泥炭地は排水により二酸化炭素を排出し沈下するとともに、乾燥した泥炭地は極めて燃えやすく、毎年乾季には泥炭火災を頻発しており、開発の拡大・深化により大規模な火災と煙害は加速的に深刻化してきています。特に2015年の7月~11月にかけて、非常に広範囲かつ高頻度の泥炭火災が生じ、2015年10月中旬時点で、インドネシアの210万ヘクタール(北海道の約4分の1)の面積で火災が生じ、50万人が上気道感染症と診断され、近隣国でも大きな問題になりました。火災による膨大な二酸化炭素炭素排出は、喫緊の地球環境問題となっています。
私たちの提案である、乾燥荒廃泥炭地の湿地化と、泥炭湿地在来樹種の再植は、今日、インドネシア泥炭火災と煙害を克服するための方策として、いわばインドネシア泥炭問題国際コミュニティにおいて解決策の柱として認識されました。昨年の大規模な泥炭火災を受けて作られた泥炭復興庁は、5年間で200万ヘクタールの再湿地化と植林の目標を定めています。このように、インドネシア全土で適応されつつあるこの方策が、真に泥炭火災と煙害をなくすことできるまでには、まだ解決されなければならない問題がたくさんあります。たとえば、国家管理地における見渡す限り乾燥し劣化した泥炭地を、誰がどのように湿地化し、植林していくのかという問題、住民や企業が意欲をもって再湿地化やその地で農林漁業を行なっていくためには、どのようなパルディカルチュアが望ましいのか、認証材を含んだ住民に支持される樹種は何か、アカシアクラシカルパに変わるパルプ樹種は可能かという問題の検討、さらに、伐採・運搬(運河を使わない方策)、加工、利用、販売についての革新が必要です。また、これらの湿地化した泥炭における植栽が真に火災を防止するのかという問題を検討する必要もあります。このような問題を、地域住民や、地元大学、泥炭復興庁、NGO、さらに多数の国際的な組織と手を携えて研究し、解決策を実践していきます。