地球研・愛媛大学・西条市共催市民シンポジウム
未来につなぐ地下水の科学――水の都、西条からの発信
開催報告


世界の3分の1の人びとが利用する地下水は、人間活動の拡大とともに流域だけでなく地球規模の社会や自然の変化の影響も受けるようになってきました。しかし、わが国を始め多くの国において、地下水を含めた水管理のしくみは未整備な状況にあります。未来の水環境に対応できる社会の創出には、目に見えない地下水の姿を地表水と同じように捉えられる手法の開発と、それがもたらす水・物質循環情報をもとにした制度設計を統合する、新たな地下水科学が必要です。愛媛県西条市は、11万市民の生活用水のほか農業・工業用水を地下水に依存する水都市です。地球研では、西条市の将来にわたる安定した水資源確保に向けた多面的な自然科学研究を実施しており、2009年には西条市と研究協力を締結しています。

当日、地球研の谷口真人教授は、海底湧水の研究成果を紹介しながらシンポジウムの意義を説明しました。続いて嶋田純熊本大学教授は、地下水制度の取り組みが進んでいる熊本の科学研究と水管理の関係について、さらに高瀬恵次愛媛大学教授は西条市の水資源評価とその問題点を、筆者は市民との共同により明らかになった地下水脈の研究成果を発表しました。西条で始まった水研究が、行政や市民との交流を通して、設計科学へと進化することを期待します。(中野孝教)

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