研究プロジェクトについて
本FSは、東南アジア地域を主な対象に、欧米諸国の経験とは異なる、同地域特有の文化・制度のダイナミズムと貧困や健康格差、さらにはそれに深く関連する農業を主とした自然資源利用との関係を、その歴史的変容や現状に関して多方面からの科学的 エビデンスの蓄積と総合により明らかにするとともに、新たな社会像を現地のステークホルダー(利害関係者)と協働で設計・構築していくものです。
なぜこの研究をするのか
現代の社会は、さまざまな環境問題をはじめとする諸問題をともないつつも、人間行動の主要な要因のひとつであるインセンティブ(誘因)を反映した文化・制度の蓄積の結果です。しかしながら文化・制度は、本来ダイナミックなものであり、時には喪失を受容しつつも、常に変容していくものと言えます。本FSでは、東南アジア地域を主な対象に、欧米諸国の経験とは異なる、同地域特有の文化・制度と貧困や健康格差、さらにはそれに深く関連する農業を中心とした自然資源利用の歴史的変容を明らかにするとともに、新たな社会像を現地ステークホルダーと協働で設計・構築することをめざします。そのために、その歴史的変容や現状に関して、多様な学問分野からの科学的エビデンスの蓄積をおこなうとともに、それらを総合し、文化・制度のダイナミズムを考慮した超学際的研究のひとつのあり方について、理論や方法論の確立をとおして、提示していきます。
これからやりたいこと
本FSの主な対象地域は、インドネシア、およびベトナムです。両地域とも市場経済が浸透している都市部と、その周辺の農村部を選定しています。ベトナムに関しては、それほど市場経済の影響を受けていない山間の農村部も選定しました。当該地域の食文化等をはじめとする文化・制度の歴史的変容を明らかにするとともに、貧困や健康格差、および自然資源利用の現状を分析します。また、関連するステークホルダーとの新たな社会像の協働設計・構築に向けて、日本における生活改善事業や学校給食等の導入と農村部の自然資源利用の経験等も概観し、その適用可能性を探ります。具体的には、以下のような研究項目を設定します。
- ⅰ)
- ⅱ)
- ⅲ)
- ⅳ)
- ⅴ)
食・農を中心とした人間活動が生物多様性に与える影響に関する評価方法の確立やそのメカニズムの把握、さらには以下の研究項目の成果をも統合する、社会生態システム統合化モデルを構築します。
都市・農村部双方の貧困・健康格差の変容:社会経済の歴史的変容と食文化の変化を、住民の認識の変容も含め明らかにするとともに、現状について栄養素摂取、疾病への罹患等の観点から分析します。
農村部における農業を中心とする自然資源利用の変容:市場経済の浸透や、人々の食の嗜好に関する変化などもふまえながら、農村部における文化・制度の歴史的変容と自然資源利用の変化について、農業生産の状況、栽培作物種数、利用可能な品種・種子数、アクセス可能な自然資本(キノコや山菜、フルーツなどが採れる森林、淡水魚のいる河川、湖沼など食料を得ることができる自然)、土地利用等に着目して分析します。
文化・制度の変容とソーシャルネットワーク:ソーシャルネットワークは、当該社会の基盤と考えらます。これは、どの角度から見るかにより異なるのはもちろん、当該社会の文化・制度の変容にともなって変化していきます。本FSでは都市内、農村内、および都市−農村間のソーシャルネットワークについて地理的なネットワークも含め、文化・制度の歴史的変容とともに分析します。
多様なステークホルダーとの協働:研究成果の総合による新たな社会像を構築していくため、さまざまなレベル、範囲のステークホルダーの特定と、その住民への提示のあり方に関するコミュニケーション手法の確立、また将来世代をめざします。
以上のような研究成果をもとに、アジアにおける自然文化多様性をいかした持続型社会の構築に資する食文化等を地域住民と協働して形成していくとともに、学校給食等も利用しながら、当該社会への波及を図ります。
メンバー
FS責任者
氏名 | 所属 |
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松田 浩敬 | 東京農業大学農学部 |
主なメンバー
氏名 | 所属 |
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関山 牧子 | 国立環境研究所 |
土屋 一彬 | 東京大学大学院農学生命科学研究科 |
西川 芳昭 | 龍谷大学経済学部 |
濱野 強 | 京都産業大学現代社会学部 |
原 圭史郎 | 大阪大学大学院工学研究科 |
池田 真也 | 茨城大学農学部 |
古川 拓也 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所 |
小林 邦彦 | 総合地球環境学研究所 |
西村 美彦 | NPO法人国際農民参加型技術ネットワーク(IFPaT) |
CHEN Chiahsin | 台湾国立成功大学 |
青木 えり | 東洋大学 情報連携学部 |
GEETHA Mohan | 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所 |