オアシスプロジェクトでは,「水需給過程グループ」と「歴史再構築グループ」のおおきく二つの研究グループにわかれています.各研究グループのトピックをわかりやすく紹介していきます.

1.水需給過程グループ
(水循環素過程の観測および水需要の社会経済学的評価)
2.歴史再構築グループ
(水資源,水利用の歴史的変遷過程の解明)

●水熱循環の観測

 黒河流域の降水過程,河川流出過程,地下水流出過程,灌漑等による地表面からの蒸発過程などを観測し,この地域の水循環を量的に明らかにします.気候変動によってどのように水循環が変化し,地域の水供給に影響を与えるのかを評価します.

●祁連山の氷河の融解プロセスの研究 

 黒河の水源となっている祁連山周辺の氷河の融解プロセスを実際の氷河上の観測によって明らかにします.気候変動による氷河の変化およびその流域の水資源への影響を評価します.

●灌漑農業の水利用調査

 黒河中流域に広がる灌漑農地の灌漑方式や面積,作物の種類などを調査し,この地域の農業による水の利用量を明らかにします.この地域の農業には実際にどれくらいの水が必要で,まだ現実にはどれくらいの水が消費されているのでしょうか.

●地下水循環の研究

 黒河流域の地下水位の分布や変化,化学組成などを調査し,流域の地下水の循環過程を明らかにします.地下水の利用や水循環の変化が,地下水にどの程度影響を与えるのかを評価します.

黒河下流部エチナ地域の遊牧民の民族調査

 黒河の下流部で生活するモンゴル遊牧民の生活様式,水の利用状況を調査し,住民の生活に必要な水の量を明らかにします.最近の砂漠化などの環境の変化による人々の生活への影響をあきらかにします.

●粛南裕固(ユーグ)族の民族調査

 黒河上流,中流部で主に牧畜によって生活しているユーグ族の生活様式,水利用状況を調査し,生活に必要な水の量を明らかにします.最近の中国政府による牧畜から農業への転換政策の実態などを調査します.

●アラシャン地域の政治地理学調査

 黒河流域を含むアラシャン地域において中国政府によってすすめられている遊牧民の定住化政策の,人々の生活や自然環境への影響を明らかにします.

●黒城出土文書の解読による過去の水利用の復元

 黒河下流部にある西夏から元の時代の遺跡「黒城(カラホト)」から出土した文書を解読し,この時代の黒河地域の人々の生活や農業の実態を復元します.

●黒河流域の灌漑遺跡の調査

 黒河下流部に残っている灌漑遺跡や農地の遺跡を,衛星画像や現地での調査をおこない,漢,西夏,元の時代の灌漑技術や農地の面積などを明らかにします.

●清代档案の解読による気象データの解析

 「清」の時代に記録された黒河流域の気象に関する情報を,当時の档案が保存されている北京の档案館より探し出し,この時代の気象条件を復元します.

●居延澤湖底堆積物の分析による過去環境の復元

 黒河終端にある湖「居延澤」の湖底堆積物を数メートルのコアとして採取し,堆積物に含まれる生物遺体や花粉,鉱物などを分析することにより,黒河周辺の過去環境を復元します.

雪氷コア分析による過去環境の復元

 黒河流域周辺の山岳地帯の氷河より雪氷コアを掘り出し,安定同位体,化学成分,微生物を分析することにより,過去の気温や降水量などの環境条件を復元します.

●樹木年輪分析による過去環境の復元

 黒河流域に分布する青雲杉や胡楊,タマリスクなどの樹木の年輪を分析することにより,地域の降水量や気温などの過去環境を復元します.


[Oasis Home]