黒河地域の民族調査

本研究(オアシスプロジェクトの人類学班を指す)は、黒河流域における自然環境の歴史について、とりわけ水の循環に焦点をあてながら、2000年にわたって復元する、というプロジェクトの1部であり、過去およそ50年間すなわち1949年から現在までの社会変容について明らかにすることを目的としている。
 水の利用は、人間の営みにとって必須であり、人間がおこなうものであると同時に、その人間の行為によって条件が変わるものでもある。すなわち、水循環の過程は社会の変容からの影響を著しく受けるものである、という観点に立って諸事実を提示し、自然科学の諸チームに対して人文社会学の立場から貢献する。
 人文社会学系が提示する事実の中には、現地の人びとの「行為」とともに「認知」も含まれる。人びとの「自然に対する認知」は、往々にして主観的であると敬遠されがちである。しかし、少なくとも、現地の人びとに「共有されている認知」は、なんらかの実態を反映していることが多い。そしてそこにこそ、自然科学にとって新たな「発見」を導く可能性が存在しているだろう。
 人文社会学系のうち、文化人類学班は、現地の実態調査をする際に、聞き取りによって過去に遡ることができる。しかし、通常はせいぜい50年間程度しか遡ることはできない。そのためにターゲットとして50年を設定している。そして、この50年間は、近代化の一部としてもっとも精力的に自然改造がおこなわれた時期に相当する。したがって、この50年間は、決して一様ではない過去の復元において、きわめて重要な時期となる。それはそのままこの班の研究の重要性を意味している。


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