2017年9月8~9日、日本計画行政学会第40回全国大会において、地球研・増原直樹プロジェクト研究員と東京都市大学・馬場健司教授の発表「地熱・温泉資源量と開発目標,規制と紛争の実態―全国47都道府県別の分析―」が、優秀発表賞を受賞しました。
本発表は、東日本大震災以降に施行された再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度等の影響により、地熱発電やその小規模形態である温泉発電への注目が高まっている中、全国47都道府県における地熱・温泉発電のポテンシャル(既存データ)と各県の導入目標を網羅的に整理し、ポテンシャルに比較して導入目標が高めに設定されている県では紛争(反対運動)が起こりやすいという関係を明らかにしたものです。
具体的には、次の3点が報告されました。
- ①国の導入見通しの条件と各県における目標の乖離について
- ②地熱・温泉発電のポテンシャルと導入目標について
- ③地熱・温泉発電をめぐる各地の紛争実態について(全国紙の新聞記事をもとに特定)
・国の地熱発電導入見通し(約90万kW)は、現時点の各県の導入目標(計85万kW)を積み上げても達成は困難である。90万kWを達成するために必要な条件としては、大規模開発を促すようなさらなる環境規制の緩和が必要であるが、そうすれば紛争の頻発化が懸念される。
・各県の導入目標は、県ごとのポテンシャルと弱い相関関係にある(相関係数R2=0.35)。なお、地域によってはポテンシャルがない県も存在するため、目標を有している県は14であった。
・地熱発電ポテンシャルと紛争の関係については、ポテンシャルに比較して導入目標が相対的に高い県において紛争が生じる傾向が示唆された。
増原プロジェクト研究員らは昨年度、国レベル(環境省,経済産業省)の政策を歴史的に分析し、また県レベルで地熱・温泉発電に対処する2事例(岐阜,大分)を報告しています(増原・鈴木・馬場,2016)。このような昨年度から引き続く一連の研究報告は、今後もさらに分析研究の発展が期待されることから今回の受賞に至りました。

受賞した増原直樹プロジェクト研究員
