人間文化研究機構 第17回公開講演会・シンポジウム
「遠い森林、近い森:関係性を問う」
開催報告


地球サミットから20年目を来年に控え、国連では今年を国際森林年に指定しています。本シンポジウムは、熱帯林、国内の森林を「関係性」の観点から包括し、私たちと森林との関係の再構築に向けた行動を提起する機会となりました。200名超の参加者の多くから質問紙が寄せられた、熱気溢れる会でした。

金田章裕人間文化研究機構長による開会の辞のあと、趣旨説明では阿部健一地球研教授が、森林との関係距離を縮めるにはどうすればよいか、との問いを示しました。講演では、研究者の立場から湯本貴和地球研教授が、東南アジア地域と屋久島の森林を事例に「生態系サービス」間にはトレードオフ関係があることを、木材利用、生物多様性、観光、CO2吸収等の項目間関係を例に示したあと、生態系サービスの観点に立ったスキーム作りが重要であることを確認しました。企業家の立場からは、株式会社松栄堂の畑正高代表取締役社長が、香木の生産地であるインドネシアでの経験を紹介されたあと、社員による河川と森林の保全活動についてご紹介いただきました。香を焚きながらのご講演でした。行政担当者の立場から、林野庁の末松広行林政部長により、作業道路網のドイツ並みの整備、10年後の木材自給率50%の達成、木造家屋がもつ強度と心身への効用を踏まえた国産材住宅の推進等のプランをご紹介いただきました。

対談では、市民を代表してタレントの遙洋子氏から、森を身近に感じるための「適宜な」山が見つからない、とのお話がありました。パネルディスカッションでは、遙氏から次つぎと繰り出される要望に、講演者3名が押されながらも回答する形で進められました。「だまされたと思って、行ってみること」(遙氏)。これが今回のメッセージです。(熊澤輝一)

矢印 人間文化研究機構 第17回公開講演会・シンポジウム「遠い森林、近い森:関係性を問う」 開催案内

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写真提供:産経新聞社