なぜ遠く離れた熱帯林の保全がわれわれ日本人にとって大切なのか。
それは、遠い他国の森林であっても、われわれの生活に深く関わっているからだ。単に熱帯林の産物を利用しているだけではなく、生態系サービスとして、熱帯林の恩恵を直接的・間接的に受けている。熱帯林のグローバル・コモンズとしての価値に、われわれはようやく気付き始めた。
一方、近くにある国内の森林の関係性と価値は急速に失われつつある。かつて日本人にとって森林は生活の一部であり、長い歴史のなかで世界に誇りうる緊密な関係を築いていた。ところが今日、森林のかつての役割は重要でなくなり、不在森林所有者が増え、森林は荒れ果ててきている。身近にありながら関係は「遠く」なっているのである。森林にさまざまな価値を見出しているのは、むしろ遠く離れた「町の人」である。
今回のシンポジウムでは、こうした森林との「関係性」を取り上げ、さまざまな価値を見直し、再び森林を身近なものにするにはどうしたらよいのか考えたい。研究者、企業家、行政担当者、それぞれの立場の方から話を伺い、さらに市民の立場から議論を重ねたいと思っている。