行事案内

「学問と社会のあり方」研究会
第6回研究会

「学問と社会のあり方」第6回研究会が以下の要領で開催されました。
grayline
日時:2007年 10月18日(木) 17:30-19:30
場 所:総合地球環境学研究所 講演室
話題提供者:村松 秀 (NHK科学・環境番組部 専任ディレクター)
テーマ:「『史上空前の論文捏造』と“変容する科学”〜番組取材の現場から〜」
要旨:

 科学論文の捏造事件が絶えない。21世紀に入ってからだけでも、米ベル研の超伝導にまつわる史上空前規模の論文捏造事件、韓国ソウル大学などによるヒトクローン胚由来ES細胞の捏造事件、日本でも東大工学部のRNA研究に関する捏造疑惑、さらには阪大、理研など、国内外の研究機関で事件・疑惑が頻発している。演者はNHKのディレクターとして、これらの取材を数年来続け、何本もの番組を制作してきた。一連の取材の中で実感するのは、捏造はそれを起こした人物の倫理観の欠如だけに帰結するのではなく、科学界全体が抱える構造的問題によって引き起こされた、という点である。科学は20世紀の間に大きく変容を遂げたが、制度やシステムはそれに十分な対応が出来ておらず、そうした科学のありように生じたゆがみの中で捏造が発生しているとも見える。今求められるのはまず、21世紀における科学とは何か、科学者とは何をすべきか、という根源的な問いに科学界が答え、それを立脚点にして必要とすべき科学倫理を再構築すべきなのではないか、ということである。拙講では、取材を通じて明らかにしてきた様々なケーススタディを踏まえながら、科学界の課題について述べたい。

< 論文捏造に関する主な担当番組 >

BSドキュメンタリー「史上空前の論文捏造」
NHKスペシャル「論文捏造 〜夢の医療はなぜ潰えたか〜」
クローズアップ現代「揺らぐ科学の信頼 〜東大・論文捏造疑惑〜」

< 関連する書籍 >

中公新書ラクレ「論文捏造」
丸善「科学者ってなんだ?」(共著)

【話題提供者プロフィール】

  1968年横浜生まれ。1990年、東京大学工学部電気工学科卒、同年NHK入局。現在、科学環境番組部・専任ディレクター、「ためしてガッテン」デスク。NHK入局以来、ほぼ一貫して主に科学系番組制作に携わる。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「サイエンスアイ」「トライ&トライ」「ためしてガッテン」等を担当し、環境、先端科学、医療、生命倫理、生活科学、 自然など多方面のジャンルの科学番組を手がける。特に環境分野では「環境ホルモン」問題を日本で最初に取り上げ、その後も率先してNHKスペシャルなど数々の番組を放送してきた。環境ホルモンという言葉は研究者達と村松が共同で考えた科学的造語で、いまや世界の研究者も口にするようになっている。近年は頻発する科学論文捏造問題についても積極的に取材、番組化している。取材記をまとめた中公新書ラクレ「論文捏造」と関連番組制作により、2007年「科学ジャーナリスト大賞」を受賞。
 また、新番組の開発も多く、「サイエンスアイ」「地球!ふしぎ大自然」「迷宮美術館」などの新番組を立ち上げてきた他、ハイビジョンの特集番組の企画も色々開発してきた。最近では、アマチュアカメラマンが撮影したフィルム映像のみで日本の戦後史を市民視線で描いた「映像の戦後60年」など日本文化を考察する特集番組制作や、アートに関する番組制作も多い。 講演、執筆や、科学コミュニケーションにまつわる活動なども積極的に行っている。
 千葉大学医学部、京都大学、東京工業大学非常勤講師。環境省まちづくり環境評価委員。林野庁ほか森林セラピー研究会幹事。

【主な担当番組】

「NHKスペシャル 阪神大震災〜防災都市をどう作るか〜」
「NHKスペシャル 生殖異変〜しのびよる環境ホルモン汚染〜」
「NHKスペシャル 環境ホルモン汚染・人間の生殖に何が起きているか」
「秋季特集 雪辱への長き闘い 〜平尾誠二、情報戦略でラグビー革命に挑む」
「蝋型鋳金・宮田藍堂の世界」
「忠臣蔵300年・拝啓 大石内蔵助殿」
「中継・きょうは一日パンダといっしょ」
「BSドキュメンタリー 史上空前の論文捏造」
「あなたと作る時代の記録 映像の戦後60年」
など

【著書】

「生殖に何が起きているか 〜環境ホルモン汚染」(NHK出版)
「環境から身体を見つめる」(アイオーエム出版)
「論文捏造」(中公新書ラクレ) など

近著に
「科学者ってなんだ?」(共著、丸善)10月末発売予定

【受賞】

・2007年 科学ジャーナリスト大賞(著書「論文捏造」と関連番組に対し)
・放送文化基金賞 ドキュメンタリー部門 大賞
・地球環境映像祭 大賞
・科学技術映像祭 内閣総理大臣賞
(NHKスペシャル「生殖異変〜しのびよる環境ホルモン汚染」に対し)
・バンフ・テレビ祭 科学自然番組部門 ロッキー賞(最高賞)
・アメリカ国際フィルム・ビデオフェスティバル 科学調査番組部門
               クリエイティブ・エクセレンス賞
・アルジャジーラ国際テレビ番組制作フェスティバル 調査リポート部門 銅賞
・科学技術映像祭 文部科学大臣賞
(BSドキュメンタリー「史上空前の論文捏造」に対し)
・毎日芸術賞 特別賞(NHK戦後60年関連企画に対し)
・橋田賞企画賞(「ためしてガッテン」制作に対し) 
など

予告:

第7回 11月22日(木)
「市民のための歴史、理系のための歴史〜歴史教育の再生をめざして」(仮題)
桃木至朗(大阪大学教授)

この研究会へのご意見、ご要望、話題提供者の推薦などがありましたら、
下記連絡先までお寄せください。
お問い合わせ先:
〒603-8047
京都市北区上賀茂本山457-4
総合地球環境学研究所
研究推進センター 桃木,高木,長野
電話:075-707-2492 FAX:075-707-2510
「学問と社会のあり方」研究会のホームページもご覧ください。
 (過去の研究会の記録もアップしています。)
上に戻る
copyright