日本でも海外でも、歴史離れや歴史の政治利用が進行している。そもそも歴史は単なる暗記科目だろうか。歴史学は「科学」と言えるのだろうか。歴史を学ぶことは何か役に立つのだろうか。日本の歴史学や歴史教育(大学教育や研究者養成を含む)は、個別の研究・教育の世界に誇る精密さにもかかわらず、その保守性や視野の狭さのためにしばしば、こうした素朴な疑問を増幅させている。この深刻な事態を克服し、「わかる歴史、面白い歴史、必要な歴史」の3拍子揃った歴史教育を実現するための大阪発の挑戦が、今回の報告の主題である。「歴史オタク」や人文系学生だけでない一般市民、理系の学生や研究者にも理解でき、興味がもて、必要性が納得できるような、「文理融合型」の教育内容は可能だろうか。
1955年、横浜市生まれ。京都大学大学院文学研究科単位取得退学。京都大学東南アジア研究センター助手、大阪外国語大学専任講師、大阪大学教養部助教授、同文学部助教授などをへて2001年から現職。専門は中近世ベトナム史を中心とする東南アジア史、海域アジア史、東南アジア地域研究など。著作に『新詳世界史B』『最新世界史図説タペストリー』(いずれも共著、帝国書院)、『世界史リブレット12 歴史世界としての東南アジア』(山川出版社、1996年)、『岩波講座東南アジア史2 東南アジア古代国家の成立と展開』(共著、2001年)、『岩波講座東南アジア史別巻 東南アジア史研究案内』(共編著、2003年)、『海域アジア史研究入門』(共編著、岩波書店、2008年刊行予定)などの教科書・入門書や、『ベトナムの事典』(共編著、同朋舎、1999年)、『新版東南アジアを知る事典』(平凡社、2008年刊行予定)などの事典類がある。現在は「海域アジア史研究会」(1993年創立)代表、「大阪大学歴史教育研究会」( http://www.geocities.jp/rekikyo/ 2005年創立)代表、タンロン皇城遺跡保存のための日越合同専門家委員会委員などをつとめる。