研究プロジェクトについて
産業革命以降、化石燃料の使用によって社会活動は急拡大した一方、大気中のCO₂濃度の上昇にともない、完新世の気候バランスが崩れる危機が迫っています。そこで、本FSでは、都市エネルギーシステム(ターゲット都市は、京都市、中国深圳市、米国サンディエゴ市)を再生可能エネルギーによって脱炭素化し、次の千年の基盤となる持続可能な都市システムの構築手法を確立することをめざします。
なぜこの研究をするのか

写真1 深圳の中国総合開発研究院の研究者らと
過去1万年の穏やかな完新世の気候は、農耕社会から現在の複雑な社会に至る社会発展の基盤を提供しました。この完新世の気候を維持し、次の千年の人間社会の基盤となるCO2排出実質ゼロのエネルギーシステムを構築することが世界の課題となっています。特に、世界のCO2排出の4分の3を占める都市エネルギーシステムの脱炭素化が最重要課題です。そこで、本FSでは、最も安いエネルギー源となりつつある再生エネルギーを活用し、様々な社会問題を解決しながら、次の千年の基盤となる都市システムを構築することをめざします。
また、本FSは、1997年に「気候変動枠組条約京都議定書」調印の舞台となった京都市の協力を得ます。京都市は、京都議定書調印から20年となる2017年12月に地球環境京都会議2017(KYOTO+20)を開催し「京都宣言」を世界の都市とともに発表しました。総合地球環境学研究所は、この「京都宣言」の宣言主体として名を連ねており、京都市の協力を得ながら本FS等を通じて京都宣言にある持続可能な都市文明の構築をめざしています。また、世界のイノベーションハブとして急発達する中国の深圳市、再エネ導入がすでに電力の40%を超えるサンディエゴ市も対象都市として研究を行ないます。
これからやりたいこと
本FSでは、技術経済性研究、フューチャー・デザイン研究、和風スマートシティーの研究、分散型エネルギーシステムの研究、都市エネルギー政策・制度の研究、持続可能な習慣・行動・文化の研究を通じて、2040年までに3都市がカーボンニュートラルとなるべく戦略を形成することをめざします。条件の異なる3都市を扱うことで、都市それぞれの特徴を生かした都市の脱炭素化戦略を形成します。学術的な研究に加え、都市をレギュラトリーサンドボックスとして規制を緩和し、企業にカーボンニュートラルにむけた新技術を試す実証の場を提供することも重要な政策戦略であると考えています。京都市、深圳市、サンディエゴ市の自治体との協働、およびビジネス界を含めた形で都市間連携のリビングラボとして、トランスディシプリナリーな研究とします。本研究終了の時点で、京都市、深圳市、サンディエゴ市が、2040年カーボンニュートラルに向けた世界のイノベーションハブとして協力体制を築き、3都市とも脱炭素発展にオントラックであることをめざします。また、3都市における研究結果を踏まえ、次の千年の基盤となる「人と自然」が共存できる都市システムの在り方を明らかにします。
メンバー
FS責任者
氏名 | 所属 |
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小端 拓郎 | 国立環境研究所 |
主なメンバー
氏名 | 所属 |
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鎗目 雅 | 香港科技大学 |
山形与志樹 | 国立環境研究所 |
森 晶寿 | 京都大学 |
原 圭史郎 | 大阪大学 |
大塚 健司 | アジア経済研究所 |
内藤 克彦 | 京都大学 |
王 東 | ハルビン工業大学 |
唐 杰 | ハルビン工業大学 |
西田 裕子 | 自然エネルギー財団 |
YANG, Perry | ジョージア工科大学 |
刘 宇 | 中国総合開発研究院 |
郑 心纬 | 清華バークレー深圳研究所 |