ローカル・スタンダードとは何か

─地域社会変革のためのインクルーシヴ・アプローチの理論と実践
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研究プロジェクトについて

グローバリズムのひずみを克服するには、〈地域固有〉でありかつ〈普遍的〉な価値を創造する必要があります。そうした価値を「ローカル・スタンダード」と呼び、その内実を具体的に検証するとともに、地球環境問題の解決に至る「地域社会変革」の駆動力を解明することが本FSの狙いです。まずは国内のさまざまな地域再生活動を対象に研究を進め、さらに海外、特に東アジアの事例との比較を行ないつつ、そうした類似した活動をしている地域や人びととの間で連携のあり方を探っていきます。

なぜこの研究をするのか

地球環境問題の多くは、都市と地方、先進国と途上国など、いわば「中心と周縁」の格差と関連して生じてきました。「中心」となって経済的豊かさを享受してきた都市や先進国によって、地方や途上国は資源を奪われ、環境を破壊され、豊かさから疎外された「周縁」に追いやられてきたといっても良いでしょう。しかも現代では、たとえ両者の関係を逆転させたり、対等にしたとしても本質的な解決には至らないほどに事態は深刻化しています。 最大の問題は、犠牲となっている周縁にも、抑圧している中心にも、その責任を担いうる主体も実体もないことです。社会構造の複雑化にともない、気がつくと私たちは、問題に対する直接的な利害関係を持たないまま当事者となり、あるいは、まるで当事者ではないのに、責任追及される立場へと追いやられています。近年のグローバリゼーションは地域の自律性を奪うとともに、こうした傾向に世界規模で拍車をかけてきました。

本FSは、こうした現状を克服する術を、個々の地域に固有な普遍的価値=ローカル・スタンダードの発見と共有、当事者性の拡大と深化という実践活動のなかに探っていきます。

これからやりたいこと

写真1 奥会津・昭和村の旧喰丸小学校

写真1 奥会津・昭和村の旧喰丸小学校。愛されながらも維持のめどがつかず、解体はやむを得ないとされていた。しかし、2014年末、村内外の有志の取り組みにより、村議会で従来の解体方針を白紙とすることになった。ローカル・スタンダードの原点は、身近な地域の身近な風景に寄せる一人ひとりの思いにほかならない

写真2 東日本大震災の被災地である牡鹿半島の小さな漁村で生まれたアクセサリー「OCICA」

写真2 東日本大震災の被災地である牡鹿半島の小さな漁村で生まれたアクセサリー「OCICA」。対話、調査、可視化の3つのステージを円環のように繰り返すなかで、共感の深化とローカル・スタンダードの創出を試みる本FSにとって、ひとつのモデルケースといえる(写真提供:NOSIGNER)

本FSが重点を置くのは、「対話的共感」に基づいた「包括的(インクルーシヴ)」手法にあります。特に哲学対話と呼ばれる参加型のワークショップは、単なる合意形成のように意見の違いの解消をめざすのではなく、「言語化」をとおして互いの差異を認めながらも共感を生み出し、それがより創造的かつ安定したコミュニティの形成を促す働きがあります。こうした働きをより効果的に展開するべく、地域調査における「体験化」とデザインによる「可視化」、さらに投資を通じた「社会化」といった多様なフェーズの役割と有機的な連携のあり方の解明を進めていきます。あわせて、対話はもとより、住民自身が地域の特性や歴史、文化を調べ、そこにかかわるモノ、ヒト、コトバを可視化し、さらに投資を通じて地域外とのコミュニケートを活性化するなかで培われる、共感の位相の深化を検証していきます。

これは単なる研究ではなく、ムーブメントです。地域社会の価値を普遍化し、互いの生活環境を尊重できる多元的社会へ向けた変革の積み重ね、その彼方に地球規模での環境問題の根本的な解決への展望も開けるはずです。そのための具体的なモデルと方法論の探求、その思想的な背景と根拠の探求に取り組みます。また、国内外のネットワークを形成し、理論的にも実践的にも協力関係を構築していきます。

メンバー

FS責任者

氏名所属
梶谷 真司東京大学大学院総合文化研究科

主なメンバー

氏名所属
赤井 厚雄早稲田大学総合研究院
石倉 敏明秋田公立美術大学美術学部
猪尾 愛隆ミュージックセキュリティーズ(株)
今村 智熊本県庁東京事務所
江口 建東京大学共生のための国際哲学研究センター
大津 愛梨NPO 法人九州バイオマスフォーラム
笠松 浩樹愛媛大学農学部
木岡 伸夫関西大学文学部
忽那 憲治神戸大学大学院経済学研究科
熊澤 輝一総合地球環境学研究所
鞍田 崇明治大学理工学部
米家 泰作京都大学大学院文学研究科
田口 純子東京大学先端科学技術センター
豊田 光世東京工業大学グローバルリーダー教育院
中木 保代(株)学芸出版社
服部 滋樹京都造形芸術大学芸術学部
花松 泰倫九州大学持続可能な社会のための決断科学センター
三浦 雅之プロジェクト粟
水内 智英名古屋芸術大学デザイン学部
村松 伸東京大学生産技術研究所
山崎 浩司信州大学医学部
山田 仁史東北大学大学院文学研究科
嘉原 妙NPO 法人BEPPU PROJECT
EMETT, RobertRachel Carson Center
ISHIDA MasatoUniversity of Hawaii at Manoa
QUENET, GregoryUniversité de Versailles
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