく減じることができるということです」と、共著者の一人でエクセター大学の気候学者であるティム・レントン教授は語っています。「私たちの計算によれば、現在の水準から1度の温暖化が進むごとに約10億人が気候適地からはみ出ます。ここで重要なのは、温室効果ガスの排出に歯止めをかけることによって得られる利益を、金銭面だけでなく、人道的な視点からも主張するべきだということです」。

大規模移住というリスク

気候変動がこのまま進行すれば極端な高温にさらされることになる35億人のうち、少なからぬ数の人が移住を志すかもしれない、と研究チームは指摘していますが、移住には気候以外の多くの要因が影響を及ぼす一方で、移動を強いる圧力の一部は気候への適応を通して解決可能である、とも強調しています。「気候変動が実際にどの程度の移住につながるかを予測するのはまだ困難です」と、シェーファー教授は続けます。「人々は移住しなくてすむなら移住しません。また、限界内に収まる地域では局地的な適応という選択肢もあり得ますが、グローバル・サウスでは開発を加速する必要があります」。

さらに同教授はこう付け加えています。「私たちの研究は、気候変動に対処するためには、気候変動というインパクトへの適応や、社会課題への対処、ガバナンスの構築、開発に向けたエンパワーメントだけでなく、住む場所によって影響を受ける人々に十分配慮した法的支援などを含む、包括的なアプローチが、すべての人が尊厳をもって生きることのできる世界を確かなものにするために決定的に重要である、ということを強調するものです」。

結果を検証する

「最初に実験結果を目にしたときはびっくりしました」と、分析を担当した徐博士は語っています。「結果がとても衝撃的だったので、1年かけて全ての前提条件と計算方法を慎重に点検しました。また、透明性を担保し、他の研究者による発展研究をうながすために、全てのデータと計算コードを公表します。結果は中国にとっても重要です。この研究が予測する変化が引き起こす可能性のある甚大な社会的負荷から子どもたちを護るためには、地球規模の取組が必要となるのは明らかです」。

「新しい研究手法と、世界的な協働が結びついて、人類の過去を復元する研究が加速しました」と、ワシントン州立大学プルマン・キャンパスの考古学者であるティム・コーラー教授は述べています。「この研究は人類が気候の影響を実に強く受けてきたことと、人類の生存に適した気候が驚くほど一定していたことを理解する助けになります。なお、考古学の知見によれば気候変動が移住の要因となった事例は数多くあります」。

図 よく使われる気候シナリオに基づく酷暑地域の拡大。現在の気候では、年平均気温が29度を超えるところはサハラ地方の小さな暗色の地域に限られる。しかしRCP8.5シナリオに基づく予測によれば、2070年にはそのような条件の場所が網掛けの地域に広がる。SSP3人口シナリオに基づくと、移住を考慮しなければ、2070年にこの地域には35億人が暮らしていることになる。背景の段彩は現在の年平均気温を表す。

図 よく使われる気候シナリオに基づく酷暑地域の拡大。現在の気候では、年平均気温が29度を超えるところはサハラ地方の小さな暗色の地域に限られる。しかしRCP8.5シナリオに基づく予測によれば、2070年にはそのような条件の場所が網掛けの地域に広がる。SSP3人口シナリオに基づくと、移住を考慮しなければ、2070年にこの地域には35億人が暮らしていることになる。背景の段彩は現在の年平均気温を表す。

本論文は、大気中に集積した温室効果ガスを高く見積もる「RCP8.5」を主たるシナリオに用いた。シナリオの詳細は https://link.springer.com/article/10.1007/s10584-011-0148-z 及び https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/02/WG1AR5_SPM_FINAL.pdf を参照されたい。

この論文は、共著者の一人であるティム・コーラー教授が総合地球環境学研究所の招へい外国人研究員として滞在中に採録に向けた手続きがなされました。
(日本語訳:近藤康久・総合地球環境学研究所・准教授)

【安成通信】

新たな日常性を求めて ‐コロナウィルス危機の中

安成哲三、総合地球環境研究所

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症によるパンデミックに陥った世界。この危機を乗り越えることが喫緊の課題ですが、今回の危機を未来可能な都市や社会への転換にどう生かせるか、私たち人類の叡智と想像力が試されています。

COVID-19の憂鬱な春

新年度の春を迎え、地球研の周りも桜が満開で、玄関付近の斜面にはコバノミツバツツジの赤紫の花も同時に咲き、北山一帯には山桜があちこちに咲く山笑う美しい季節となっています。

世界は、しかし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大のため、遂にパンデミック(世界での大流行)を引き起こしています。国内でも東京など大都会を中心に、日に日に増加しています。国内全体で4月5日現在、感染者数が約4000人、死者は93人ですが、さらに増え続け、急激な増加(overshoot)が懸念される大変心配な状況です。京都でも欧州の卒業旅行から戻った学生達からクラスターとよばれる感染者集団が発生し、今日現在、京都市内での感染者が76名(京都府内では125名)になってしまいました。

