地球研は、国立研究開発法人森林総合研究所、東京農工大学、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、日本大学、酪農学園大学、東京農業大学、東京大学と共同で、酸素同位体比分析により標高方向の種子散布を測定する方法を開発しました。さらにその手法を野生のサクラに適用し、ツキノワグマがサクラの種子を平均307m、最大738m、標高の高い場所へ運んでいることを明らかにしました。
自ら動けない植物は、生育に適した環境を求めて移動するために種子散布を行います。これまで、植物が種子をどれくらい遠くまで散布しているかに注目が集まり研究が行われてきました。しかし、水平方向の種子散布は精力的に研究されてきたものの、標高方向の種子散布、つまり種子がどれだけ高標高あるいは低標高に移動しているかを評価した研究はありませんでした。本研究では、標高が高くなるほどそこに生育する植物の種子の酸素安定同位体比が小さくなることに着目し、この関係を利用することで、散布された種子の親木が位置する場所の標高を特定することに成功しました。そして、「種子が散布された標高」と「親木の標高」から、種子の移動した標高差(標高方向の種子散布距離)を求めることを可能にしました。
本手法を野生のサクラ(カスミザクラ)に適用し、サクラの主要な種子散布者である哺乳類の糞から種子を抽出・分析したところ、ツキノワグマによって平均で307m、テンによって平均で193m、標高の高い場所へ種子が散布されていることが明らかになりました。
この研究成果は、Current Biology 26,R315-R316、DOI: http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(16)30170-1(オンライン上で 2016 年 4月25日公開)にて掲載されました。
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メディア掲載情報
- 朝日新聞 夕刊5面
2020年6月25日