SRIREPについて

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貧困問題を背景とする零細小規模金採掘という資源開発によるグローバルな水銀環境汚染に対処するため、ステークホルダーと協働で持続可能な地域イノベーションをもたらし、さらに水銀ゼロをめざす地域間ネットワークや国レベルでの多層連携型環境ガバナンスを強化することによって、この地球環境問題を解決へと導く道筋を解明します。また、トランスフォーマティブ・バウンダリー・オブジェクトの設計・活用・評価の各方法を検討し、ステークホルダーの変容を実践的に評価します。

自然環境破壊や環境汚染は、人間社会と地球環境の相互作用がもたらす深刻な環境問題のひとつです。特に、環境汚染は、局所的な問題からグローバルでかつ多元的な問題へと深刻化しつつあります。特に、開発途上国は貧困問題を背景とする長期的かつ深刻な環境汚染を抱えており、長年に渡って、そのリスクを解消する有効な対策が実施できていません。


この環境汚染問題の中でも、水銀汚染問題は生態系への影響や人類の健康にとって極めて深刻な問題のひとつです。1950-60年代に熊本県や新潟県で発生した「水俣病」が世界中に衝撃を与えました。にもかかわらず、水銀は製造業における特異な有用性が優先され、その後も使用され、環境中に放出され続けてきました。この問題に対して、国連環境計画(UNEP)は「水銀に関する水俣条約(10/10/2013)」を締結し、水銀の人為的な排出の削減と地球的規模の水銀汚染を防止することに取り組んでいます。

さて、近年、この水銀の発生源として、零細小規模金採掘(ASGM)が注目されています。このASGMは、開発途上国における個人もしくはグループによる簡単な設備を用いた金採掘で、5年前から水銀による大気汚染の最大の汚染源となっています。多くの国々が水俣条約を批准しているにもかかわらず、水銀放出量は減るどころか、むしろ増大しているのが現状です。このことが示すのは、貧困問題を背景とするグローバルな環境汚染問題が国際的な条約の批准やNGOの活動だけでは現実的に解決できないことを示しています。

本 プロジェクトでは、上記の貧困問題を背景とするASGMという資源開発によるグローバルな水銀環境汚染をステークホルダーと協働で持続可能な地域イノベーションをもたらし、さらに多層連携型環境ガバナンスを強化することによって、グローバルな水銀環境汚染という地球環境問題を解決へと導く道筋を解明します。そのために、次の3つのレベルの研究をおこないます;


(a) インドネシアのASGM地域における未来シナリオを活用した水銀汚染低減のための事例研究

(b) インドネシア市民協働を通じた水銀ゼロをめざす地域間ネットワーク研究

(c) 東南アジア諸国の市民協働を通じた環境ガバナンス強化に関する研究


また、昨年度提案したトランスフォーマティブ・バウンダリー・オブジェクト(TBO)の設計・活用・評価の各方法を検討し、ステークホルダーの変容を実践的に評価します。そして、地域ステークホルダーが自ら問題に対処するための地域イノベーション(長期的に続く環境負荷に対処して、持続可能な社会をステークホルダーとともに創るための地域社会における幅広い変革)を創出するプロセスを明らかにします。


今後今後、いかにして開発途上国の高環境汚染地域における地域社会と環境の相互作用環を正常化し、ステークホルダーと共に持続可能な地域社会を共創するのかという問いに対して、トランスディシプリナリー・アプローチによって地域イノベーションを共創し、その地域社会組織の動的変容を解明することが可能となり、この理論に基づく持続可能な政策のあり方に関する提言をおこなう段階に到達できると考えられます。このように形成された理論は、プロジェクトにおける実践的な研究によって裏付けられるものとなります。また、この手法は他の地球環境問題への適用可能であり、その理論構築および事例研究が地球環境問題解決に大きく貢献すると考えています。

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