日文研・地球研合同シンポジウム
第2回「京都の文化と環境−森や林−」が開催されました


国際日本文化研究センター(日文研)と地球研の今年度の合同シンポジウムは「森や林」をテーマとして396名の聴衆が見守るなか開催されました。

山田勇氏(京都大学名誉教授・地球研共同研究員)は講演「地球の森世界からみるモリの日本」で、世界各地の森林とそこに暮らす人びとのようすを解説したのち、京都の現状と今後の課題を総括しました。末木文美士氏(日文研教授)は講演「近代日本の自然観を反省する」で、本多静六、南方熊楠、宮沢賢治らの思想をふまえ、近代に新しい自然観がどのように形成されたかを紹介しました。

パネルディスカッションは、地球研の若手2名による意見発表から始まりました。村上由美子・プロジェクト研究員は「考古学からみた古代の木材利用」と題して遺跡出土木製品の分析結果から、京都周辺の森林利用の変遷を解説しました。そして藤原潤子・プロジェクト上級研究員から「極寒シベリアの森と暮らし」が紹介され、調査のようすを交えつつ凍土溶解・洪水などの問題が提起されました。

小松和彦氏(日文研副所長・教授)はフランス映画『ユキとニナ』の紹介を皮切りに、異人・妖怪研究の第一人者ならではの魅力的な語り口で聴衆を異界との接点=森に導きました。

5本の発表をうけて、秋道智彌副所長・教授の司会のもと「森と農」、「次世代に伝える森」など、重要なキーワードが提示され、密度の濃い議論が繰り広げられました。

閉会にあたり立本成文所長から「日文研と地球研ではリアリティの見方がちがう」との総括と、「来年もシンポジウムをやります」との宣言がありました。

今回は地球研と日文研のもちあじの違いが鮮明となりました。日文研は、吟味した資料を使って観念的なレベルまでじっくり掘り下げる熟考型。地球研は、時空間を往来しつつ足で稼いだ情報を駆使し、問題提 起を繰りだすフィールド型。両者のタッグによる第3回の合同シンポジウムが待たれます。(村上由美子)

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