漆作家の栗本夏樹さんが、初夏の聴竹居で個展を開きます。
「聴竹居(ちょうちくきょ)」は、環境工学的視点から風土と住む人の身体に即した住宅を追求したことで知られる建築家・藤井厚二(1888-1938)の実験住宅。和風と洋風、前近代と近代、自然と人間といった、時に対立する要素の融合が試みられ、エコハウスの原点としてもあらためて注目されています。今回はこのたぐいまれな生活空間での個展を前にした栗本さんと一緒に、漆文化の歴史と魅力をたどりつつ、藤井がめざした暮らしの‘かたち’について考えていきます。
漆芸はJAPANという呼び名で知られ、わが国を代表する工芸ですが、モンスーンアジア各地に息づいてきた生活文化でもあり、この地域ならではの風土や自然環境との共生に根ざした暮らしを象徴するものといえます。藤井が近代的な暮らしに接続しようとしたエッセンスは、漆芸の成り立ちをたどることであらためて明らかにできるかもしれません。なんといっても漆(うるし)の語源は「うるわし」「うるおし」。
漆芸のこれからの可能性も見すえつつ、暮らしの潤い、その美しさについて考えていくことができれば幸いです。