安成哲平研究員が「中谷宇吉郎科学奨励賞」を受賞

平成21年2月16日、本研究所の安成哲平研究員(地球研プロジェクトC−04「北東アジアの人間活動が北太平洋の生物生産に与える影響評価」)が平成20年度「中谷宇吉郎科学奨励賞」を受賞されました。

「中谷宇吉郎科学奨励賞」とは、「雪」「氷」の研究に取り組み、国際学会等で優秀な研究発表を行い、将来においても雪氷学の研究に携る意欲ある者を対象者として、雪氷学の分野で日本を代表する大学院生等若手研究者を日本雪氷学会が毎年1名、石川県加賀市教育委員会に推薦し、科学の振興に寄与するため、中谷宇吉郎科学奨励賞の表彰を石川県加賀市が行うものです。

受賞論文 Studies on relationship between Asian dust outbreak and the Stratosphere-to-troposphere transport in spring with coupled Ice-core-meteorology
  (アイスコア及び気象学的解析を用いた春季黄砂発生と成層圏対流圏輸送の関係についての研究)
受賞理由 安成氏は、涵養量の多い山岳雪氷コアを細密に分析して、その中に含まれている不純物の量や粒径などから、季節分解能を持つ年代決定に成功した。また、得られた不純物の季節変化、経年変化を解釈するために、大気循環モデルを用いた流跡線解析を行い、大気中の微細粒子 (ダスト)の発生域や輸送過程について考察した。さらに、成層圏に起源を持つ放射性核種トリチウムがダストと高い相関を持った変化傾向を示すことから、東アジアにおける春季の低気圧活動が黄砂を発生させ、生じた微細粒子や成層圏物質を成層圏から対流圏に輸送しているというシナリオを提唱した。
  これらの研究成果は、山岳雪氷コアに過去の大気循環変動が季節分解能で記録されていることを証明したものであり、雪氷学と気象学および地球環境科学の境界領域の開拓につながるものである。