総合地球環境学研究所山村プロジェクト「人間活動下の生態系ネットワークの崩壊と再生」モンゴル班会議(10月21日)のまとめ 藤田昇
研究目的:モンゴルの遊牧と環境の危機(1992年民主化後の市場経済化・家畜の私有財産化による家畜増、特にカシミヤ用のヤギの増加がもたらすオーバーグレイジングによる草原の劣化・森林の更新阻害・乾燥地低木群落の減少、2003年土地私有化による土地の囲い込みと森林伐採の増加、大都市集中と外資導入による鉱山開発による水資源の減少と汚染、農地開発による草原の劣化、地球温暖化・乾燥化による水資源の減少と砂漠化など)を生態系ネットワークの崩壊の視点からとらえて現状分析し、経済・社会を含めた生態系ネットワークの再生問題としてモンゴルの遊牧を含む新しい持続可能な将来を展望・提言する。同時に、理論班のシミュレーションによる異なるシナリオに基づく将来予測のための基礎データを提供する。
主たる対象地域:大都市と地方との関係、および森林からステップ、乾燥ステップの乾湿傾度が扱えるウランバートル付近からドントゴビ、南ゴビとする。その中で共通的な調査地域と継続的な定点調査地を設ける。
研究テーマ(強引に整理をしてみました。補足等お願いします)
・ 森林ステップ
植生の移行と地形・土壌水分(石井)、森林の更新と更新阻害(藤田・幸田)、訪花昆虫の移動(酒井)
作業仮説「優良な遊牧地である森林ステップ地帯の草原は森林の存在によって支えられている」。課題:森林の存在がどれだけ草原に役立っているか、いったん草原化しても森林が回復するか。
・ 乾燥草原
低木群落の機能と草原の季節生産(藤田)、遊牧民の移動(ナチン)
作業仮説「草原とくに乾燥草原の遊牧はCaragana(マメ科低木)の利用によって保障されてきたがCaraganaの減少によって危機を迎えている」。課題:家畜が季節的にどのように低木を利用しているか、低木群落の存在は水循環に影響しているか、生育季節前半(5、6月)の雨は温暖化によりどう推移するか。
・ 遊牧による草原利用と定住化、乾湿傾度
家畜のグレイジングの草原に対する影響(廣部・近藤、杉田、ナチン、藤田)、畜産経営(平田、森)、土地法(上村)、乾湿傾度(石井)
作業仮説「遊牧による草原利用はモンゴルの自然環境の持続的利用に適している」。課題:コストを考えるとモンゴルの遊牧は経済的に優れているか、伝統的な遊牧様式はいかに変化してきているか、地球温暖化は乾湿傾度にどのように影響するか、乾湿傾度に見合ったそれぞれの地域での遊牧様式とは。
・ 都市と地方、モンゴルと外国・日本
人・家畜・物・金の動き(前川、鬼木、森)、統計資料(前川)
作業仮説「?」。課題:遊牧民と都市住民の動きは何によっているか、経済のグローバル化・援助・外資導入の影響は、日本の影響・日本への影響は。
・ 鉱山開発
鉱山開発の資金・法律・雇用・環境への影響(上村)
作業仮説「?」。課題:環境保全と調和した鉱山開発とは、モンゴルにとってより良い鉱山開発とは。
・ 農地開発
農地開発の歴史と現状(小長谷)
作業仮説「?」。モンゴルにおける持続的農業はどの地域・どのような方法で可能か。
今後の予定
5年間のプロジェクトであるが、予算が保たれる当初3年間で主に行い、4年目は補足調査、5年目は報告書づくりの予定とする。報告書は、日本語は以外に、英語、モンゴル語のものを作成し、できれば普及書を発刊する。
前もって各自が研究計画を作成したが、班会議の議論に基づき練り直す。
11月7〜8日の全体会議では、モンゴル班として、全体については藤田、個別については杉田、前川が発表する。
来年度の調査に当たってはなるべく相互に交流できるように日程を調整する。