都市では、様々なかたちで人が集まり、経済、商業、教育、行政、公共交通、医療、地域サービスなどの活動を、粛々とbusiness as usual (平常どおり)に進めることで、都市として機能し、ひいては現代の社会あるいは文明といわれるものが成り立ってきたといえます。それが、今回のCOVID-19の拡大のために、これらの集団的に効率よく行われてきた都市の機能は大幅に低下しつつあります。特に、経済、商業活動の低下は、(生きる糧を得るための)市民の生活に大きくひびくため、社会的な不安が増大しています

スペイン風邪から100年

ウィルス感染による最大規模のパンデミックとしては、ほぼ100年前(1918~1920年)に、いわゆる「スペイン風邪(Spanish flu)」がありました。世界での感染者は5億人(当時の世界人口は推定で18~20億人)、推定死者数は1700万人から1億人ともいわれています。日本国内でも当時の人口5500万人に対し約2300万人が感染し、40万人前後の死者がでました。このパンデミックは、ヨーロッパを中心とする第一次世界大戦(1914~1918年)の最中、アメリカ合衆国で広がり、米軍のヨーロッパへの参戦のきっかけに、ヨーロッパに拡大したとされています。戦時中であり、参戦国内では情報統制が強かったため、中立国であったスペインでの感染状況がよく知られたため、この名前が付けられています(注1)。戦争による戦死者が1500万人であったのに対しても、この感染による死者がはるかに多かったわけです。(戦死者数の中には、戦闘中の死者よりもこのウィルス感染によって亡くなった戦闘員が含まれているともいわれています。)

COVID-19とグローバリゼーションの功罪

今回のCOVID-19 による感染は、現時点で、世界の感染者数が100万を超え、死者も5万人を超えています。飛行機を中心とする交通網のグローバル化は、世界全体での感染を、ほぼ同時的に進める結果になっています。同時に、インターネットの普及で、感染の実態は、リアルタイムに世界中でモニターされ、情報が流れていることも、人類にとって、初めての体験であるといえます。このグローバル化された情報化社会により、感染を抑えるためのより確実な対策・対処の情報が各国で可能になっていることは非常に重要です。今回のケースは、このようなグローバルな情報交換と相互協力の効果もあり、今のところ、100年前のスペイン風邪の実態に比べると、はるかに「ましな」状況に抑えられているともいえます。

ただ、情報化を含め、高度に発達し、複雑化した都市を中心とした現代の社会は、ウィルス感染という、生物学的、物理学的なプロセスには、非常に脆いことも露呈されています。ワクチンなどがまだ開発されていない今の段階では、「お互いに移さない、移されない」ように、単純な隔離と分散を行う対策しかありませんが、100年前の都市よりもはるかに感染が拡がりやすい状況にもなりえます。多くの自治体や大都市の首長からは、毎日のように、不要不急の外出を控え、”Stay home!” を促す強いメッセージが出されています。

このような対策が、私たちの「文明化された」社会では、如何に様々な障害と機能不全を容易に引き起こすかを、私たちは同時に体験し始めています。インターネットの普及のおかげで、テレワークの高度化などが、今回をキッカケに急速に進むことが期待されますが、一方で、毎日顔を合わせて学び合う学校の存在も、いかに子供たちの成長にとって重要であるかも再認識させています。

新たな日常性を求めて-COVID-19を克服する智と想像力を

今回の問題をきっかけに、「地球温暖化」などの地球環境問題は、後回しだ、棚上げだという声も一部の人から出ているようですが、そうではないと私は考えます。むしろ、現在の文明の構造こそが、「地球温暖化」の原因でもあり、同時にウィルス感染への高い脆弱性にもなっています。人が集まる巨大都市ほど、CO2の排出量は多いだけでなく、今回のウィルス感染者数も非常に多くなっています。実現が非常に困難とされている「脱炭素」社会の可能性も、同時に考えるいい機会だと思います。たとえば今、人の移動の大幅な抑制のために、大量のCO2を排出する大型旅客飛行機の大部分がストップしていますが、「地球温暖化」対策としての効果が期待されながら、実行が困難であったことが期せずしてできてしまっています。ウィルス問題が終焉した時、再びクレイジーなほど頻繁で過密になっている航空網に戻すのではなく、そこそこの航空網でも「やっていける」社会の可能性を考える契機にもすべきだと思います。自然環境への負荷が小さく、同時にウィルス感染などにも強靭な社会こそ、より持続可能(あるいは未来可能)な社会のはずです。ウィルスや病原菌の感染には、生態系への人類の干渉そのものが密接に関係しており、今回の問題は、広い意味で地球環境問題として捉えるべき側面もあります。

目の前の差し迫った危機を乗り越えることは、もちろん喫緊の課題です。しかし、元の日常にただ戻すだけではなく、今回の危機を、より根本的に、より長期的視野で未来可能な都市や社会への転換にどう生かせるかを、同時に考えていくべきです。私たち人類の叡智と想像力が試されています

<人類の危機を見守る桜かな 哲風>

(注1)出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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